第15話 窮屈
やっと学校に到着(^^;)
他の人も出てきます。
俺たちが校門に入ろうとすると、鳳凰のエンブレムの付いた黒塗りの車に追い越された。
「学校関係なら、どこかの“センセイ”だな…」
「わかるの?」
「仕事先で、さんざん見た車種だからな。“センセイ”じゃない方の…」
目で追っていくと、学校の通路の途中で止まって運転手が後部ドアを開けた。
すると髪を二つに束ね三つ編みのおさげにした背の高い生徒が学校カバンを手に降りてくる。
「新入生か?」
「多分…」
彼女を降ろした車は学校の更に奥に入って行った。
「どうやら来賓の一人は新入生の父兄らしい」とオヤジは推察した。
「あの子とうまく付き合うと何かと便利かもしれないぞ。で、そういう目端の利くやつも少なからず居るという事だ」
「俺にはどうでもいい事だよ」
「そんな考えだと、浮き上がれない人生だぞ」
「覚えておく」
俺にとってはどうでもいい事だけど、扶養されている身だから分はわきまえざるを得ない。
ただ、今の車のナンバーをオヤジは控えていたから…
まあ、無いとは思うけど、何かの片棒を担がされるのではないかという嫌な予感が少しする。
入学式の父兄席は後ろだし、俺はオヤジと別れてクラス分けの掲示を見に行った。
探してみると最初の1組で自分の名前を見つけた。
佐藤さんも探してみるか、本人はまだ来ていないみたいだし…
こちらは探し始めて、3組で見つかった。
と、後ろから声を掛けられる。
「桜井!」
振り向くと“同中”の和田だった。
「俺の事探してくれてたの?」
見ると3組のところに和田の名前があった。
「桜井は何組?」
「1組」
「そっか! クラス別々でちょっと残念だな」
「…そうだな」
「そう言えば1組に“亀井”って女子がいるらしいんだけど…背の高い」
俺は1組の掲示の前に集まっていた輩の顔を思い浮かべた。
「背が高い? なら、髪の短いのが一人居た。男子が女子服を着たみたいな感じの…」
「じゃあ、それは違うな。何でも代議士の娘らしくってさ。ホントは北高志望だったんだけど、試験当日、病欠で受験できなかったらしい。で、ウチの二次募集を受験して、成績はダントツだったって」
あぁ…さっきのおさげ女子だ。
「それならさっき見たよ。黒塗りで乗り付けていた」
「やっぱりなあ。やることがいちいちだよな!」
「で、お前なんでそんな事知ってんの?」
「ウチの姉ちゃんがここの生徒会やっててさ…」
「姉ちゃん、センパイかよ…」
「色々情報入ってきたみたい。なんか新入生の代表挨拶もやらせろとか申し入れがあったらしいし…」
「それは、ご苦労な事だ」
「そうそう、俺たち下々の者にはないご苦労」と和田は吹き出した。
まあ、ホント、俺にはどうでもいい事だけど…
俺はさっきの“亀井”って女子の姿をちょっと思い出した。
「窮屈…なのかもな…」
「ん?何が?」
慌てて話をすり替えた。
「ほら、体育館のパイプ椅子って座るところが狭くて窮屈じゃん!」
「ああ!言えてる」
「脚伸ばせないしさ」
「何気に足の長い自分の事、自慢してない?」
「してないしてない。自分の事、いつもディスってばっか」
「どうでもいい事」と言いながら、どうして洋輔くんは他人の事に思いを馳せてしまうのでしょう(/_;)
あ、それからパイプ椅子のくだりを最初は『キチキチに並べられて窮屈』と書いたのですけど、今はソーシャルディスタンスの時代だし、書き直しました。でも、そもそも入学式自体がキチンとできるのかしら? 今の学生さんは大変ですね(-_-)
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