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月不見月の彼女  作者: 107(ひゃくなな)
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しょうらい

-5月19日-

メイが来てから2週間が過ぎた。

相変わらず俺は無気力なバイト生活だ。


「今日も夜バイトあるから。日付が変わる前には帰るようにするよ。」

「わかりました。ところでご主人様、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが…。」

「ん?何?」

「ご主人様は、今後どうされるつもりなんですか?」

「どうって?」

「就職のことです。今はアルバイトをされていますが、ずっとアルバイトというわけにはいきませんよね?」

耳が痛い話だ。


「いや、特に考えてないけど。なるようになるかなって。」

「それではダメです!」

珍しくメイは怒っていた。こんなメイ、初めてだ。


「ご主人様は、将来なりたい職業とか、そういうのはないんですか?」

「なりたい職業ねぇ…。ま、考えてみるよ。」

メイは少し不満そうだ。

気まずくなったので、家を少し早めに出てバイトに向かった。

「(なりたい職業か。小さい頃は正義のヒーローとか言ってたけど、それじゃあ飯は食えないしなぁ。)」




バイトの時間が終わると、そそくさと家に帰った。

家に待ってくれている人がいると、早く帰りたくなるというのは本当らしい。


玄関の扉を開けると、そこにはメイが待っていた。

「今日もお疲れさまでした♪」

家を出たときは不満そうな顔をしていたメイだったが、帰宅するといつも通りバイトで疲れた俺をねぎらってくれた。

彼女の優しさを感じる。

風呂に入ったあと髪を乾かし、歯を磨いて一通り寝る準備は整えた。

「今日はもう遅いので、寝ましょうか。」

メイに促され俺はベッドに入った。メイも電気を消し、おやすみなさいと声をかけベッドに入った。

・・・・・

「そうえいば、さ」

「?」

「将来なりたい職業って話、あったじゃん。」

メイは特に何も言わなかった。

「俺さ、昔学校の成績とかよくて、親から『お前は絶対に医者になったほうがいい!』って言われてたんだよね。俺もその気になって勉強して高校も地元で一番の進学校に行ったんだけど、そこには自分以上に頭のいい人がいっぱいいてさ。『あ~自分は結局凡人なんだ』と思い知らされると、どんどん勉強しなくなって成績も落ちていって。気づいた時には手遅れで、行ける大学はほとんど無くなってたんだ。どことも知れない大学に行くくらいなら、働いた方がマシだって思って就職活動してみたけど、行きたいところも別になくて、今のフリーターって状況になったわけよ。」

「・・・・・」

「でもさ、メイに言われて今日真剣に考えてみたんだ、何かやりたいことはあるのかって。そしたら、何故かサクヤの顔が浮かんできて。そこで思ったんだよね、俺たちみたいに死別で会えなくて後悔する、みたいな人を減らしたいって。今もサクヤが元気だったら、昔みたいに遊べたのになって。

だから俺、医者になりたい。今から勉強してなれるかどうかわからないけど、やってみたいんだ。」

メイはそっと抱きしめてくれた。


「ご主人様、本当にお優しい方ですね。確かに険しい道のりかもしれませんが、ご主人様ならきっとできます。」

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