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月不見月の彼女  作者: 107(ひゃくなな)
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えのしま①

-5月3日-

メイが来てから2週間が過ぎた。

世間はゴールデンウィークで浮かれている。


「ご主人様、今日のご予定はいかがですか?」

朝食の片付け終えたメイが、ふと尋ねてきた。


「今日はバイトないし、特になにもないけど。」

「そうですか…。もしよければ、その、一緒にどこか出かけませんか?」

「え!?」

まさかのメイからのお誘いに、驚きを隠せなかった。


「い、いいけど。どこか行きたいところあるの?」

「そうですね…、まだ日本のことよく知らないので、観光できるところがいいです!」

正直あまり友達が多い方ではないので、観光地のことはよく知らない。

だが、1つだけ心当たりがあった。

「じゃあ、江の島に行ってみる?景色とかきれいだし、食べ物も美味しいし。」

江の島は某アニメの聖地であり、聖地巡礼で何度か訪れたことがあった。

「エノシマ…いいですね!行きたいです!」

「ちょっと遠いから、早速準備していこうか。」


お互い背中合わせで着替えて準備をした。最初はメイの着替える音にドギマギしていたが、最近は少し慣れてきた。

それにしてもこれ、ひょっとしてデートなんじゃないか!?





電車を乗り継いで1時間半。江の島に着いた。

天気は晴れ。絶好のデート日和だ。


「海がすぐそこにありますね!潮風が気持ちいいです♪」

メイの日本語は相変わらず固いままだ。


「あそこに見える島が江の島だよ。行ってみようか。」

「はい!」

それにしても…

この赤髪の少女は、俺が選んだ服を着てくれている。

自分の選んだ服を着てくれている女の子が、自分とデート(?)している。

俺はこの状況に、たまらなく高揚感を抱いていた。

今まで彼女いない歴=年齢だったが、女の子と遊びに行くのは、こんなにもワクワクするものなのか。

江の島に向かう橋を渡りながらメイといろいろ会話したのだが、にやつきを抑えるのに必死で、正直何を話したのか全く覚えていない。




橋を渡ると、島の入り口には数多くのお店が並び、人々が列をなしていた。

「とりあえず腹減ったし、海鮮丼でも食べようか。」

「カイセンドンって何ですか?」

「ご飯の上に魚をのせたやつ。」

「あ、おスシみたいなものですね!」

何か違うが、見てもらった方が早いだろうと思い、特に訂正せず店に入った。


店内はほぼ満席で、店員も活気があり忙しなく働いていた。

「じゃあこの生しらす丼1つ。」

「あ、同じものをもう一つ!」

メイも慌てて同じものを注文したが、一抹の不安がよぎった。

そういえば海外では、生魚は食べないと聞いたが…。

「メイ、生しらすって知ってる?」

「ナマシラス…、たぶんお魚の名前ですよね?」

これはまずいかもしれない。


「お待たせしました!看板メニューの生しらす丼です!」

俺とメイの眼前に置かれた生しらす丼は、光沢を帯びている。

生き生きとしたそのしらすは、今にも動き出しそうだ。

ふとメイの方を見ると、顔が引きつっている。

「あの、ご主人様。これは、そのまま食べるのでしょうか?」

「そうだね。そこのしょう油をかけて食べると美味しいよ。」

メイはきょろきょろ周りを見ており、なかなか手をつけない。


「生魚、食べたことない?」

「いえ、以前おスシは食べたことあるのですが…。ご主人様、ナマシラスがこっちを見ています。」

確かに透明な体をしている生シラスの黒々とした目は目立つ。だが、メイにはぜひ日本食に慣れてほしい。

「美味しいから、まず一口食べてみようよ。」

「…いただきます。」

メイは何かを決心したように目を見開き、一口分の生しらすを箸でつかみ、口の中に入れた。

緊張が走る。

「美味しいです!」

メイの不安な表情は一転、笑みに変わった。

次々と口へ運ぶ。

よかった。安堵した俺もやっと自分の生しらす丼を食べ始めた。

確かに美味い。

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