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「いないってどう言う事だよ?!」
「私、朝早くにおトイレに起きたの。気分が良かったから、馬車から景色を見ようかなぁ、どの辺まで来たかなぁって思って馬車内に戻ったら……手紙が……」
レオは立ち上がり、ノエミから手紙を受け取る。レオへと封筒には書いてあった。
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レオへ
また不愉快な思いをさせてごめんなさい。
どうしても……短剣は必要で一人で取りに行く事にしました。
でもこれ以上、私の人生に二人を巻き込んではいけないと思い、下車させてもらいます。
レオの事はとても信頼しているわ。
レオには色々と尽くしてもらったのに、貴方の想いに応えられなくて、本当にごめんなさい。
全然モテないから気づいてあげられなくて……
本当にごめんね。
レオの気取らない姿には何度も助けられたわ。
だけど、私は私の人生に蹴りをつけないといけない。
スペラザに行って、自分の無実を晴らさなければ、きっと私は一生後悔する。
そして、その為には絶対に短剣が必要なの。
どんな小さな可能性でも、私は諦めない。
だから今は、誰かと恋人になるとか結婚とか考えられない。
うん、考えないし、前にも言った通り、誰ともしないから。
勝手過ぎるって、今イライラしてない?
本当、勝手よね。
うん、わかってる。
でもやっぱり譲れないんだ。
ずるいけど……ブーケ国に帰ったら、ノエミやマロウさんと一緒に紅茶でも飲みましょう。
じゃあ、またね。
リース
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「何だよ、これ…………」
レオは愕然として、手紙を両手で握りしめる。ノエミが、言う。
「それにね、お兄ちゃん、馬車が元来た道を戻っている気がするの。どんどんスペラザから遠くなっている気がして……」
レオは掛け布団を振り払い、馬車内へとノエミと一緒に戻る。確かに、フワコ国にはいるが国境へと向かっている気がした。
「もしかして、アイツ俺達をブーケ国に帰そうとしてるのか……?!」
「どうしよう!? 馬車の指示はリースにしか出来ないし、これじゃあリースも探せないよ……」
ノエミは、自分宛の手紙をギュッと握りしめている。レオは、クッション椅子の上に座ると、下を向いた。
「仕方ないだろ……」
「仕方ないってどういう事?! リースは女性一人で出て行ったのよ?! フワコ国の治安は落ち着いていないから、女性が日中ふらふら歩いていたらどうなるかお兄ちゃんもわかってるでしょう?!」
「でも、止めても出て行っただろうよ」
「何か事情があるのよ! 私達には言えない事情が!!!!」
レオは足を馬車の床に打ちつけ、感情を露わにする。
「スペラザに一緒に向かう仲間にも言えない事情って何なんだよ!!!! やめろって言っても、一人で出て行く理由、事情って何なんだよ!!!! ……俺達はリースに捨てられたんじゃねえか」
ノエミは、暫く何も言えなかった。
「お兄ちゃん、リースと何かあった?」
「…………ねえよ」
「嘘、お兄ちゃんが鼻ヒクヒクさせる時は嘘ついてる時だもん。今鼻ヒクヒクしたもん」
「な゛っしてねえよ!」
「したもん!!!! ねぇ、お兄ちゃん、そんなにリースが私達に全て打ち明けてくれない事が悲しい? でも、誰だって、人に話せない事ってあるでしょう?!」
ノエミはレオの正面に座って、レオを見る。
「でもボンボンには話したんだよ……」
「…………本当ちっさい男だな」
ノエミはドスのきいた声でレオに言った。手をぐーにして、完全に怒っていた。
「そんな事だから、リースに好いてもらえない、友達限りなんでしょうよ!!!! ちっさい男だわ!! ほんとっこんなのがお兄ちゃんだなんて、信じられない!! だから、カイル王子様にばっかりリースだっていくわよね?! だって、カイル王子様はリースに対しても私達にも常に優しいし、スマートだし、すぐ怒らないし、無駄にデカイだけじゃないし、食べるのだってゆっくりだもの!!!!」
「おっ、お前、何か途中から俺への文句が混ざってるぞ!」
「いい?! リースは、私とは違って国外追放されてきたのよ? 私が知らないくらい、辛い思いをしてるの。しかも自分がしていない罪を、大好きだったダナ王太子様に裁かれたのよ? 私達にその全てを理解できるかしら? リースの辛かった気持ちを、本当の意味でわかってあげられるって言うの?!」
「………………」
「……それに、私達は両親には恵まれてる。お金はかかるけど……でも、リースは実のお父様とお母様には愛されていなかったのよ。それなのに、辛い顔はひとつも見せないで、私達にも美味しい物をくれるの。これ以上、何を求めるの?」
ノエミはレオを見る。レオは顔を上げて、ノエミを見た。
「…………そうだな……あいつにもあいつなりの事情があったんだな……」
「そうよ」
レオは手で顔を覆う。自分の幼さに、目が潤んできたけれど、ぐっと我慢した。
「わかってんだよ、俺だって……でも……」
「わかるよ、お兄ちゃんの気持ち。だって、リースはあんなに綺麗で素敵なんだもん。好きになっちゃうよね…………」
こくん、とレオは手で顔を隠したまま、頷いた。ノエミは言った。
「……迎えに行こう?」
「あぁ」
レオは立ち上がって、正確には背が大きいので膝を少し曲げて立ち上がった。ノエミは笑う。少しノエミも涙ぐんでいた。
「でも、どうするんだ? 馬車はリースしか動かせねえのに……」
「そうなのよね……どうしたら……」
レオは考え混んで、馬車をあちこち見た。天井を見上げると、ハッとしてノエミに言う。
「ノエミ、書く物あるか?」
「え? 下で何か探してくる?」
「あぁ。一か八かだけどやるしかねえ! リースの所へ行くぞ!!」
ノエミは急いで下へと下りて行く。バタバタと響く音が何度かしてから、ノエミは鉛筆を探して持って来た。
「お兄ちゃん!! あったよ!!!!」
レオは急いでノエミから受け取ると、天井に書かれていた護符にあるリースの名前に二重線を引き、自分の名前を書いた。
「リースの元へ案内しろ!! 超特急で!!!!」
レオが叫ぶと、馬車は方向をぐるりと変えて、物凄い速さで走り出した。レオとノエミは手を打ち合い、喜んだ。レオは少し頭を天井にぶつけた。
「痛って」
「お兄ちゃん! 流石よ!! でも、すごい早すぎるわぁああああああっ!!!!!!」
二人は、椅子や手すりにしがみつき、座った。レオは燃えてきたのか、急に叫びだす。
「よし!!!! リースを迎えに行くぞ!! 俺達はリースを守る騎士だ!!!! おい、馬車、飛ばせ飛ばせ飛ばせー!!!!!!!!」
「いやあああああっ!! やっぱりこんなお兄ちゃん嫌ぁーっ!!!! もっとゆっくり走ってぇええええええっ!!!!!!!!」
馬車は更に加速を繰り返し、向かって行った。
* * *
〝ゴーダ〟という店は、中心地の七丁目にあると聞いていたけれど、なかなか見つけるのに苦労した。
「こ、ここなの……?」
私はいかにも薄汚れて、黒く汚くて触るのも躊躇してしまいそうな店の扉を見る。何度もここか? と見たけど、扉にはちゃんと店の名前が木彫りで彫られていた。意を決して、私は扉を開ける。
「おはようございますー…………」
扉を開けると、階段があって下りて行くようになっていた。階段も薄暗く、電球がついてもいない。怖い〜……と思って、私は恐る恐る下ると、ようやく明るくなっている部屋を見つけた。
周りがものすごく暗い所から、明るい場所へと入ると、柱は黒いのに、床は朱色に近い赤に染められた店に辿り着く。何だかゾッとするような、雰囲気だわ……。私、本当に騙された? そう思ったけれど、店内にはちゃんと剣や盾などが売っていた。これ、全部魔法具なのかな…………?
「全部魔法具だよ」
突然声をかけられたので、ビクッと肩を軽く震わせてしまう。
右側に、藁で編んだマットに人があぐらをかいて座っている。上からフードをがっぽりかぶっているから、顔はよくは見えないけど、この人がファロ・ゴーダ。
「お、おはようございます……」
私は声をかけたけれど、ファロ・ゴーダは何も言わずに、剣を磨いている。私は壁や机に並ぶ、ひとつひとつの剣や盾達を見ていく。
長い物から、短い物、ゴージャスな見た目と言うよりは、どれもシンプルな見た目の物が多い。
「ガチャガチャしているのは嫌いなんだよ、僕は機能性が大切だと思っているからね」
ファロ・ゴーダが後ろから話しだす。
こっこの人ももしかして、アリアラと同じで心が読めるの?!
私は動揺して、後ろを振り向いてからたじろいでいると彼は言う。
「そう、貴女が思っている通り、アリアラと同じで読めるんだ」




