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悪役令嬢の私を探して  作者: アトリエユッコ
3章
89/161

45

この小説の、最初の章あたりを直したいと思いつつ、なかなかまだ出来ていません!

とりあえずはゴールまで走りつつ、完走したら直そうと思います(*´꒳`*)子育て中なので、合間見ながら更新しないとー♪

 百合の花が体の周りに埋められている。


 家族と、一輪だけ、薔薇の花を入れた。母親が好きだった花。


 蒼白い顔、白い肌。


 僕は、今にも母が冗談だよ、嘘ついてごめんね、と言って、起きてくるような気がしていた。



 生きる事は容易くないのに、死んでしまえば、簡単だ。


 病に縛られ、不自由だった。今は、その何もかもから解き放たれて自由を得た顔。だけど……二度と目を覚ます事はない。




「お母さんっ……」



 僕はただ一言、叫んだ。




 これでお別れなんて、嘘でしょう?


 お母さん、お母さん、お母さん。





 どうしてーーーーーーーー
















「…………夢か……」




 ……普段は夢なんて見ないが、今日はどうしたのだろう。


 随分昔の事なのに、どうして思い出したんだろうか?



 カイルは、寝台の隣りに置いてあったピッチャーを手に取って、水を飲む。


 気持ちの焦りとは別に、外の天気は晴れ晴れとしていた。ノエルが来ないうちに、クローゼットを開けて、薄い水色のシャツと藍色のパンツを身につける。表が白く裏が藍いベストを羽織り、鏡の前でバランスを確認する。こんなもんかな、と思い、部屋を出た。



 廊下を歩き続けて、僕は違う邸宅に向かう。

 

 その後ろ姿を廊下で見かけた。話したかった相手。僕は黒く笑って、普通通り声をかけた。 



「フィオレ嬢」



 義兄にもらったであろうバレッタと、艶のある黒髪をなびかせて、彼女は僕に振り向いた。一瞬、驚きを見せながらも、余裕を感じさせる表情を見せる。

 らしくないね、と思った。主人公だからって、調子に乗るなよ? 君は気づいていない。僕が切り札を持っている事を。君は僕の手の中にいるんだ。



 フィオレは、新しくついた古巣の侍女クレマチスに、二人きりで話をしたい、と伝えた。クレマチスは理解があるのか、丁寧にお辞儀をして、席を外す。



「あら、カイル王子。おはようございます」


「おはようございます。王宮入りをされたと聞いたのですが、お会いしておりませんでしたので、伺いました」


「あら、それは嬉しいですわ。ありがとうございます」



 俺はゆっくりと彼女を導入する。彼女が吐く訳はないと思ってはいたが、君がその気だから、俺も勝負を仕掛けないといけない。



「フィオレ嬢は、僕の邸宅に一度いらっしゃいましたか?」


 単刀直入に確認した。フィオレは黙って、コイツ気づいたな……という顔をした。

 お前が悪いんだ、リースからの贈り物を奪ったのはお前だぞ。よりにもよって、義兄さんに送りやがって。お陰でこちらは腹が立って、頭がまわらないんだ。



「いいえ。広くてよく分からないので、なかなか行けませんの」


 眉毛をハノジにして、困った顔を見せる。その顔、本当ですか? 知っているよ、君が部屋に来た事は。



「そうですか、一度散策するのも楽しいかもしれませんよ」


 にこりと、わざとらしく笑顔で言ってやった。



「えぇ。じゃあ今度、カイル王子に、案内をお願いしながら散策しなくてはね」



「どうしてです? 義兄さんがいるでしょう」


 フィオレは、表面では驚いた顔をして、またにこりと笑う。物語が始まっていた頃の僕なら、この笑顔に、きっと速攻やられていただろう。だけど、今は、騙されない。



「貴方には、色々聞きたい事がありますの」


 来た。



「例えば……国を追い出された令嬢について、とか?」


 僕は、にこやかに話す。フィオレは、笑う。

 さて、どう来るかな?



「えぇ。そうですわね」


「僕も聞きたい事があるんです」



「何でしょう?」


 フィオレは、笑ったまま、僕の顔をじっと見つめて黙っていた。穏やかだけれども、底では違う思いを抱えている。目が笑っていない。



「貴女が義兄(あに)にあげたお菓子は、シュークリームと言うんです。他国では、よく揚げた物に生クリームをつけた物は出回っていますが、同じ物に当たります。最も、シュークリームが出回るのは未来の話ですから。……なので、よく、そんなお菓子を作れましたね」



「…………」


 フィオレは、俺がとんでもない事を言い出したので、驚愕している。暫く沈黙は続いて、彼女はようやく口を開いた。


「そうなんですの……? 偶然ですわね。カイル王子は、シュークリームを魔法本でも読まれて、知ったんですか?」



 僕はフィオレを無視して、話し続ける。



「貴女は自分の幸せを、何かを隠す事で、守ろうとしているかもしれませんが、隠しきれないものもありますよ。自分の行いが、どれだけ大変な出来事だったのか、いつか気付くでしょう。不足を補うように、立ち回れるのも、いつまででしょうかね」



 僕は、わざとらしく笑って、フィオレと別れた。

 フィオレは去って行く僕には何も言わなかった。


 灸は据えてやったぞ。

 さぞかし、悩むがいいさ。




「大体、リースのお菓子を盗むだなんて、百年早いよ。僕が食べたかったのに、何でよりにもよって、義兄さんにあげたんだ。ずるいよ……」


 

 結局、僕は餌付けされているのかな、と思ってしまう。だけど、それくらい彼女のお菓子はレベルアップしていた。ブーケ国に行って、数ヶ月のうちに、リースはどんどん腕を上げた。今の僕は、彼女が作るお菓子を食べられる事が、幸せに感じている。



 勉学間に戻って来て、僕はそっと、木箱を覗いた。手紙が一通入っていた。


 差出人はもちろん、リースだ。

 木箱は、一緒に持って来て出てきてくれたんだな。

 もしかして、僕からの手紙を、待ちに待っていてくれていたのかな? と勝手に思った。少し嬉しくなる。



「〝カイルへ シュークリームは食べましたか? 全然感想が送られて来ないから、催促の手紙を書いちゃったじゃない。ちゃんと届いた? リースより〟」



 ふふっと、僕は笑った。やっぱりな。

 悪い事をすると、何処かで漏れるんだよ、フィオレ。




 あの日、僕が溺れたリースを助けた時から、リースがリースでないのは、何となくわかっていた。


 西嶋さん……?! って言われた時には、流石に驚いたけど。いや、流石にそれは言っちゃダメだろ、と思ったんだよな。



 予定調和の世界で、流れに乗る方が楽しいかな、って思った。だけど、君が一生懸命、ちょこまか動いていたから、乗ってみるのも面白そうだと思って、僕も流れに抵抗してみたんだ。


 その結果、今、君とこんな関係になっているんだけど。


 リースが、()()()()()ように、僕も君に出来る事をしていくから。



 だから、リース。もう少しだよ。

 頑張ろう。

 その先の君が、どうなるかは、まだ分からなくても。






「あーシュークリーム食べたくなっちゃったな。もう一回、送ってくれ」



 僕は、一連の出来事をリースに書いて、送った。ついでに、もう一回シュークリーム作って、とも。








 * * *



「なっ……何ですってー?!」


「どうしたのよ、リース……大きな声を出して」


「だって、だって、だって。カイルとノエルに送ったシュークリーム、フィオレがこっそり持って行って、ダナ様にあげちゃったらしい……って……」



 私は、木箱を隣座席に置いて、カイルからの手紙を確認する。


「マジかよ、フィオレって奴、お前の作ったお菓子、盗んだって事か?」


「そうみたい……」


 私が、がっくりと肩を落としていると、レオは自信満々に言った。


「まぁ、あんなうまいのが、誰かの部屋にあったら、分からんでもないな!」



「お兄ちゃん、どっちの味方なの? 盗むなんて、未来に国を背負う令嬢のやる事じゃないわよ!! さいってー!! リースの労力を何だと思ってるのかしら?!」


 ノエミは、腕を組んで、ぷーぷー文句垂れている。

 可愛いなぁ。それに何だか、二人の会話が可笑しくて笑ってしまう。


「リース?! 笑い事じゃないわよ? もう一回、作らないと行けなくなったでしょう? 大変よ!」



「あぁ、ごめんね。面白くて、つい……。苺が旅先で手に入るかわからないけれど、作るしかないわね。王子様の命じゃあ、逆らえないわ」


 私は木箱に蓋をする。椅子の下にある収納箱に、木箱をしまった。馬車から見える景色は、点々と続く街通りから変わって、山が見えて来た。


「国境はもう少しで越えるみたいだな」


 レオがわかったのか、同じように外を見ていた。


「うん、これからね」



 私達は、山の麓へと向かっていた。








 * * *


 フィオレは、クレマチスにアクセサリーを当ててもらっていた。

 婚約披露会に身につけるアクセサリーは、どんな物にするか決めていなかったので、一緒に選んでいた。



「こちらなど、どうです? 百合の花は、フィオレ嬢に似て、清楚感と凛とした雰囲気を出してくれます」



「そうね。これにするわ……」


 クレマチスは、フィオレの返事があまり元気がないので、心配になる。



「どうなされました? フィオレお嬢様? 何か婚約披露会に向けて、心配事でも?」



「いいえ、違うのよ」


「ですが、お顔が優れません。クレマチスで宜しければ、お話を聞けますよ」


 明るく、クレマチスはドン! と胸を叩いて言う。安心させてくれるわ、この侍女は……と、フィオレは感じた。



「ねえ…………クレマチス。私、間違っているのかしら…………」



「何をでしょうか?」


 クレマチスは、いきなり言われたので、フィオレが持っている手鏡に顔をうつして話す。



「守らなきゃって、思ったの。大切なものを手放さないって決めたのよ……」



 クレマチスは、フィオレが概要を何も言わないので、何の話だかわからなかった。暫くして、あぁ、王太子の事ですわね?! と勘違いする。



「そんな事ありません。フィオレお嬢様は、充分に守れていますし、これからもずっと掴めます! 大丈夫です!!」


 フィオレは、間をあけてから笑顔になる。


「そうよね。……お願いがあるんだけど……」



 フィオレは振り返り、クレマチスの顔を直接見て言った。クレマチスは、ん? と顔を斜めにした。





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