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この小説の、最初の章あたりを直したいと思いつつ、なかなかまだ出来ていません!
とりあえずはゴールまで走りつつ、完走したら直そうと思います(*´꒳`*)子育て中なので、合間見ながら更新しないとー♪
百合の花が体の周りに埋められている。
家族と、一輪だけ、薔薇の花を入れた。母親が好きだった花。
蒼白い顔、白い肌。
僕は、今にも母が冗談だよ、嘘ついてごめんね、と言って、起きてくるような気がしていた。
生きる事は容易くないのに、死んでしまえば、簡単だ。
病に縛られ、不自由だった。今は、その何もかもから解き放たれて自由を得た顔。だけど……二度と目を覚ます事はない。
「お母さんっ……」
僕はただ一言、叫んだ。
これでお別れなんて、嘘でしょう?
お母さん、お母さん、お母さん。
どうしてーーーーーーーー
「…………夢か……」
……普段は夢なんて見ないが、今日はどうしたのだろう。
随分昔の事なのに、どうして思い出したんだろうか?
カイルは、寝台の隣りに置いてあったピッチャーを手に取って、水を飲む。
気持ちの焦りとは別に、外の天気は晴れ晴れとしていた。ノエルが来ないうちに、クローゼットを開けて、薄い水色のシャツと藍色のパンツを身につける。表が白く裏が藍いベストを羽織り、鏡の前でバランスを確認する。こんなもんかな、と思い、部屋を出た。
廊下を歩き続けて、僕は違う邸宅に向かう。
その後ろ姿を廊下で見かけた。話したかった相手。僕は黒く笑って、普通通り声をかけた。
「フィオレ嬢」
義兄にもらったであろうバレッタと、艶のある黒髪をなびかせて、彼女は僕に振り向いた。一瞬、驚きを見せながらも、余裕を感じさせる表情を見せる。
らしくないね、と思った。主人公だからって、調子に乗るなよ? 君は気づいていない。僕が切り札を持っている事を。君は僕の手の中にいるんだ。
フィオレは、新しくついた古巣の侍女クレマチスに、二人きりで話をしたい、と伝えた。クレマチスは理解があるのか、丁寧にお辞儀をして、席を外す。
「あら、カイル王子。おはようございます」
「おはようございます。王宮入りをされたと聞いたのですが、お会いしておりませんでしたので、伺いました」
「あら、それは嬉しいですわ。ありがとうございます」
俺はゆっくりと彼女を導入する。彼女が吐く訳はないと思ってはいたが、君がその気だから、俺も勝負を仕掛けないといけない。
「フィオレ嬢は、僕の邸宅に一度いらっしゃいましたか?」
単刀直入に確認した。フィオレは黙って、コイツ気づいたな……という顔をした。
お前が悪いんだ、リースからの贈り物を奪ったのはお前だぞ。よりにもよって、義兄さんに送りやがって。お陰でこちらは腹が立って、頭がまわらないんだ。
「いいえ。広くてよく分からないので、なかなか行けませんの」
眉毛をハノジにして、困った顔を見せる。その顔、本当ですか? 知っているよ、君が部屋に来た事は。
「そうですか、一度散策するのも楽しいかもしれませんよ」
にこりと、わざとらしく笑顔で言ってやった。
「えぇ。じゃあ今度、カイル王子に、案内をお願いしながら散策しなくてはね」
「どうしてです? 義兄さんがいるでしょう」
フィオレは、表面では驚いた顔をして、またにこりと笑う。物語が始まっていた頃の僕なら、この笑顔に、きっと速攻やられていただろう。だけど、今は、騙されない。
「貴方には、色々聞きたい事がありますの」
来た。
「例えば……国を追い出された令嬢について、とか?」
僕は、にこやかに話す。フィオレは、笑う。
さて、どう来るかな?
「えぇ。そうですわね」
「僕も聞きたい事があるんです」
「何でしょう?」
フィオレは、笑ったまま、僕の顔をじっと見つめて黙っていた。穏やかだけれども、底では違う思いを抱えている。目が笑っていない。
「貴女が義兄にあげたお菓子は、シュークリームと言うんです。他国では、よく揚げた物に生クリームをつけた物は出回っていますが、同じ物に当たります。最も、シュークリームが出回るのは未来の話ですから。……なので、よく、そんなお菓子を作れましたね」
「…………」
フィオレは、俺がとんでもない事を言い出したので、驚愕している。暫く沈黙は続いて、彼女はようやく口を開いた。
「そうなんですの……? 偶然ですわね。カイル王子は、シュークリームを魔法本でも読まれて、知ったんですか?」
僕はフィオレを無視して、話し続ける。
「貴女は自分の幸せを、何かを隠す事で、守ろうとしているかもしれませんが、隠しきれないものもありますよ。自分の行いが、どれだけ大変な出来事だったのか、いつか気付くでしょう。不足を補うように、立ち回れるのも、いつまででしょうかね」
僕は、わざとらしく笑って、フィオレと別れた。
フィオレは去って行く僕には何も言わなかった。
灸は据えてやったぞ。
さぞかし、悩むがいいさ。
「大体、リースのお菓子を盗むだなんて、百年早いよ。僕が食べたかったのに、何でよりにもよって、義兄さんにあげたんだ。ずるいよ……」
結局、僕は餌付けされているのかな、と思ってしまう。だけど、それくらい彼女のお菓子はレベルアップしていた。ブーケ国に行って、数ヶ月のうちに、リースはどんどん腕を上げた。今の僕は、彼女が作るお菓子を食べられる事が、幸せに感じている。
勉学間に戻って来て、僕はそっと、木箱を覗いた。手紙が一通入っていた。
差出人はもちろん、リースだ。
木箱は、一緒に持って来て出てきてくれたんだな。
もしかして、僕からの手紙を、待ちに待っていてくれていたのかな? と勝手に思った。少し嬉しくなる。
「〝カイルへ シュークリームは食べましたか? 全然感想が送られて来ないから、催促の手紙を書いちゃったじゃない。ちゃんと届いた? リースより〟」
ふふっと、僕は笑った。やっぱりな。
悪い事をすると、何処かで漏れるんだよ、フィオレ。
あの日、僕が溺れたリースを助けた時から、リースがリースでないのは、何となくわかっていた。
西嶋さん……?! って言われた時には、流石に驚いたけど。いや、流石にそれは言っちゃダメだろ、と思ったんだよな。
予定調和の世界で、流れに乗る方が楽しいかな、って思った。だけど、君が一生懸命、ちょこまか動いていたから、乗ってみるのも面白そうだと思って、僕も流れに抵抗してみたんだ。
その結果、今、君とこんな関係になっているんだけど。
リースが、傷つかないように、僕も君に出来る事をしていくから。
だから、リース。もう少しだよ。
頑張ろう。
その先の君が、どうなるかは、まだ分からなくても。
「あーシュークリーム食べたくなっちゃったな。もう一回、送ってくれ」
僕は、一連の出来事をリースに書いて、送った。ついでに、もう一回シュークリーム作って、とも。
* * *
「なっ……何ですってー?!」
「どうしたのよ、リース……大きな声を出して」
「だって、だって、だって。カイルとノエルに送ったシュークリーム、フィオレがこっそり持って行って、ダナ様にあげちゃったらしい……って……」
私は、木箱を隣座席に置いて、カイルからの手紙を確認する。
「マジかよ、フィオレって奴、お前の作ったお菓子、盗んだって事か?」
「そうみたい……」
私が、がっくりと肩を落としていると、レオは自信満々に言った。
「まぁ、あんなうまいのが、誰かの部屋にあったら、分からんでもないな!」
「お兄ちゃん、どっちの味方なの? 盗むなんて、未来に国を背負う令嬢のやる事じゃないわよ!! さいってー!! リースの労力を何だと思ってるのかしら?!」
ノエミは、腕を組んで、ぷーぷー文句垂れている。
可愛いなぁ。それに何だか、二人の会話が可笑しくて笑ってしまう。
「リース?! 笑い事じゃないわよ? もう一回、作らないと行けなくなったでしょう? 大変よ!」
「あぁ、ごめんね。面白くて、つい……。苺が旅先で手に入るかわからないけれど、作るしかないわね。王子様の命じゃあ、逆らえないわ」
私は木箱に蓋をする。椅子の下にある収納箱に、木箱をしまった。馬車から見える景色は、点々と続く街通りから変わって、山が見えて来た。
「国境はもう少しで越えるみたいだな」
レオがわかったのか、同じように外を見ていた。
「うん、これからね」
私達は、山の麓へと向かっていた。
* * *
フィオレは、クレマチスにアクセサリーを当ててもらっていた。
婚約披露会に身につけるアクセサリーは、どんな物にするか決めていなかったので、一緒に選んでいた。
「こちらなど、どうです? 百合の花は、フィオレ嬢に似て、清楚感と凛とした雰囲気を出してくれます」
「そうね。これにするわ……」
クレマチスは、フィオレの返事があまり元気がないので、心配になる。
「どうなされました? フィオレお嬢様? 何か婚約披露会に向けて、心配事でも?」
「いいえ、違うのよ」
「ですが、お顔が優れません。クレマチスで宜しければ、お話を聞けますよ」
明るく、クレマチスはドン! と胸を叩いて言う。安心させてくれるわ、この侍女は……と、フィオレは感じた。
「ねえ…………クレマチス。私、間違っているのかしら…………」
「何をでしょうか?」
クレマチスは、いきなり言われたので、フィオレが持っている手鏡に顔をうつして話す。
「守らなきゃって、思ったの。大切なものを手放さないって決めたのよ……」
クレマチスは、フィオレが概要を何も言わないので、何の話だかわからなかった。暫くして、あぁ、王太子の事ですわね?! と勘違いする。
「そんな事ありません。フィオレお嬢様は、充分に守れていますし、これからもずっと掴めます! 大丈夫です!!」
フィオレは、間をあけてから笑顔になる。
「そうよね。……お願いがあるんだけど……」
フィオレは振り返り、クレマチスの顔を直接見て言った。クレマチスは、ん? と顔を斜めにした。




