表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の私を探して  作者: アトリエユッコ
プロローグ
4/161

3

「好きな人かぁー」玲那は呟いた。



 ふと、西嶋さんを思い出す。

 爽やかで明るくて、普通にイケメンで、仕事もできる先輩。


「いや、彼女いるし」

 玲那はパシン! と湯を手で叩く。




 職場のお疲れ様会に行った時、知ってしまった。

 西嶋さんに彼女がいること。



「お前、みんなに見せるなよ」と西嶋さんは同期の男性社員に言った。スマートフォンを男性社員は見て、

「西嶋の彼女! 可愛いじゃん!」とみんなに茶化すように見せ回った。


 男性社員のえげつない行動に引いたが、西嶋さんの彼女さんがどんな人なのか、気になった。

 きっと綺麗なのかな、美人さんとか。

 知りたいような、知りたくないような想いで、ふっとまわってきたスマホを覗き込む。


 その時に見た、彼女の可愛さと言ったら。

肌が白くて、目がぱっちりしていて、身長も小さくて、アイドルみたいに可愛い。想像以上。

 同じ土俵に立つ、なんておこがましいけれど、私とはまるで真逆。玲那は落胆する気持ちを必死に隠した。




「かっこいい人には可愛い彼女。なんの問題もないよ……」玲那は言う。



 ちゃぽん、と鼻まで湯に浸かる。


 あぁいう子って、ルームウェアとかも可愛いの着てそう。モコモコのふわふわで淡いニ色の可愛いやつ。コスメにも敏感で、私みたいに、とりあえず適当にメイクはしていなさそう。西嶋さんとデートする時も、花柄ワンピとか着そうだなぁ!


 玲那は頭の中で二人が出かけている姿を想像した。

 玲那の妄想内でも、二人はとてもお似合いだった。



 はぁあー。つまんないや。


 私はー……チラリと、風呂桶に視線を向ける。



 少したってから、暑くなって、身体を出す。

「やっぱり私にはダナ様しかいない!」と言うと、アメニティが入った桶の中から、ジップロックに入れたポストカードを出した。


「私の推しは紙面上や画面上にいる!」

 玲那は叫ぶと、ざばんと勢いよく露天風呂から出る。



「そうだ!私にはダナ様がいる!!」落ち込んでなどいられない!!

 玲那はガッツポーズで叫んだ。



 聖地巡礼、ここに来た時にダナ様とも一緒に来たかったんだ。

 玲那はポストカードをうっとり見つめる。



 ダナ様がリアルにいてくれたら、頑張るんだけどな……と玲那は思う。



「そんなのあるわけないよね」玲那は呟く。



 もう一度、お湯に浸かろうとした。

くるりと向きを変えて、湯船に向かった。だが、足元に置いた石鹸の存在を忘れて、思い切り踏んでしまう。



「ひゃっ!!」


 つるん、と石鹸は滑った。ついでに玲那もつるん、と滑る。

 手元からポストカードが離れ、露天風呂に浸かる。ジップロックにはしているものの、中にお湯が入ってしまう!


 ーーーーまずい!!


 そう思ったのも束の間。玲那はつるんと滑った後、派手に近くにあった石垣に頭を強打して、そのまま身体ごと露天風呂の湯船にダイブした。必死にポストカードを探そうとしたが、頭を強打した衝撃が強かったのか、意識が段々と遠退いていく。起き上がらなければと必死で手を伸ばした。



 ーーーーだめ、だめっ! ポストカードが!!



 ーーーーーーーー私のダナ様が!!



 ぶくぶくぶくと鼻や口から泡が出る。

 起き上がらなければ、と思った。が、どんどん意識は遠退いていったーーーー。





「大丈夫かーーーー?!!!!!」





 あぁ、私こんな真っ裸で救出されるか…………情けないというか、恥ずかしいな……


 しかも限定ポストカードは、きっともう、ふやけているだろうし……何やってるのよ、私……。



 しかし、露天風呂って、こんなに深かったのね。もう溺れちゃったよ……




 ーーーーそう玲那が思った時、手が伸びた気がした。


 男性の自分を助けようとする手が見えた気がすると、次の瞬間、玲那の身体ごと救い出された。



 あぁ、良かった…………!! 死ぬかと思った……。




 だが、救い出された後、玲那は驚愕する。


「大丈夫でしたか?! リース様??!!」



「……は??」玲那は言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ