花びらのあとは
まだ少し喉が痛かったので、玲那は起き上がるとキッチンに向かう。様子に気付いた葵は心配して近づいて来る。
「玲那? もう体調は大丈夫なの?」
心配そうに、不安がる葵とは対照的に玲那はにこーっとあっけらかんとした笑顔を見せた。
「うん、きつかったけど、インフルエンザから復活しましたよ」
玲那の言葉を聞くと、葵は今世一番の安堵感を醸し出す。
「よかったぁあああ。死んじゃったらどうしようかと」
「移しておいてよく言うわねぇ」
「ごめん……」
玲那は申し訳無さそうにしている葵を見て、微笑んだ。
「喉がまだ乾燥しているから、葵さんのレモネード飲もうかなぁって思ったの」
「じゃあ、俺が用意するよ。移したお詫びに」
葵はよく働く小間使いのように、サクサクと動いて準備する。玲那はその様子を見て、本当に心が癒された。
葵のレモネードを飲みながら、茶の間で二人でまったりとしていると、ふいに玲那は呟く。
「そう言えばね、熱でうなされていた時に変な夢を見たの」
「夢?」
葵はホットレモネードを飲みながら、聞き直した。
「そう。夢の中で、リースが見えたの。こう…………何かを通して私は彼女を見つめていて……。迷っている姿が見えてね。思わず、私堪えきれなくなって、叫んだんだ。…………あれは、何だったのかなぁ」
玲那は上を向いて、マグカップを抱え込んだ。葵は少し黙ってから、呟く。
「……繋がったのかな?」
「いやぁ、まさか。さすがにそれは安直な展開よね」
「まぁね、そうか。久しぶりに熱を出して、昔の記憶が蘇って夢に出て来たのかもね」
「うん。……でも……なんか久しぶりに嬉しかったな。リースが出て来て…………幸せな気持ちになった」
飼い猫のうちの一匹がしゃらん、と玲那の元へやって来た。玲那はきゃあと嬉しそうに、膝の上に乗せる。
「おいで、ティアラ」
猫を撫でながら、葵とまったりと玲那はレモネードを飲んでいた。
「病気も治ったことだし、明日何処か行く?」
もう一匹の猫、クラウンも葵へと擦り寄って来た。彼は猫を撫でながら玲那を見る。
「そうだなぁ、いいね! ……何処か美味しいご飯とデザートを食べに行きたいな」
玲那は葵を見て、にこりと微笑んだ。
fin.
スピンオフシリーズも終わりです。
あっさりとした終わりで申し訳ありませんでした。
スピンオフはあくまで、スピンオフっていうイメージなので、膨らませず、程度良くとしています。サラリとここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました。つたない文章ではありますが、また新作が浮かび次第、描いていく予定です。
子育て次第ではあるので、ノロノロ運転になりますが…………その際はどうぞ、よろしくお願いします。
アトリエユッコ