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悪役令嬢の私を探して  作者: アトリエユッコ
4章
126/161

37

子供の関係で色々作業している事があり、二、三日更新が遅れそうです。すいません(๑o̴̶̷᷄﹏o̴̶̷̥᷅๑)

 大きな怪我をして王宮の客室にて療養も終わりーーーー私のリースとしての生活環境が、少しずつ良い方向へと変わって来ていた。


 今日、ノエミが来て教えてくれた。フィオレ嬢とダナ様の馴れ初め。恋バナやメルヘン話が大好きなお年頃(ちょっと好みは実年齢より低いよね)なノエミは、ティルト家にある私の部屋で、飛び跳ねながら話していた。


「それでねっ!! それでねっ!!!! フィオレさんはダナ王太子様に言ったんだって!!!!」



 ノエミの話を要約すると、こうなる。


 私の搬送も終え、私が目を覚ましたのを確認して一安心したダナ様は、王宮でフィオレと久しぶりに会った。ダナ様の国王陛下への説明により、ラクアティアレントに悪霊が憑いていたので、フィオレがリースをラクアティアレントに突き落としたという話は冤罪だと確定。王宮を追い出されたり牢獄されたりするのは免れた。


『お久しぶりですわね』


『あぁ』


 王宮の庭園でダナ様はいつもと変わりなく、フィオレに声をかけた。フィオレはそれ以上は何も言わずに、立ち尽くす。

 ダナ様はフィオレに言ったそうだ。



『色んな騒動が重なってしまったが、君との婚約はまだ続行されているだろうか?』



『…………私のような者が、貴方との婚約を続けて宜しいのでしょうか?』


『続けられない明確な理由があるのか?』



『リース嬢を陥れようとしましたわ』


 フィオレ嬢は暗い雰囲気で、別れを切り出そうとしていた。だが、ダナ様も言ったそうだ。


『君はリース嬢を守ろうとした。彼女のお願いを、君なりに叶えようとしたんだろう?』



『でも…………どんどん、私は隠せば隠すほど、ずるくて嫌な人間になっていきましたわ……』



 ダナ様はフィオレへと近づいて、優しい眼差しで見つめて話した。



『……私も……同じだ。君と言う人がいながら、リースによそ見をした。君への弁解は出来ない。…………なぁ、フィオレ。……嫌な者同士、一緒になる事はどうだろうか? 今更、都合が良いかもしれない。…………だが、やはり私には君が必要なんだ。ずるくて欲の深い私を束ねてくれるのは、君しかいない』



 フィオレは少し目を潤ませながら、言う。


『ダナ様はずるくも欲が深くもありませんわ……私にとってはいつでも貴方は気高くて、優しくて…………いつも私にとってのたった一人の王子様ですもの……』


 ダナ様はフィオレを抱き締める。

 フィオレはダナ様に頭をもたれかかっている。


『私にとっても、君は嫌な人間なんかじゃない。君はいつだって、軽やかで爽やかで真っ直ぐな令嬢だよ。……君が嫌な奴になる時には、私もずる賢くなろう。その肩に持っているモノを、私にも分けてくれ』



 フィオレはダナ様を見上げる。ダナ様は穏やかな眼差しでフィオレを見つめて笑った。その目は少しだけ潤んでいた。フィオレはダナ様の頬に手を当てて、言った。


『貴方も……私にも色々な話をして下さい。私とダナ様は夫婦になるんですもの。私もダナ様の心に重くのしかかるモノを、半分、持ちたいですわ』


『ありがとう……』


 二人はそれから抱き締め合ったと言う。庭園はカサブランカが咲き誇り、それはそれは綺麗だったとか。ポワーンとしているノエミを脇に、私はダナ様とフィオレがうまくいったという話を聞いてホッと一安心した。




「良かった」


「本当にね」


 ノエミはロゼッタが淹れたカモミールティーをぐびぐびと飲みながら、私が用意したココアとバターの渦巻きクッキーを頬張る。


「元の鞘に戻るべくして、戻った訳ね」


 私は呟く。色々あったけれど、大筋はシナリオ通りになったんだなと思った。リースが断罪されるのは免れたけれど、結局リースは誰とも結ばれていないんだな。


「リースは? これからどうするの?」



「うーん……とりあえずはリースから頼まれているお菓子を明日ティルト家の家族に作ったら、準備ができたら一度ブーケ国に帰るわ。マロウさんが心配だし……」


「……そうよね、私も心配だわ!! お土産とお土産話を沢山持って行かないとね!!」


「ノエミはどうする? 一緒にブーケ国に帰る? それとも、もう少しいる?」



「お兄ちゃんのお仕事がもう少しで落ち着くみたいだから、一緒に帰るわ。ノエルさんにお願いして家には手紙を出したんだけど、お母さんにも悪いし……ニコモとヤコポの世話もしなくっちゃね。…………楽しかったけれど、自由時間ももうすぐ終わり!! スペラザ王国は水の都って言うくらいだから、お魚が美味しかった〜! あと、買えないけれど、パールも素敵な物が沢山あったわ!!」


「水産が盛んだからね」


「うん!!」


 ノエミは立ち上がって、私の元へと来てぎゅっと抱きしめる。私が不思議な顔をしていると、ノエミが言う。



「リースには限りがあるから、ハグ〜!!」


 ノエミもわかっているからこそ、抱きついて来ていた。私もその気持ちが嬉しかった。



「そう言えば、リース」


「ん? 何?」


「リースが元々住んでいた異世界で、リースは私達の世界を見ていたって言ってたじゃない?」


「うん?」


「やっぱり、異世界にも水晶があって見ていたの?! 異世界に住んでいた時に、魔法が使えて、私達を見てたとか?!」


 ノエミは興味津々といった様子で、聞いてくる。私はまさかこの世界は物語の世界で、私はそれをこよなく愛するオタクだとは言えなかった。


「んーっ!! 魔法は皆使えないんだけど、四角い物と他色々購入すると、皆この世界が見られる機械があるのよね〜」


「へぇ!!!! リースが住んでいた異世界は最先端の水晶が売ってるのね!! すごいわぁ」


 どうつっこんでいいのかわからないから、そのままにしておこう……と私は思った。




 ノエミはカモミールティーをごくごくと飲んでから、暫くして言う。


「スペラザ王国にいてさ、少し羨ましくなっちゃったわ」


「ん?」


「観光がてら街を歩いていたらね、カメリア学園の学生さんではなかったんだけど、学生さんを見かけたの。……あーいいなぁって思ったわ。私、学校行けないし、この辺りの街の人達も話していると、とても博識だしね。夢見がちな私は驚き、頷くだけだったわ」



 ノエミの気持ちもわかるな、と思った。何か私にも出来る事があれば…………と思っていた。ふと、頭にアイデアが浮かんで来て、私は微笑む。ノエミは頭にはてなをつける。


「うん、良い事思いついたの。時期が来たら、また後で話すわね」


「?」



 ノエミとはその後、ロゼッタも交えながら、色々な雑談をして楽しんだ。ノエミは同世代の友人がいないので、少し年上のロゼッタともじっくり話せて嬉しそうだった。





 * * *



 次の日、シェフに許可をもらってティルト家の大き過ぎる台所を借りて、私はお菓子作りを始めた。



 無意識の中でリースが家族に作ってくれと言っていたのは、セミフレッドというお菓子。マークスお兄様に頼んで本を貸してもらって、調べたら、半解凍のお菓子を意味するみたい。空気をふんわりとふくんだ、アイスケーキのようなモノ。ラズベリーとかナッツとかまぁ色々と自分の好きな物を混ぜて作る。どうしてこれを指定してきたのかよくわからないけれど、シンプルで美味しそうだと思った。マークスお兄様とロベルお兄様にも確認して、どんな物を混ぜたらいいのかも確認した。



「リースお嬢様、大丈夫でしょうか? 私も手伝いましょうか?」


 シェフは心配しているみたいで、私に何回も同じ事を確認して来た。私は微笑んで、何度も同じ事を伝える。


「向こうでやっていたから大丈夫よ」




 私は作業を始めた。

 まず、まな板でノーマルビスケットを砕き、別に寄せておく。

 生クリームを泡立てる。この世界にはオーブンはあるのに、電動泡立て器がない。生クリームやメレンゲを作るのにはしんどいけれど、ティルト家の泡立て器は質が良いから泡立てやすい。生クリームに白砂糖を入れて泡立てたら、別ボウルに卵黄をふんわりと泡立る。色が薄黄色に変わったらそこに桃のピューレを少しずつ混ぜる。ポイントは、暖かい物ではなくて冷たい物を使う事。また別ボウルに卵白と砂糖を入れて混ぜる。メレンゲが出来たら、常温に戻し、柔らかくしてヘラで潰して滑らかにしたクリームチーズを優しく

 、卵黄と桃ピューレを混ぜた物とメレンゲと合わせる。ポイントは、空気を含ませるように、あくまでも、ふんわり、ふんわりと。

 メレンゲは特に潰さないように、少しずつ加えた。そこに更に桃の果肉を合わせて、これまたふんわりと軽く混ぜる。パウンドケーキ型にビスケットを敷いてから、セミフレッドを移し入れて冷凍庫へ。


 三、四時間くらい眠らせたら出来上がり。



 シェフは私を見て関心していた。


「以前にりんごのコンポートとガレットを作った時よりも格段にレベルアップされていますね!! さすがお嬢様です!!!!」




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