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悪役令嬢の私を探して  作者: アトリエユッコ
4章
108/161

19

 私達は開けていた扉をすぐ閉めると、カメリアの裏門へと向かう。正門は何人もの魔法騎士団が張っていたので、入れなかった。


 私は、マントのフードをかぶりながら、髪の毛を隠した。私が捕まってしまったら、レオやノエミも危険に晒す事になる。ここまで着いて来てくれた。捕まる訳にも行かないし、真実を知らないまま生きたくない。


 デコボコの道に草が沢山生えている細い道を、レオ、私、ノエミ、で走る。後少しで裏門という時ーーーー裏門の前に、魔法騎士団が三人張っている。



「やっぱりいたのね」


 木の影に隠れて、裏門の様子を見た。レオとノエミに確認した。


「どうする?」


「他に入れるところは、ねえのかよ?!」


「ないわ」


「じゃあ、塀を越えて行く?」



 ノエミに言われて、塀を見る。ニメートルくらいはある。どうやって…………と思った。レオは、近くに来て、言う。


「左奥の方に行って、俺が肩車するから、そこから入るか?!」


「……時間がかからない?」


「じゃあどうする? 裏門の奴等を殴って、その隙に入れるか?」


 ノエミも近くに来た。私は、塀を越える作戦を決行した。レオがまず走って向かい、ノエミと私が走る。レオはまずノエミを肩車して、塀へと乗せる。

 木の茂みも少し関係し、死角となって私達の所は見えない。このまま、中に入れたらいいんだけど…………


 ノエミが無事に学園内に入る。私はレオに担がれ、塀をよじ登った。恥ずかしいとか、どうとかいう問題じゃない。私は塀を越えようとすると、叫び声が聞こえる。



「あそこにいるぞ!!!! 捕まえるんだ!!!!」


 私は焦って、塀からジャンプした。ノエミと走って、走って、走って行く。手を繋いで、走って行く。レオは裏門に騎士団の見張りがいなくなった時を見計らって、ダッシュで中へと入って来る。


「こっちだー!!!!」


 レオは叫んで、騎士団の数人を自分の元へと引き寄せる。私はレオを呼ぶ。


「レオ!!!!」


「いいから、行けっ!!!!」



 レオの一言に、私は神殿へと向かう。レオは追いつかれそうになったけど、持ち前の足の速さで振り切って、私達の後を追った。



「ノエミっ……!! 大丈夫?!」



 ノエミは無言で苦しそうに、走っている。私は近づいて、手を握るとノエミは言った。


「ごめんね、リースっ! 走るの遅くて……」


「大丈夫だよ!! 私こそ、本当に巻き込んでごめん!!!!」



 息を苦しそうにしながら、ノエミはハアハアと懸命に走る。レオが近づいて来て、ノエミを担いだ。


「ったく、世話の焼ける妹だな!」


「ギャー!! やめて、お兄ちゃんっ!!」


「文句は全て終わった後で言え。今はリースを神殿に届ける事だけを考えろ」



 ノエミをおんぶしながら走るレオ。いくら痩せ型の筋肉痛で体力の自信がある彼でも、早くは走れない。苦しそうにしながら、走る姿を見て辛くなった。


 でも、神殿にたどり着けば……きっと…………



 学園の校内に入る道まで来た。後少しだ……



「レオ! ノエミ! 後少し!!」


 追手は人数を増やして、走って来る。ここで負ける訳にはいかないんだ!! 私達は顔を見合わせる。


 だけど、私達は急に足が動かなくなり、元来た道へと引き寄せられる。騎士団のうちの一人が私達に魔法をかけていた。足を進めたくなくても、戻ってしまう。



「何だ?!」


「魔法で引き寄せられてる!!」


 レオとノエミは困惑している。私も抵抗したかった。でも、あっという間に戻っていた。


「逃すな!! アイツらはノーマルだ。魔法を使えない奴には魔法で捕らえれば良い!!」


 私は一人の貴族に捕まり、体を掴まれる。レオもノエミを抱えたまま、捕まっていた。私達は抵抗する。



「リース!! あいつは……カイルは来ねえのかよ?!」


「来る予定よ!」


「本当か?! いつも遅え!!」


「お兄ちゃん、リース!! とにかく今はここを乗り切らないと!!!!」



「わーかってるよ!!」


 私は魔法騎士団の貴族を思い切り突き飛ばした。貴族はまた、私を捕まえる。フードが脱げて、ミルクティーヘアーが露わになる。貴族が私の髪の毛を引っ張る。そのまま、金色に変えていた目をピンク色に戻されてしまった。



「離して!!!!!!」



「うるさい! 黙れ!! 魔法騎士団から逃げられると思うな!! この罪人め!!」



「違う……」



「違わない、お前は貴族だった時から人を見下すような人間だった……!! 俺を忘れているだろう? お前に一度、恥をかかされた」



「……何?」


 私は貴族の顔を見て、立ち止まる。貴族の顔は不快な顔をして、胸中を吐露する。



「お前は忘れているかもしれないが、俺が魔法が得意だと知ったお前は、俺を呼び出し、クラス全員の前で拘束されながら、お前の靴を舐めさせられたんだ。……魔法が使えるから、私の靴を直すくらいなんて事ないでしょうと…………」




『ジン・ダーク。貴方、魔法が得意なんですって?』



『何をする?!』



『じゃあ、お願いがあるの。私の靴を綺麗にしてみて? 出来るでしょう? 貴方は魔法が使えるんだから』



『こんな拘束されて出来るか!! 俺は何もしていないっ!! 離してくれ!!!!』



『嫌よ。魔法が使えないのなら、舌で靴でも舐めなさいよ。……でも、魔法を使わないで綺麗にするなんて、なんて貴方にとって惨めなのかしらね? こうして拘束してしまえば、私と何も変わらないのよ? んふふふふっ』




「……それから、拒否する俺を無理矢理お前は手下を使って、頭を靴に擦り付けた。皆がいる中で、何もしていなかったのに……お前はっ!!!!!!」



 グッと髪の毛を引っ張られる。そんな事、覚えていない。……どれだけ私は、周りに酷い事をしたんだろう。どれだけ、傷つけて来たんだろう。



「知ってるか? お前がいなくなって、皆喜んでる。フィオレ嬢は優しいし、正義感も強い。下流貴族だと罵ったお前なんかよりも、ずっと親切なんだ。……立場を弁えろ。時期女王等、お前の分ではないんだ!!!!!!」



 更に髪の毛と手首を引っ張られる。覚えていない。だけど……諦める訳にはいかない。レオが自分を捕まえていた騎士団を殴って、逃れる。


「リース!!!!」


 レオは叫んだ。……私はこのままでいいの? と思った。私は悪役令嬢で…………私は皆に嫌われていて………………私はダナ様に好かれていなくて…………魔法が使えなくて。…………でも…………私はあの日、自分から、ラクアティアレントには落ちていない。例え、この国で誰にも肯定される存在じゃなくても、私は……諦める訳にはいかないんだ。





『それで本当に……本当の意味で幸せって言えるのか? フィオレと兄さんが後々婚約して、真実を隠したまま幸せになっていったとして、その姿を見ることなく、君はこの辺鄙な場所で、してもいない罪を抱えながら生きて、本当にそれでいいのか?!』




「…………良い訳ない……」



 私は必死に抵抗しながら、言った。

 貴族が、聞き返す。



「は?」



「良い訳ないじゃない!! 私はラクアティアレントに落ちてない!!!! だから、真実を知る為に、ここにいるのよ!!!!!! 人の評価なんてどうでも良い! 私は……私として、もう一度、私の人生を生きたいの!!!!!! カイルと……真実を見つけるって、約束したんだから!!!!」



 私は、太腿に潜めておいた短剣を引き抜き、自分の髪の毛へと刀を向ける。私の使い方で、この短剣が変わるのなら……切って!! 私の髪を!!!!!!



 ザンッ!! と掴まれていた髪の毛を短剣で切り離し、足で貴族を蹴り倒した。掴んでいた髪の毛が軽くなった事に驚いた貴族は、一瞬緩んだ隙に、私は走った。


 騎士団が、慌てて追いかけて行く。



「逃すなー!!!!!!!!」



 私を捕まえていた貴族の怒鳴り声が大きく響く。それでも、私とレオとノエミは走って、校内へと入り込む。白く光が反射した廊下を必死に走って、一キロ先の神殿へと向かった。


 後ろから、火の攻撃が迫って来る。


「きゃあっ!!」


 ノエミはびっくりして、火の前で足をバタバタした。私達の周りを火が囲うと、向こう側にいた騎士団達が悪い笑みを浮かべて、私達を見た。



「どうする? リース?」


「……行くしかないわ、皆」



 騎士団達が向かってくる前に、短剣を振る。火は一気に消えた。私達はまた走る。



「どう言う事だ?!」


「リース嬢は魔法具を持っている!!!!」



「フワコ国の天才鍛冶屋のファロ・ゴーダが作った短剣だ!!!!」



 誰かが叫び、バタバタと足音が聞こえた。レオとノエミは私の事を見た。


「リース! かっこいい!!」


「助かった!!」


「まだ気は抜けないわよ! あと少し!!」



 私達は走っていると、今までよりも強力な木壁が私達の前に現れる。私は短剣を振り回す。しかし、これには効かなかった。



「無理ですよ、リース嬢」


 声の主に目を向けると、ヨクサクが立っていた。


「ヨクサク様……」



「リース嬢、行けません。この様な事をしても、ダナ王太子は喜びませんよ……」



「あいつ、前にカイルの兄ちゃんに着いていた奴じゃないか?!」


「ヨクサクさんって言ったわ、カイル王子様が気をつけろって言っていた……」



 ノエミ達は呟く。私はヨクサクを見て、言った。



「ヨクサク様、見逃して下さい」




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