玲那の記憶
初めて小説を書きます!
慣れないので読みにくいこともあるかとは思いますが
どうぞ楽しんでもらえると嬉しいです(汗)
たまに、あれここが少し変わってる……なんて言う部分もあるかもしれません。完結するまでは、わかりやすい描写になるように手直しを重ねながら書きます。あしからず。
どうぞ宜しくお願いします!
都内の駅から歩いて十五分くらいの距離に須藤玲那の勤める営業所があった。
土木事務所の事務員で、勤続年数はもう十年にもなる。営業所は古いビルの中のニ階にあり、一階は社員が自由に使える休憩所と、喫煙所が設置されている。三階は不動産会社と、四階はエステサロンが入っていた。玲那はノートパソコンで書類を作成していた。薄汚れたアイボリーの壁にかけられた円時計の針が十八時三十分を指す。営業所内にチャイムが鳴り響く。
今日は金曜日、今週も終わりだ。
玲那は軽くはぁーっとため息を軽くはき、腕をのびした。
社員達やパートスタッフ達は、早々とパソコン等の電源を切る。玲那もパソコンの電源を切った。そして、目頭を押さえて目の周りをマッサージした。
今週もやっと終わった……。
玲那はそう思って、ゆっくりと帰り支度をする。まわりの社員は、半数以上が金曜日だから早く帰ろうという動きで、そそくさと帰っていく。
「お疲れさまでしたー」
デスクに残っていたのは、補佐と所長だけだった。
「お疲れ様です。私もお先に失礼します」
玲那が言う。
「お疲れさまでした」と補佐が愛想良く柔らかい返事を返してくれた。
エレベーターで一階まで降りると、休憩所から出てきた西嶋さんとすれ違う。
「おっと」
西嶋さんが勢いよく出てきたので、左手に持っていたカップコーヒーがこぼれそうになる。西嶋さんは少し上に持ち上げて、あわてて言った。
「ごめん、ごめんっ」
「いえ、大丈夫です。かかっていないので!」
西嶋さんが紙コップを手元に下げて、急いで手で蓋をした。
「良かったよ〜! 今日上がり?」
「はい、今日は帰ります」
玲那が言う。
「そっか、須藤さん、お疲れさま〜」
にこっと西嶋さんはいつもの笑顔で言った。
さらさらの黒髪と、どこからともなく感じさせる清潔さと爽やかさに、玲那は一瞬ドキッとした。
「お、お疲れさまです」
玲那は言った。
そのまま、玲那が感じたことを察知する時間もなく、先輩は早歩きで去って行った。
ふと、玲那は西嶋さんが去った方向を見た。
ーーーーこれが玲那と西嶋さんの交わした最後の言葉だった。
営業所で働く、従業員で少し年上。会社で数ヶ月に何回か話すくらい。それ以上もそれ以下もない、ただの会社での関係者。
玲那は、この後、うっすらと何かあれば良かったのになと思った。
ーーーーーーこの時までは。