思い出づくりに。
梅雨明けの夜に私は夜空を見上げていた。
空には、月が浮かび雲が白と黒のコントラストを浮かべている。
あれから、何回も梅雨が過ぎ去っていった。たくさんの思い出も雨では流れず、心の中で輝いている。
もうすぐ会えるね。
私はお月様にそう語りかけた。
7月20日
「大学最後の夏に天体観測に行こうぜ」
どこかで聞いたようなフレーズを浩三が言った。友人の突拍子もない提案はいつもの事で、もう驚くことも無い。
「いいけど、望遠鏡もないし星座に詳しいやつなんて私たちの中にいないでしょ」
もっともなツッコミをした女子大生、夕花は昼食を食べ終わりスマホをつついている。
なんとなく固まっている4組の中に、星座に詳しそうなやつは確かにいない。
「でもよー、せっかくの最後の夏だぞ?なんかパーッとしてもいいじゃねぇかよー」
「じゃぁ、あんたガイドしなさいよ。私は、星のこと知らないわよ」
ぎゃあぎゃあとやり始める2人をよそに、1人黙々と昼食をとっている遥に俺は尋ねた。
「遥は、星座興味ないのか?」
冷やし中華を食べている遥は、首を横に振っている。
インドア趣味のこいつが天体観測なんてしないかと思っていたが、その通りだったようだが・・・。
「プラネタリウムは興味ある」
普段、疲れるからとあまり喋らない遥がそう答えた。
「プラネタリウムなら、ちょっと遠いけど県北にある」
「行きたかったのか」
俺がそう聞き返すと、コクリと頷いた。
「それなら、天気に関わらないしガイドがあるからちょうどいいわね」
耳を傾けていたらしい夕花が、スマホを操作しながら頷いている。
県北であれば、バスで行ける距離にあるため、ちょうどいいかもしれない。
そんなことを考えていると、何かを調べていたらしい夕花が、おっと声を漏らした。
「さっきのプラネタリウムしてる博物館で星空散策イベントなんてものやってるわよ。今週末だから、行くならすっごい急だけど」
「よっしゃ!それ行こうぜ!」
浩三がワクワクしながら、答える。
「夜だろ?俺たちは平気だろうけど、夕花と遥はそうもいかないだろ」
そうだよなー、と浩三が肩を落とす。
軽いノリのやつだが、中々に察しがいいし、理解力もあるからすごいんだよな。こいつ。
「あんたがいるから、特に問題ないでしょ。うちらの親とも面識あるし」
それに遥も頷いている。
「そうはいっても、おじさんたちも心配するだろ。相談くらいしとけ」
似ていないが、夕花と遥は双子だ。二人の親と俺の両親が幼馴染だとかで、時折交流があった。
「この二人と幼馴染だもんなぁ、弦也は」
「幼馴染って感じでもないけどな。大学に入ってから、よく会うようになったんだぞ」
「顔なじみって感じか。最初から、知り合いがいて羨ましいわ」
こいつのコミュ力なら、さほど困ったことも無いように思うが本人は大変だったんだろう。
「お、予鈴だ。講義終わったら、どうするか相談しようぜ。俺、博物館の場所知らないし」
了解と各々、応え講義に向かった。
執筆者、土代です。
初投稿ですが、よろしくお願いします。
段落の落としなどなど、見苦しいところもあるかと思いますが、暖かく見守りください(_ _).。o○