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異世界譚

男主人公、利田コウ視点です


4月7日


「異世界が滅びそうで困ってるって聞かれたらどうする?」


そんな荒唐無稽な彼女の例え話から始まった

彼女の名前は荒谷ミナミ、大学3年生


「ん〜、異世界が困ってても助ける力が無いんじゃ力になれないかな?」

「あはは、じゃあコウはチートみたいな力があれば助けちゃうんだ」


俺、利田コウ(リタ・コウ)の恋人ミナミは笑いながら言った


「助けるかはわからないよ、本当に滅ぶのかもわからないんじゃ助けようもないし」

「違うのー!もう本当に滅んじゃうから助けて欲しくて違う世界からの助けが欲しいって願われたら?」

「助けれる力があって無事に帰って来れるならやらなくもないかな」

「そっか・・・そうだよね」

「変な事聞くんだなミナミは」

「アハハ!ゴメンねぇー」


そんな普段の帰り道のくだらない会話

【くだらない例え話】だと思って俺は彼女のミナミの様子に気付けなかった


4月9日

ミナミが失踪、行方不明になったのはそれから2日後の事だった


彼女のスマホから彼女の母親がミナミが居なくなって警察にも届けを出したので協力して欲しいと頼まれすぐに了承した


4月12日

それから更に3日後、ミナミが居なくなって5日目に手紙が届いた

日付けを指定して送ったものらしい

内容を見ると


(くだらない例え話をした前日に異世界から女神様が現れ、英雄の力を持つ彼女に助けを願ったとの事)


そんな怪しい押し売りみたいな話を真に受けて彼女は異世界へと消えてしまった

すぐに帰って来るから浮気せずに待ってろとも書いていたが、どうして滅ぶような世界からすぐに帰れると思うんだ!


5月9日

そして、1ヶ月が経ちまだ彼女は戻らなかった

彼女の母親は娘が誘拐され亡くなったと思い始めて倒れ入院を余儀なくされた

彼女の父親も妻が倒れ、娘が見つからず酷く憔悴し切っていた


俺自身も彼女が居なくなり心配はしていた

いや、心配し過ぎて正常な判断を持てていなかったのだ


(俺も異世界に行こう!行ってミナミを連れ帰らないと!)

冷静だったら如何にバカバカしいと思うだろうか、俺はその時に素晴らしい考えだと確信していた


異世界への入口を探す為にネットで情報を集めて信憑性が高いモノを片っ端から試した

とあるビルのエレベーターで決まった階層のボタンを押す等もやった


何日も大学をサボり試行錯誤してもたどり着けない

やっぱりそんなに都合のいい話はない、そう諦めかけた時に同期の1人から電車の話をされる



【きさらぎ駅】

都市伝説の降りてはいけない駅、死人の駅、あの世に繋がっていると諸説様々ある

太鼓や笛、鈴の音を鳴らす集団に近付いてはならない

黄泉比良坂への入口とも言われる

つまりは、死後の世界への入口

しかし、携帯やスマホの電波が届き写真は撮れない、線路に降りてはいけない等の独自のルールさえ守れば無事に帰れる



そうして、【きさらぎ駅】探しの旅行を始めた

登山用ザックに水や食料、ライト、スマホバッテリーを詰め込み電車に乗る

ただひたすらに乗り続ける

6路線目にして風景が変わったのだ

海や大きな河川が無い路線にも関わらず風景はずっと水辺が続く

周りを見回しても乗客は居ない

「次は・・・・・・△※×Ω・・・やみ駅・・・」

機械音声のようなどこかおかしいアナウンスが流れる

やみ駅では降りない次の【きさらぎ駅】が目的地なのだから


暗闇のホームに到着する

「おおおおお降りの・・・お客さままま・・・ござざざ・・・ご注意ください」

扉が開くも誰も降りず乗車もしない

情報だと死人以外の乗り降りがないとの事だ


またしばらく電車が進むと

「次は・・・きさらぎ駅・・・きさらぎ駅・・・」

目的地を告げるアナウンスがスムーズに流れた

壊れた機械音声ではなく普段聞いてるようなアナウンスだ


「きさらぎ駅です・・・扉が全て開きます・・・お降りのお客様・・・ご注意ください」

電車の全ての扉が開く、両サイドの扉が開く

ホーム側の扉から慌てて降りる

ホームには提灯の灯りが煌々として駅とは思えない風景だ

改札口に向かうと駅舎の外側から太鼓や笛、鈴の音が近付いて来る


(マズい・・・外に出られないじゃないか!)

駅舎の中で隠れらる場所を急いで探すも何も無い、椅子や机どころか何も無い箱型の空間に出入口だけなのだから

病む負えず駅長室に飛び込む

中は箱型で待合室からは丸見えで失敗したかと思われたが不自然な地下への階段があった


走って階段を駆け下りると地下はレンガ造りのワイナリーのような刑務所のようなだだっ広い空間だった

牢屋と扉がかなり奥深くまでズラッと並び、上の連中に捕まれば死ぬまでココに監禁されるのではないかと連想させる印象を強くもたされる

試しに近くの扉を開けると中に黒い獣が見え吠える

慌てて扉を閉めると太鼓の音が近付いて来る


奥へ逃げる、ひたすら奥に

異常な空間のせいかすぐにバテてしまう

見つかったら死ぬと思い覚悟を決めて目の前の扉の中に入った


「やぁ・・・こんな夜更けにどうしました?」


彼女を探し始めて、初めて後悔した

何故、自分の命をかけてまで死の危険のあるこんな場所に来たのだと

木のテーブルに木の椅子、タキシードのような服を着た何かが椅子に腰かけながら質問してきた事で絶望した


顔が無い



目、鼻、口が無いのっぺらぼう

しかし、髪の毛や耳はある

顔が無いだけでこれ程恐ろしいだなんて想像した事すらなかった


「君、聞こえているかい? 耳はまだ正常か?」

「は、はい」


まだ正常と言う事はあの外に居る太鼓を叩く連中の音に異常をきたす何かがあるのだろうか


「よろしい、それで・・・君は何しにここまで来たのかな?」

「あ、あの人探しをしに・・・」

「その人はこの場所に来て居なくなったのかい?」

「違います・・・違いますけど別の場所と言うか・・・」

「おや、それは大変だぁ。なかなかに込み入った話のようだからお茶でも飲みながら話そう」


顔が無い男はスっと立ち上がりティーポットに茶葉を入れお湯を注ぎ入れている

カップを2つテーブルに並べ、紅茶らしきモノを注いでいく


「椅子に座って飲みながら話そうか」


勧められるまま席に着くもお茶は得体が知れないので飲まない事にした

そして、友人の女性が行方不明になったと関係性を誤魔化して説明をした

ここが異世界への入口ならば彼女の居る世界にも繋がるのではと


「あ〜それはね・・・」

〈〈ドン!ドン!ピーピー!チリン!チリン!〉〉


部屋の扉の外からけたたましく太鼓、笛、鈴の音が響き渡る


「五月蝿いな・・・座ったまま待っていてくれよ」


顔が無い男は苛立ちを隠さず扉に向かって行き、少し扉を開き勢い良く閉めた

すると音が止み静寂が戻る


「お待たせ、まったく無粋な奴らだね」


何事も無かったかのように席に戻って話を続ける顔が無い男


「それで、その女の子が居る世界とやらは女神様が居るんだね?」

「彼女が言うには女神様が呼びに来たと」

「んん〜顔写真なんかあればどうにか出来るかもしれないよ?」


ようやく彼女にミナミに会える希望が繋がった


「ただし、条件があるんだ。聞いてくれるよね?こちらだけ頼まれるのは取引にならない」


条件、怪しい顔が無い男からの条件

とてつもなく危険な予感しかない

まるで悪魔の取引が如く魂でも要求されるのだろうか


「取引の条件を聞かないと頼めません」

「後じゃあダメかい?君とその女の子が無事に帰って来てから・・・」

「先に!先にお願いします!でないと後出しで命やら魂を要求されるかもわからないので」


顔が無い男は腕組みをしてしばらく考え込み始めた


「よし、わかった。先に条件を話そうか」


男からの条件は意味がわからなかった

彼女の居る世界のとある神様を殺す事

その為に好きな能力を付与して俺にくれると言うのだ

その神様を殺しても世界に影響は無く、むしろ喜ばれるだろうと

トドメを俺自身が刺せば条件達成で何人で戦っても良いらしい


「それで君はどんな能力が欲しい?

不死身になるとか吸血鬼になる勇者の力を持つとか強力な武器を産み出す能力なんか楽しくないかい?」


漫画の主人公のような能力を思い付く限り提案されたが俺は最初から決めていた能力がある

彼女を探すにしても神殺しを実行するにも便利な能力、タイムリープだ

時間を戻せるなら死にかけても彼女が人質に取られてもやり直しがきく

神殺しに何回も挑戦出来るのも便利なはずだ


「攻撃防御ともに不安な能力でやってけるのぉ? その女の子が居る世界はファンタジーよろしく何でもありな世界だ」

「何でもありの世界なら余計にタイムリープでお願いします」


それから顔が無い男は紙に羽根ペンを走らせて何か書き込んでいく


「おっと、名前を書かないといけないんだけどお互い自己紹介がまだだったね

僕はしがない闇の妖精ヒューリーだよ、訳あってこんな場所に住処を置いてるのさ」

「妖精・・・悪魔や神じゃないのか?」

「あははは、君は酷い奴だなぁー見た目は認識の差だけだし騙したりしてないじゃないかぁ」

「だって、ヒューリーに得がある話じゃない

だからこそ危機感を覚える」

「僕はね・・・君に頼んだ神殺しの相手が堪らなく大嫌いなのさ

見ればムカつき、話せば殴りたくなり、話のネタに名前が上がるだけで吐き気を催す、そんなありふれていない程の憎悪を覚える相手だから」


まるでぶつかった時にごめんなさいと条件反射的に言うかのような感じに大嫌いな相手を貶すヒューリー


「理由はわかった、俺は利田コウだ。

ヒューリーと俺のお互いに満足いく結果になるよう努力するよ」

「ははっ、多分だけどコウ君もアイツを見れば嫌いな理由がすぐわかるさ」


サラサラと書き込みを再開して書類を書き上げていた


「これが誓約書だコウ君の能力もこれにサインすれば発動出来るよ」

「はい、これで大丈夫ですか?」

「OK〜、じゃあ早速あちらに転移するけど準備は良いかい?必要な物とかあれば言ってくれよ」

「問題ありません。彼女が居る世界がどんな場所なのか教えて貰えると助かりますが」

「そうだなぁ〜、神様の代理戦争中の世界ってところだけは知ってる」

「代理戦争?神様本人ではなく誰かが代わりに勝敗を決めるんですか?」

「そうそう、代理人が勝てばその神様の勝ちで負ければその逆さぁ」

「それって・・・戦争に参加して標的の神殺しをしなきゃならないんじゃ・・・」

「違う違う!僕と君は代理戦争に参加はしないで隙間を縫って奴を叡智の神を殺すのさ」


叡智の神・・・つまり知識に長けた神様か

戦略面でもなかなか骨が折れそうな問題になった


「それでは良き旅になるよう、またね?」

「わかりました、出来るだけ早く戻れるようにします」


誓約書が燃え出した瞬間に暗闇の空間へ引きずり込まれ意識が途絶えた


お読み頂きありがとうございます

初投稿でつたない文章で誤字などあると思いますがお楽しみ頂けたら幸いです

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