夏の日の夢物語
季節の内で夏は好きでした。ただ、子供のころは、ですが。今は、それほど好きっということがなくなりましたが嫌い、というほどではありません。ってことで、夏です。
「密やかな愉しみ」
彼の詩の中に一粒の
真珠の囁きが漏れる
たとえば
朝霧の中を飛ぶ鳥の煌めき
夕闇が落とした翡翠の結晶
そして森の精の銀糸のレース
汝、詩の陶酔に溶け
その忠実な狂気、恥じらいの仕草
彫像の立つ丘の、その陰の
緑の嘆息の闇から顔を出し
ヴィーナスの微笑を彼におくる時
その蒼い声に魅せられた詩人の声は
海の魔人の力で水底の
ヴィーナスの羽を招く
そしてその美しい黒髪の香りの中へ
融けていくのだろう
汝の密やかな詩
悦楽と哀しみ渦巻く
それは際限なき衰えの徴か
「秋の気配」
けだるい夏の午後
陽が下がる
潮まねき
そんな草葉の囁きに
風が吹く
けだるい夏の午後
風が吹く
とろりとした
眼に映る
陽の光
けだるい夏の午後
眼に映る
葉の光
つくつくほうし
蝉が鳴く
けだるい夏の午後
つくつくほうし
蝉が鳴く
風が吹く
夏の風
けだるい夏の午後
風が吹く
夏の風
眠気が襲う
やわらかく
けだるい夏の午後
眠気が襲う
やわらかく
夏の風
肌を撫でる
けだるい夏の午後
夏の風
肌を撫でる
あらわな夏の
黒い肌
けだるい夏の午後
草葉の囁きに
蝉が鳴く
つくつくほうし
つくつくほうし
けだるい夏の午後
眠気の中に
盗み見る
秋の光
透明な
けだるい夏の午後
つくつくほうし
蝉が鳴く
陽が下がる
秋の風吹く
「月の夜に想う」
誰も知りはしない
心の中に月があることを
蒼白の月の心のことなどは
銀のヴェールに包まれて
暖かく眠っている少女の
安らかに寝息を立てているそのほほに
可愛いえくぼがあることを
風の精たちがはにかみながら近づいて
ひざまずいてほほに接吻をしていく
その風のショールの感触、真綿の香り
天使のささやきの寝息に
夢の世界
きっと空の精の子供なのさ
遊び疲れたいたずらっ子の・・・
入道雲の上や
静かな微笑の溢れる木陰の
小さな太陽の分身たちと
きっとはしゃぎまわる
優しい人の憧れとなって
小さな少女の可愛い仕草
浅い水面にほのかに映って
蒼い月の光が銀のヴェールで
彼女を安らげる
星は優しく夢の世界で語り掛け
いつも闇で怖がらせたりはしない
優しい彼女のことだもの
ウーーん、あまりにさらっと過ぎるのは、どうかなって思いましたが、何事も起きなかったっていうことが真相でした。