梅雨明けを迎えました
やっとのことでたどり着いた感が強いです。思えばいろいろありました・・・
「梅雨明けの空」
雨上がりの風が
湿った空気を運んでくる
土と草のにおいがする
乾ききった胸の中に静かに流れ込み
わずかに濡らし冷やしてくれる
初夏の日の灰色な淵にも
青い匂いやかな風があるのかと
驚いたのだけど
音のしない所で
一握りの風と共に
人間を恋しく思う
そんな気持ちが湧いてきた
雨滴がひとつ飛び込んできた
空を見上げる
「友人を助けなくちゃね」
太陽の熱い語り掛けが
ほぬ、ほぬと音を立てて滲みてくる
うっすらとヴェールのかかった
青い空
本当は胸にいるはずなんだけど
ぐるぐる動き回るって
今はお腹にいるんです
彼の名は怪物と言います
鋭い視線を浴びせかけ
平和な人を馬鹿呼ばわりして
彼らを震え上がらせるのに十分な
恐ろしい顔をするのです
いつも、いつも、知りうる限りの罵倒を口走り
青い炎や、赤い炎や、黄色い炎を燃え上がらせて
身悶えして罵るのです
人の献身的な姿をみると
まあ、頑張ってくれと無関心を装い
同情は優越した者の差別と蔑む
太陽の語り掛けがだんだん強くなって
天に伸びあがる雲に刺激されて
透明なさわやかな風に考えます
破れ靴の紐を結ぼうか
白い鐘を打ち鳴らそうか
遠くの森に小道をつけようか
洋上の空の青さに溶けようか
怪物はまんざら悪いことばかり
いうわけではないんですが
時には私の友人に襲い掛かります
良心という名の友人に
「浜辺の散策」
貝殻の住んでいる
真白い砂浜で
母の温もりを背に
潮の匂いを感じ取る
光が、宝石の貝殻の輝きが、熱く
波の音に魚たちの囁きが交わる
羽衣の袖をほほに感じ
そぞろ歩きの風の精たちが
周りにいることがわかって
海と山と空の青を
胸いっぱいに吸い込んだりしている
「夏の日の幻想」
私にしても、誰にしても
夏は暑いに決まっている
寒かったり
冷たかったら
お前はどうかしているんだ
湿った風の箒が
草原の柳の枯葉を
掃き散らせているような
冴え冴えとした風景の心が
たとえお前にあったとしても
さやかな光に包まれた
早春の青葉の中の
苔むした古木のような
閑寂な空気の気持ちが
たとえお前を捕らえていようと
透明な水底の
泥土に沈んだ沈没船の
マストに根付いた水藻の群れに
引っかかった小さな泡の叫びが
たとえお前を怖がらせていようと
体に汗が水玉を作っているのに
冴え冴えとした空気を
体いっぱいに満たしている
お前は何に導かれ
ぼんやりと彷徨っているのか
「夕暮れの詩」
蒼白の仮面をつけた
彫像の立ち並ぶ夕べに
夕暮れの赤く燃える空が
透明な瞳に焦げ付くような
遠くを、明日を見つめる時
苦しみに歪みもしない唇の奏でる
動きのない詩が流れる
それは私の嘆きを労わるようだ
優しい霧か
それとも、海の魔物の呼び声か
かくして、詩人の放浪が始まる
昨年は、大変なことの多い一年でしたが、今年は、いつもと同じ季節を迎え、過ぎるといいのですが。世界の気候が狂ってきたごとくの有様は、正直ため息が出ます。