表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

彷徨する心 2

今回は長い詩の回です。ちょっと長いです。たまたま重なりました。呆れないで、辛抱強くお付き合いいただければ嬉しいです。

  「今日に拾う」


外は雨がしとしと降り続く

闇は息を止め、迫り寄る

大きな蕗の葉の下の蟻の巣から

沈黙の中に歩みだす兵隊蟻たち


挿絵(By みてみん)


水玉に映る街の灯になんか目もくれず

進み行く蟻たちよ、何処へ

寂しいお前たちの精いっぱいの

自己主張か、それとも?


雄蟻たちの奔放不羈な精神に

雌蟻たちはついて行けない

腐朽した長老の頭脳には

夏の世の夢に似た虚しさが理解できない


不軌をたくらむ夢多い若蟻には

狭い巣穴も、長老の世界にも飽き足らず

レジスタンスに明け暮れる

吹き溜まりの主どもに明日はない


挿絵(By みてみん)


虚しさにもがきながらも、なお

信じることを忘れず、けど

もう嘘には欺かれ過ぎた

吹き溜まりにいた彼らたち


空転する言葉には、もう見切りをつけ

雨だれの音と、吹きすさぶ風の音と

心に染み入る歌声と

節穴の中の世界を夢見ている


旅に出よう

そう語り始める彼らたち

愛を求め、世界につながりを作るため

そう歌い始める彼らたち


闇は静かに迫りくる

残り少ない青春に光を見て

それで歩こうとする盲目の

蕗の葉の下の若蟻に


あるのはただ歌声と、それに

心の叫びと

ただ、苛立たしさと、虚しさと

明日の光の不安だけ


挿絵(By みてみん)


歩みだす兵隊蟻について回る

亡霊どもに、ひらひら舞う

見慣れぬ紙一切れ

生命の使者への絶対の楔


巣穴の外に出る蟻の静かな叫びは

地を透り、蒼穹を飛び、彼方の世界へ

外は雨

大きな蕗の葉の下の、小さな出来事


雨だれに押しつぶされる

小さな世界

歩き回る苛立たしさと

若蟻たちの歌の声




  「初日の出を待って」


新しい年を待ち焦がれていた

そして今、眠っていた時が

静かに流れ始め

蒼穹一面に星が煌めき続ける


日の出を待つ心に

夜は長い、はるか遠くの

小さな世界からの、光輝が漏れるのを

雲の中から覗き見る


挿絵(By みてみん)


もう二度とは来ない一瞬の安らぎのための

小さな努力も今は惜しい

何もなかった過ぎ去りゆく過去に

定着液を流し込む


足には歩き疲れた快い重みが残り

心には澄んだ星空が残り

さらに多くの友の歌声が響く

遥か昔・・・


もうきっと来ない心の日々を

懐かしみ歌う

枝に残った一つきりの柿の実

泣きじゃくる、涙を星に飛ばしている


挿絵(By みてみん)


遊びまわる子供たちに、もう

春は来ているのか

木の芽吹く暖かい季節

渡り鳥の渡りが始まる緊張した日々が


生命の存在意義が失われたと思っていた

けど、水面に星は光り、映り

すべての座標に定着する

心の木霊




  「抜け殻の積もる景色」


いつの頃からか

シャボン玉を飛ばすのがうまくなった

いつも私の周りには、かならず

二つ、三つは浮かんでいる

大きいのや、小さいのや

透明なその姿

ほとんど気配さえも分からない

ときどきそっちの方へ歩いて行って

ぶつかって壊してしまう

そうすると、砕け散るその時に、ちょっとの間

空白が生まれる、ちょうどそれは真空

すべてのものを吸い込んでしまうような


さわやかな風と共に流れてきては、砕け散る

お日様の光に当たっては、砕け散る

春の温もりに、砕け散る

夏の日差しも、秋の風も、枯葉も、雨も、雲も・・・

季節が替わると、砕け散る


挿絵(By みてみん)


砕けてはまた生まれ、生まれてはまた砕け


私の中身を吸っていく

残るのはわたしの抜け殻だけ

だから、そこいらじゅうに積もっているんだ、抜け殻が


また一つ、砕けては、生まれ出る

シャボン玉の雫が落ちては

私が生まれる

雫は私

私は雫

そんな運命のシャボン玉の、涙の一滴




  「静かな時、スケートリンクにて」


とりどりの色彩が飛び回り

氷を切る音と、削る音と、白い息が聞こえる

歓声を上げて、走り回るスケート靴

その中を、裸の人間たちが泳ぎ回る


不安げな面持ちで、それでも

懸命に泳ぎ、抜けていく人々

流れ去るひと時の陶酔に心酔して

追い求める幻想に憑かれ


挿絵(By みてみん)


風に流される木の葉の間をすいすいと

縫って走る霧のような実在

そっと、温めながら、見回す愛の人に

一瞬の後の空白の泣き笑い


飛び交う歓声と光線の中

嬉しい人々の快い仕草に思う

透明なヴェールに包まれた、氷の上の

張り詰めた空気に寄せる花束


心に押し寄せる小波のような感傷

労わり合い、肩を寄せる、小鳥たち

同じ顔をした天使に、放たれた矢は

何を考えて飛び過ぎるのか


挿絵(By みてみん)


流れる視線を気づかい

ほほえましくもおどける、小さな道化師たち

ただ、青い氷の上には

小さな微笑みの結晶

次は、一休み?の回となるでしょうか?くれぐれも気を抜かないように頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ