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スキルま!?〜最弱不死とドラゴンのパンツ〜  作者: ほろよいドラゴン
第二章〜乙女の涙と女神の涙〜
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第13話「最弱不死とエルメラルドの森(2)」

 獣人族とエルフ族の国リフォレスト。

 アガレリアと比べればそう発展していないだろうという俺の予想に反して、そこは温かみのある木造建築と石煉瓦で作られた家々が立ち並ぶ、どこか懐かしさを覚えるような美しい街並みだった。

 基本的にラノベなんかではエルフは美人に書かれていることが多いし、きっとここに住むエルフも美形揃いのエルフが多く住んでいるのだろう期待していたのだが……。


「……なんか、エルフ族少なくね?」


 ざっと辺りを見回してみても、エルフ族の数は片手で数えられる程度しか見当たらない。

 そして街行く獣人族達の様子もどこか沈んでいたり険しい顔つきだったりと、その雰囲気は異様さを放っていた。


「確かに気になりますね……。兄様。ボクが聞き込みをしている間に、元の姿に戻って待っていて下さい。街にさえ入れば侵入者と思われることは無いと思いますし、今の兄様の姿よりはマシなはずです」


 さらっと俺の姿をディスったエルマがそう言い残してその場を離れてから数十分。


「お待たせしました、兄様。親切な獣人の方に色々と教えてもらえたので、宿に向かいながらお話ししますね」


 宿を探す道中でエルマが集めた情報をまとめると、こうだった。

 『結晶症』。

 それがこのリフォレストでエルフ族を見かけない理由らしい。

 少し前から突如としてエルフ族にのみ発症したその病は、体の一部が結晶化していき、最後には全身が結晶化してしまうという恐ろしい病なのだそうだ。

 その原因は、今のところ不明。

 唯一魔力を回復するマナポーションが効果的だと判明しているが、それを使ったとしても一時的な回復しか効果が見込めないらしく、エルフ族を伴侶としている獣人族は頭を悩ませているとのことだ。

 なるほど、ダリアさんが言っていた『色々あって気が立ってる』ってのはこの事か。


「まあ、病気に関しては俺達じゃ何もできないよな……。聖なる泉が見つかれば、もしかしたら治せるかもしれねーけど。そういえば、聖なる泉については何か分かったか?」


 俺の言葉に、エルマが横に首を振る。


「残念ながら、皆さんそれどころではないという感じでしたね……。あ、ですが先程言った親切な獣人族の方は『少し調べてみる』と仰っていました」


 う~ん……。

 その親切な獣人とやらがどこまで調べてくれるかは分からないが、せっかくリフォレストまで来たというのに、結局は進展なしも無いし、協力を得られそうにもないか。

 と、俺達がそんな会話をしながら歩いていると。



「さあさあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 冒険者の都アガレリアからウチらが仕入れた、高純度マナポーションですよ! 一本なんと5000ミュールですよ!」



 すぐ近くの市場らしき方向から、どこか最近聞いたような女の子の声が聞えてきた。


「兄様、今の声って……」

「行ってみるか」


 どことなく嫌な予感を感じながらも、俺達が市場の方へと向かうと。


「はい。お買い上げありがとうございましたー!」

「フフ……。あらあら子犬くん、寄って見るのはマナポーションの方で、私のプロポーションじゃないわよ?」

「……何おっさんみたいなこと言ってんだよ、ダリア」

「だっ、誰がおっさん……って、ルーキー君!?」


 予想通り、そこには元気な声で獣人達にポーションを売っているリーディアと、おねケモショタ案件を発生させているマゼンタの凸凹トレジャーハンターコンビの姿があった。



「つまり、お二人はこれまで何度かアガレリアのバーゲンで安く仕入れた食料品や魔道具を、このリフォレストに転売して一儲(ひともう)けしていたと?」

「フフ……。その通りよ。アガレリアのアイテムは品質もしっかりしているからリフォレストでも人気だったんだけど、まさかルーキー君と守護貴族君にバレちゃうとはね」

「どうします、お姉様。処しますか? 特にそこの変態には、ウチに淫らな妄想を無理やり見せたという前科がありますし」

記憶(きおく)捏造(ねつぞう)してんじゃねーよ! お前が勝手に見たんだからな!?」


 リフォレストの酒場にて。

 凸凹トレジャーハンター姉妹に話を聞いてみてると、二人はあっさりと転売していた事を白状した。


「にしても元値が500ミュールのマナポーションを5000ミュールって、ボッタクリじゃねーか」

「フフ……。そう思われても仕方がないけど、こんな危険な場所まで商品を持ってくるのも大変なのよ? 付き合いの長いリフォレストの人達もそれを承知してるから、これまで値段に文句を言われたことは無いわね」

「もっとも、ウチ達が獣人族の方々にもうちょっと安くしてもいいって言っても、恩義(おんぎ)がある方々に対してそれは失礼だって聞いてくれませんしね」


 リーディアの言葉に、俺とエルマは顔を見合わせた。

 恩義があるって、もしかして……。


「まさか、奴隷商売のアジトを壊滅させたトレジャーハンターって」

「お姉様ですね。……元々孤児だったウチは、このギフトスキルの能力に目を付けられた奴隷商人に引き取られて、競売にかけられる予定だったんです。そこにお姉様が颯爽(さっそう)と現れて、私達を助けて下さったんです。あの時のお姉様はカッコよかったなあ……」


 マジか。意外と世間って狭いんだな。

 思い出に浸っているリーディアの横で、さっきから酒が変な所に入ったのか(むせ)てる今のマゼンタの姿からは全然想像できないけど。


「フフ……。死ぬかと思ったわ。それで? ルーキー君と守護貴族君がなんでリフォレストに?」

「ああ、実はな……」


 俺が事情を話すと、二人は神妙な顔つきになった。


「……それ、ガセネタじゃないですか? もしそれが本当に存在するなら、エルフ族が今みたいに結晶症に伏せるなんて事は無いでしょうし。さすがに胡散臭(うさんくさ)すぎます。ねえ、お姉様?」


 聖なる泉の存在を信じていないリーディアがマゼンタに同意を求める。

 まあ、エルマが無条件で信じてくれたから忘れていたけど、普通の人が聞けば与太話やおとぎ話の類と思うのは当然だろうな。

 だがしかし、マゼンタの反応は違った。


「フフ……。確かにリーディアの言う通りね。でも、存在しないと決めつけるのは早いんじゃないかしら?」

「お姉様?」

「長い歴史に埋もれ、その存在が忘れられてしまっているという可能性も無い訳じゃないわ。そして、そういうモノを見つけ出すのが、私達トレジャーハンター本来の使命だと思わない?」


 隣でそれを聞いたリーディアが何かを察したのか、諦めたように溜息をつく。

 俺にはリーディアのような心を読むギフトスキルみたいな力は無いが、マゼンタが次に何を言い出すのかは何となく予想出来た。

 その好奇心に満ちたキラキラとした瞳をする相棒を、俺は誰よりも知っているからな。


「ルーキー君。面白そうだし、私も君達のパーティーに加えてくれない? そんな面白そうな話を聞かされたら、トレジャーハンターとして黙ってられないもの!」

「……やっぱり。この変態のパーティーとか死ぬほど嫌ですが、お姉様が参加するならウチも参加します」


 ウキウキとした様子のマゼンタと、渋々と言いたげな顔をしながら差し出されたリーディアの手を握ることで、俺はその言葉に応えた。

 色々と面倒な姉妹ではあるが、たった二人でこのリフォレストまで辿り着いたその実力は本物だろう。

 そんな二人が仲間になってくれるなら心強い。

 とは言っても、依然(いぜん)として問題は山積みだ。

 中でも特に問題なのは、聖なる泉の所在が未だに掴めていないという部分だ。


「マゼンタもリーディアも、聖なる泉が何処にあるのかなんて知らないよな?」

「さっきも言ったけど、ウチは今まで聞いたこともないです。お姉様もそうでしょう?」

「フフ……。でも、知っていそうな人物に心当たりならあるわよ?」

「「「え!?」」」


 マゼンタの言葉に、俺達だけでなくリーディアも驚きの声を上げる。

 その様子を満足げにしばらく眺めていたマゼンタは、懐から小さな小瓶を取り出した。


「マゼンタさん、それは?」

「アガレリアのバーゲンで入手した、ただの美容液よ。でもこれを使えば、もしかしたら何か情報が得られるかもしれないわ」

「……なるほど。さすがお姉様です」


 自信満々にそう語るマゼンタの横で、恐らくギフトスキルでその意図を読み取ったのであろうリーディアが深々と頷く。

 頼むから俺達にも分かるように会話して欲しい。


「ええっと、つまりどういうことだ?」

「フフ……。このリフォレストにべラドナというエルフ族の長が居るのは知ってるかしら? その方は美容関係に特に熱心な方でね。普段なら私達でも会うのは難しいんだけど、美容系のアイテムを仕入れた時だけは会うことが許されているの」

「そこでウチが聖なる泉について鎌をかければ、何かしらの情報が得られるかもということです。知らないふりをしても、ウチのギフトスキルの前では喋っているのも同然ですからね」


 なるほど。確かにこの街の長であるべラドナという人物なら、聖なる泉について何か知っていてもおかしくはない。

 ……にしても、リーディアのギフトスキルはとことん相手にすると厄介で、味方になると頼もしい能力だな。

 コイツの前では、迂闊な事を考えないように注意しておこう。

 と、俺が心に誓ったその時だった。



「……アンタ達、話は全部聞かせてもらったよ」



 その声と共に俺達のテーブルの近くからガタンとけたたましい音と共に椅子が倒れた。

 見るとそこには、俺達がリフォレストに入るのを手助けしてくれた銀髪のダークエルフお姉さん。

 ダリアさんが険しい表情で俺達を睨んでいた。

 そのままゆっくりと俺達に近づいて来るダリアさんの眼光は、まるで怒りを必死になって堪えているかのように殺気立ち、気の弱い奴ならこれだけで失神してしまいそうなほどのプレッシャーを放っている。


 ――ヤバい。


 俺の研ぎ澄まされた第六感が、ダリアさんを敵に回すなと全力で警鐘を鳴らしてくる。

 それを肯定するかのように、マゼンタとリーディアの顔がやってしまったと青ざめ、あのエルマでさえも剣に手をかけて警戒している。

 やがてダリアさんは、俺達のテーブルに辿り着くと。



「……ひっぐ…………うぐぅ……」



 突然、大粒の涙を流して嗚咽を漏らしながら泣き始めた。

 ……え? 何事?

 あまりにも予想外な行動にその場に居た全員が呆然とし、エルマもどうしたらいいのかとばかりに俺を見てくるが、そんな目で見られてもお兄ちゃん困る。


「……ぅ、うお~んおんおんおんおんっ!! あ、あんばばじ! がなじばびがせてもぎゃっぱお! なばばのだべにこんばあぶなびもぎにくぶなんで、あだいはがんどぉじちゃんたよぉおおおお!!」

「え? な、なになになに? 一旦落ち着こう? 一旦落ち着こうかダリアさん。もう何言ってるか全然分かんないから!」


 涙と鼻水でグシャグシャになったダリアさんを全員で必死に(なだ)めること数十分。


「……悪いね。昔からどうにもこの手の話には弱くて……」


 どうにか普通に言葉が離せる程度にまでは回復したダリアさんが、そう言いながら豪快に鼻をかむ。

 黙っていればクールビューティーなのに、なんで俺が出会う美人は、こう一癖も二癖もある奴ばかりなんだろうか。


「てか黒髪。アンタ、男だったのかい? アタイと会った時は女だったような気がするんだけど」

「……実は俺、普段は女なんですけど、水とか浴びたり飲んだりすると男になる呪いをかけられてるんです」

「うっそだろ……? その呪いをかけた奴は何考えてんだい? 自分がそんな状態なのに仲間の為に……くっ! もしその呪いをかけた奴を見つけたらすぐにアタイを呼びな。代わりにぶっ殺してやる!!」


 ……どうやらダリアさんはその見た目とは裏腹に、ほんの少し、いやかなり純真な人のようだ。


「そ、そうだったんですか!? こ、これから兄様の事は、姉様とお呼びした方がいいんでしょうか……?」

「落ち着いて下さいエルマ様。あれがデタラメという事くらい、ウチの能力を使わなくても分かります」


 何故か信じかけていたエルマがリーディアに小声で窘められている。

 ここにも居たよ、純真な子。

 閑話休題(かんわきゅうだい)


「フフ……。それで、ダリアさん。さっき私達の話を聞いていたと仰っていましたけど……もしかして、止めに来たんです?」

「アァン? さっきも言ったが、アタイはアンタ達の仲間を想う心と、その為にこんな危険な森にまで来る度胸に感動したんだ。そのアタイが邪魔をするわけないだろ。むしろアタイも手伝いたい!」


 マゼンタの言葉に、心外だとでも言いたげな顔でそう語るダリアさん。

 あの豪快に泣いてる時に言っていたグ〇ンギ語みたいな意味不明な言葉はそんな事を言っていたのか。


「意外ですね……。ウチはてっきり、ダリアさんってべラドナさんが(やと)った用心棒(ようじんぼう)みたいなものかと思ってました。リフォレストを襲う魔物とかも数多く退治してるって聞いていましたし」

「よう、じん……? よく分からないけど、アタイは雇われてる訳じゃないよ。あれは寝床を貸してもらってる料金代わりみたいなもんさ。べラドナからそういう感じの話はされたけど、アタイはここの住人は好きだがアイツは好きじゃなくてね。アイツが何か隠してるのを暴きたいってんなら、好きにすりゃいい。それで黒髪。返事はどうなんだい?」


 ダリアがべラドナの話になんか興味ないとばかりに手をヒラヒラとさせ、俺をじっと見つめてきた。

 正直、ダリアさんにはあまり関わらない方がいいと俺の勘は言っている。

 だがリフォレストに生息している魔物を相手に聖なる泉を探すとなると、戦力はあればあるほどいい。

 その点、リーディアの話から考えてダリアさんの戦闘能力は申し分ないだろう。

 …………。


「……分かった。ダリアさん、聖なる泉を探すのを手伝ってもらってもいいですか?」

「アァン? 固っ苦しい喋り方してんじゃないよ! 今この時を持って、アタイ達はなんたらの泉を見つける仲間。つまりは苦楽を共にする家族だ。もちっと砕けた喋り方をしな!」


 俺の言葉に満面の笑みを浮かべながら、ダリアが高らかにそう言って俺の肩に腕を回してくる。

 陽キャのような距離の近さに若干戸惑ったが、不思議と悪い気はしなかった。

 数秒前に言った単語をもう忘れているのは気になったけど。


「よっし! なら今日は探索隊結成の記念に飲み明かすよ! 親睦を深めるには、酒と美味い料理を囲むってどの世界でも相場は決まってるからね!」


 と、ダリアさんが木製のジョッキを大きく掲げた時だった。


「ちょっといいか。それなら、オレもその宴に混ぜてくれ」


 背後からかけられた男の声に振り向くと、そこには身長が2mはありそうな狼の獣人が立っていた。

 鋭く尖った牙や爪に切れ長な瞳。

 ふさふさとしていそうな毛皮の上に冒険者がよく着ているデザインに似た服を着込み、その背中には鞘に収まった大剣を背負っている。

 獣人族の冒険者か?


「ヴォルフさんじゃないですか。どうしたんですか?」

「お前さんを探しに宿に寄ったら、店主からここに居るって聞かされてな。丁度いいタイミングで来たみたいで何よりだ」


 獣人の姿を見たエルマが親し気に話しかける。

 どうやらヴォルフという名前らしい獣人族の男は、エルマと顔見知りのようだ。


「兄様。こちらはヴォルフさんと言う獣人族の冒険者の方だそうです。ほら、昼間に話した親切な獣人族の方ですよ」

「ヴォルフだ。お前さんの話は、エルマの嬢ちゃんから色々と聞いてる」


 エルマが嬢ちゃんの部分を否定したそうに頬を膨らませる中、俺とヴォルフが握手を交わす。

 めっちゃ肉球が気持ちいい。


「ボクは男なんですけど……。それよりヴォルフさん。ボク達を探していたということは、何か分かったんですか?」

「ああ。お前さん達が探している聖なる泉なんだが……結論から言えば、聖なる泉は今も枯れずに実在している可能性が高い」


 その言葉に、よく分かっていないダリア以外の面々が大きく目を見開く。

 そんな俺達のテーブルに、ヴォルフがアイテムポーチからボロボロの手帳のようなものを取り出した。


「エルマの嬢ちゃんに言われて探し当てた、俺の先祖の手記だ。今からざっと三千年くらい前の物みたいなんだが……。この最後の頁を見てくれ」


 ヴォルフがボロボロの手記から一枚のページを取り出し、俺達のテーブルに置く。

 その紙には、まるで後悔と葛藤がインクと共に滲み出たような字で、こう書かれていた。



『……これで、聖なる泉は永遠に枯れることはなくなった。これで我々が傷や病に嘆く事はない。だがそれは同時に、女神の涙も枯れることなく流れ続けることを意味する。……我々のした事は、決して許される事ではない。だが今の世で我々の行いを間違っていたと声を大にして言える者は居ないだろう。私もその一人だ。だがいつの日か聖なる泉を必要としなくなったその時。あの優しき女神の涙を止める者が現れると信じている。   ポチ』



 凄く重要そうな事が書かれてるのに、最後の名前がめっちゃ気になる。

 ヴォルフさんのご先祖様の名前、ポチだったのか……。


「随分と抽象的(ちゅうしょうてき)ですね。女神の涙とは、一体何なのでしょう? お姉様。聖なる泉の水は、女神様が流した涙だったんでしょうか?」

「フフ……。どうかしらね。何かの比喩(ひゆ)と考えるのが普通だけど、三千年前の手記にハッキリとその存在が記載(きさい)されていて、そこに永遠に枯れないと書かれている。だったら、それは見つけた時に確めましょう?」


 ……確かにマゼンタの言うように、女神の涙なんて比喩的な表現か何かだろうと思うのが普通の考えだ。

 でも俺は、何故かその一文が妙に引っ掛かった。


「さて、それで話を戻すんだが。オレをお前さん達のパーティーに入れてくれないか。リフォレストでも名高いトレジャーハンターの二人に、どんな魔物を相手にも負け無しで有名なダリア。それにオレの勘だが、エルマの嬢ちゃんも相当な手練(てだれ)れと見た。……そこのお前さんは、まあ、アレだが」


 ヴォルフが俺を見て気まずそうに眼を逸らす。

 いやまあ、実際その勘は当たってるんだけどさ。


「ともかく。そのお前さん達に土地勘のあるオレが加入すれば、聖なる泉が何処にあろうが見つけ出せると睨んでいる。自慢じゃないが、この森はオレにとって庭みたいなもんだからな。……例えそれが与太話であろうと、今この国を蝕んでいる病を救えるのかもしれないなら、オレはそれに賭けたい」


 そう言うと、ヴォルフは真っ直ぐな瞳で俺を見据えてきた。

 まあ、俺としては土地勘がある獣人族が仲間になってくれるのはかなりありがたい。

 エルマ達に視線を移すと、全員が同時に頷き返してきた。

 ――いや、ダリアだけはポカンとした様子でこっちを見てるけど。

 多分アイツだけ俺達の話を全く理解してないな。


「分かった。ヴォルフ、アンタの力を俺達に手を貸してくれ。詳しい事は……」

「話は終わったかい? なら今度こそ宴を始めようじゃないか! ほら、狼のアンタも仲間だってんならジョッキを持ちな! 安心しな。どんな困難が道を塞ごうが、全員まとめてアタイが面倒見てやる。だから、今夜は飲み明かすよっ!」


 ダリアの号令に、全員が言うだけ無駄だろうと苦笑を浮かべながら運ばれてきたジョッキを手に取る。


「それじゃあアタイ達、『うんちゃらかんちゃら捜索隊』の結成を祝して、乾杯!!」

「だから聖なる泉だって言ってんだろ!? いい加減覚えろよ!」


 客の少ない店内にジョッキのぶつかる音が鳴り響いた。


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