第22話「最弱不死と聖盾の騎士(6)」
貧乏暇なし、とはよく言ったもので。
フレステとの朝練を終えて帰ってきた俺は、汗を流すのもそこそこに、副業である便利屋の仕事に取りかかることにした。
ヴェルヴィアの読みが当たった事と、俺達の名前が聖盾の騎士との一件でそれなりに知られたという事もあって、我が便利屋には開業して間もないにも関わらず、既に何件かの依頼が舞い込んでいる。
特務クエストに比べれば報酬は微々たるものだが、なんとか生活していく分には問題ない。
既にメルティナとナナシは依頼先に向かったのか、客間のソファーには暇そうにゴロゴロしているヴェルヴィアしかいなかった。
ちなみに、今日フレステは手伝いに来られないらしい。
なんでも外せない用事があるらしいのだが、多分聖盾の騎士としての仕事だろう。
そんな事を思いつつ、着替えた俺が机に置かれている依頼書に目を通していると。
「ようやく戻ったか、主よ! 主の為に面白そうな依頼を探しておいたぞ! 見るがよい!」
それまでゴロゴロしていたヴェルヴィアがガバっと跳ね起き、俺に一枚の羊皮紙を見せてくる。
面白い依頼じゃなくて俺にも出来そうな依頼を見つけて欲しいんだが、こいつ割と気分屋だからなあ。
「ええっと、なになに……? 『私の宝を見つけてきて欲しい。場所はここから離れた場所にある森の中。期日は明日まで。見つけてくれたら、この世にも珍しい宝を分け与えることを約束しよう』……。なんだこりゃ? 差出人も依頼料も何も書かれてねーじゃねーか。おいヴェルヴィア、これって誰からの依頼なんだ?」
「知らん。店のポストに地図と一緒に入っておったのを持って来ただけじゃからな」
なにそれ、めっちゃ怪しい。
「誰かのイタズラじゃないのか? 宝探しなんて如何にも嘘っぽいし……」
「主の世界ではどうじゃったか知らんが、隠し財宝の話はこの世界には大量にあるぞ? それに、そこに書かれた世にも珍しい宝とやらがわっちは気になる。もしかしたら、その宝はアーティファクトやもしれんからな! もしそうであれば、高値で売れるやもしれんじゃろ? 一応言っておくが、他に主が出来そうな依頼は無かったぞ」
ヴェルヴィアが瞳をキラキラさせながらそう力説する。
本命はそっちか。
まあ、確かに俺の世界では子供の悪戯レベルの内容ではあるが、このファンタジーな世界ならあり得ない話とも言い切れない。
それにもしこの宝とやらがアーティファクトであれば、ヴェルヴィアの言う通り高値で売れる可能性があるのも事実だ。
今も俺のアイテムポーチに眠っている大量のローションパウダーこそ売れなかったものの、モノによっては百万単位の額がつくアーティファクトもあるらしいからな。
俺に出来そうな依頼が無いのであれば、この依頼を受けてみるのもいいかもしれない。
それに……。
「……よし。それじゃあ俺達で行ってみるか。場所は前に特異スライムが出たあの森だな」
「む? 魔物が出た時の為に他の者を呼び戻さんでもよいのか? まあ、わっちがおるから安心する気持ちは分からんではないが」
「お前が一緒に居て安心した事なんて今まで一度も無いけど。まだこの依頼がイタズラじゃないと決まったわけじゃないし、わざわざ呼び戻さなくてもいいだろ。それに、俺だって魔物から逃げ回っていたあの頃とは違うんだぞ? 秘密兵器もあることだし、俺のカッコいい所を見せてやるよ!」