第19話「最弱不死と聖盾の騎士(3)」
「……なるほど。なんっていうか、パイセンって【不幸体質】のギフトスキルを持ってるのかってくらい不幸に見舞われてるっすね」
パチンコ屋のバイトを終えたフレステと近くの公園で合流し、俺達の今に至るまでの事情を説明すると、どこか呆れたような言葉が返ってきた。
何そのハズレとしか思えないギフトスキル。絶対に持ちたくない。
「ともかく、メルティーはちょっと自重するっすよ。パイセンの前では猫被る必要がなくて、はっちゃけちゃう気持ちは分かるっすけど。そうでなくてもメルティーはちょっと天然入ってるんっすからね」
「ちょっ、私そんなんじゃ……。っていうか、天然って⁉」
「メールティー?」
「……はい。自重します……」
フレステの批難を込めた目に、メルティナが拗ねたような声を出して小さくなる。
全財産をスッたことに関して、多少は罪悪感を感じているようだ。
「とはいえ、困ったっすね……。お金の貸し借りって、あーしのポリシーに反するし。何件かバイトを紹介したいところなんっすけど、パイセン達は、その……」
「揃いも揃って無能者だからな」
言葉を選ぼうと言い淀むフレステの言葉を引き継ぐ。
実際、俺とヴェルヴィアが世間的に無能者という扱いなのは事実だから仕方がない。
ナナシによると、魔導機兵はギフトスキルに匹敵する機能を有しているものの、女神ではなく人工的に創られた命であるためギフトスキルが無いと判定されるらしい。
つまりは、俺達と同じ無能者扱いだ。
そうなると、唯一のギフトスキル持ちであるメルティナを頼りにするしかないのだが、それはそれで面倒事に巻き込まれる可能性が高い。
アガレリアなら無能者でも雇ってくれる可能性があると言われてこの街を目指していたのだが、フレステの反応を見るにどうやらそれも難しそうだ。
「はぁ……。そこぞの聖女が全額スッたおかげで、残ったのは僅かな小銭と大量の粉ローション……。俺がエロ小説の主人公なら、異世界ソープランドでも開業しそうなラインナップだな」
俺がため息交じりに何気なく言った一言に、
「……開業? そうよ! それよ‼」
それまで小さくなっていたメルティナが顔を上げて反応した。
「まさか、異世界ソープランド⁉ いやいやいやいや、それはさすがに俺の良心が……」
「そうじゃなくて、開業よ、開業! お金を稼ぐ所が無いなら、私達が開業してお金を稼げばいいじゃない!」
そりゃまあ、開業できれば一番手っ取り早くはある。
「でもメルティナ。何の経験もない俺達が、開業なんて出来るわけないだろ? そもそも何の店を出すつもりなんだよ」
「ふむ。なれば、便利屋なんてどうじゃ?」
それまで暇そうに会話を聞いていたヴェルヴィアが口を挟む。
「今でこそ魔物討伐の組織として機能しておるみたいじゃが、本来冒険者とは人々の困り事を叶えつつ、未開の地の宝を探す者達の総称。それらの仕事を受けるものがおらぬ現代であれば、経験がなくともそれなりに需要もあって金も稼げると思うんじゃが、どうじゃ?」
RPGゲームで言う、お使いクエストみたいなものか。
たしかにそれなら経験が無くても出来るだろうし、大金は無理でも金は稼げる。
「でもそうなると、一番の問題は店舗ね。さすがに野宿してる便利屋に何かを頼もうだなんて誰も思われなさそうだし……」
「そりゃそうだろうな」
そんな便利屋がいたら、それは誰かを助ける側じゃなくて助けられる側だ。
「店舗……。それなら、ちょっと待っててくださいっす!」
そう言うと、フレステは以前持っていた携帯のような魔道具を取り出し、誰かと会話し始めた。
ヴェルヴィアによると、あれも三千年前の英雄の一人がこの世界に広めたオーパーツらしい。
結構高価なものらしいのだが、いつかは手に入れたい。
それから数分後――。
「パイセン。店舗の方、どうにかなりそうっすよ!」
通話を終えたフレステに連れて来られたのは、一軒のアイテムショップだった。
ブッグオフと同じくらいボロボロの外観をしたその店の入り口には、案の定、閉店を意味する看板が吊り下げられている。
「この店。あーしが前までバイトしてた所なんっすけど、経営不振が続いたせいで閉店しちゃったんっす……。この店の店長も、店をたたんで田舎に戻ることにしたそうで……」
「アガレリアではよくあることね。守護騎士制度で客層である冒険者が激減しちゃったせいで、この街を出た商人は数え切れないほどいるもの。このお店だって、昔はお客さんも多くてこんなにボロボロじゃなかったし」
フレステの言葉を、メルティナが寂しそうに引き継ぐ。
「……そうっすね。ただ、長年守ってきた店を取り壊すのは忍びないってここの店長さんが悩んでたのをパイセン達の話を聞いて思い出したんっすよ。そこであーしがさっき確認したら、このまま取り壊されるくらいなら、フレステちゃんのお仲間さんの冒険者に使ってもらった方がいいって、許可貰っちゃいました」
どこか寂しそうな、それでいて申し訳なさそうな表情だったフレステが、無理やり作ったような笑顔になる。
さっきのの通話の相手は、この店の店長だったのか。
そういうことなら、ありがたく使わせて頂こう。
「となると、後はシルディアナ家と、この街の責任者でもあるライアーさんに開業届の書類を出すだけね! 書く事が多くてめんどくさいらしいけど」
「開業届か……。メルティナ。ちょっと書いてもらって来てもらってもいいか?」
「えっ、私? こういうのって、リューンさんが行くべきなんじゃないの? 一応だけど、私達のパーティーリーダーってリューンさんってことになってるし。リューンさんの取り柄って、死んでも復活するか、必要な書類を書くくらいしかないみたいなところあるじゃない?」
「あるよ⁉ 俺にだって探せばもっと取り柄はあるよ⁉」
「主のいい所か……。そうじゃのう。一緒に寝たら暖かいとかかの? 二人旅をしておった頃は、何度も世話になったものじゃ」
「お前はお前で何を口走ってんの⁉」
「……確認。リューン様は幼女と一緒に寝るロリコン野郎。データをセーブしますか?」
「するわけねえだろ⁉ なにとんでもない記憶をセーブしようとしてんだよ!」
駄目だ。埒が明かない。
しかもヴェルヴィアの発言のせいで、心なしか他の三人の俺を見る視線の温度が、氷点下レベルに達しようとしている気がする。
そもそも、毎回毎回引っ付いていたのはヴェルヴィアの方で、俺は無実なのに!
「ああ、もう! とりあえず行ってこい! ほら、100ミュールやるから!」
「任せて。ちょっぱやで行ってくるわね!」
メルティナはさっきまで渋っていたのが嘘のように、100ミュール硬貨を嬉しそうに握りしめながらその場から飛び出して行った。
それでいいのか聖女……。
まぁ、この世界の住人でない俺や色々と世間に疎いヴェルヴィアやナナシを行かせるよりは、まだこの世界の住人であるメルティナに行ってもらった方が確実だろう。
「じゃあ、あーしも他のバイトがあるんで、一旦抜けますね。夕方頃にまた手伝いに来るっす!」
そう言い残すと、フレステは手をブンブンと振りながら去って行った。
あいつも色々と忙しいだろうに、いい奴だよなあ。
さて、残された俺とヴェルヴィア、そしてナナシは手持ち無沙汰になったわけだが……。
「しかしあれじゃな。これから仕事を始める場にしては、ここはちとボロいのう」
「まぁ、たしかにな」
俺だって最初に見た時は、廃屋か何かだと思ったくらいだ。
中に入ると薄暗い店内の天井には蜘蛛の巣が張り、床は木材が痛んでいるのか、歩く度にギシギシと底が抜けそうな音を軋ませてる。
全体的にリフォームする必要があるのは明白なのだが……。
「業者を雇う金なんてないしなあ。しばらくは我慢するしかないだろ」
と、俺が諦めかけていると。
「……確認。この店のリフォームを希望でしたら、ナナシが実行可能です」
ナナシがそんな俺を見上げながら、相変わらず平坦な口調で聞いてきた。
「お前、そんなことが出来るのか?」
「……可能。ナナシは高性能魔導機兵です。それに、ここでお金を稼ぐことによって更に美味しい物が大量に食べられるようになるのだとナナシは解釈しました。その為でしたら、ナナシは魔導機兵としての力をフル稼働させてもよいと判断。ただし、建築資材が必要になります」
その言葉は非常に心強いが、その後の食費の事を考えると足が震えてくる。
さて、しかし資材をどうしたものか。
俺達が所持している小銭では当然買えないだろうし。
かといって前に特異スライムが出現した森にでも行って木を伐採してくるのも、それはそれで面倒だ……。
「主、主よ。何をそんなに悩んでおる。リフォーム出来るのであればすればよかろう」
そんなことを考えていると、ヴェルヴィアが俺の服の端をクイクイと引っ張てきた。
「お前なあ、ナナシの話を聞いてたか? リフォームするには、建材が必要だって言ってたろ? 今の俺達に建材を買う余裕なんてないから、こうして俺が考えて……」
「それは聞いたとも。じゃからこそ何を悩んでおると言ったのじゃ。建材ならばタダで大量にある場所があるではないか」
「はあ? んなもん何処に……」
そう言いかけた俺の頭に、一つの閃きが奔った。
あったよ。タダで大量に建材がある場所。
俺とヴェルヴィアは互いに顔を見合わせてニヤリと笑うと、早速その場所に向かった。
それから数時間後。
「たっだいまー。冒険者ギルドで許可貰ってきたわよー。って……」
「みなさーん! 作業はどんな感じっす……か?」
空が赤みを帯びてきた頃。
戻って来たフレステとメルティナに目を向けると、二人とも店の扉を開けた状態のまま、目を見開いて固まっていた。
「おう、おかえりー」
「……おかえりって、リューンさん。これ……」
「あのあの! ここ、マジでホントにさっきと同じ店っすか⁉ 新築同然じゃないっすか!」
ソファーでくつろいでいた俺に興奮した様子で二人が詰め寄る。
二人が驚くのも無理ない。
なにしろあの廃屋と呼んでも差し支えないほどにボロボロだった店の内装が、匠の手によって同じ店とは思えないほど綺麗に改修されているのだから。
もちろん、この店の改修を行った匠とは、俺でもヴェルヴィアのことでもない。
我らが頼れる魔導機兵少女。ナナシである。
あの後――。
とある場所から大量の建材を確保する事に成功した俺達は、さっそく店の修繕に取り掛かろうとしたのだが、そんな俺達をナナシが制止した。
「……無用。この程度ならナナシ一人で問題ありません」
「問題ないって、さすがにこの店をリフォームするのに一人じゃ無理だろ。ヴェルヴィアはともかく、教えてもらえれば俺だってそれなりに手伝えるぞ?」
「さらっとわっちを戦力外と言いおったな、主よ。……まぁ、確かにわっちは何かを作るのはちょっと苦手な方じゃが……」
どこか拗ねた口調でヴェルヴィアが言う。
魔族やら魔物やら創って世界を滅ぼしかけた奴の、どこがちょとなんだろうか。
「……肯定。確かにナナシ一人でこの店をリフォームすることは現実的ではありません。ナナシに搭載されている演算機能で計算した結果。少なくともナナシと同技量の人物が五人以上は必要であると算出されています……ですがその問題は、それならナナシが五人に増えれば解決します。――疑似ギフトスキル実行。『機械仕掛けの操り人形』。展開します」
そう言うと、ナナシは俺の目の前で瞬く間に五人に増えた。
――何故か全員猫耳で。
「ここはファンタジー世界だから大概の事には驚かない自身があったけど、今回だけは意味が分からん。何それ、分身の術?」
「……回答。似て非なるものです」
「……これは高速戦に特化した魔導機兵であるナナシが、魔力を放出しながら超高速で動くことで生み出した、複数体の質量を持った残像」
「……言わば疑似的なギフトスキルみたいなものです」
「……それがナナシに搭載された機能の一つである『機械仕掛けの操り人形』」
それぞれがバラバラに説明してくれてるけど、どれが本物のナナシなんだろう。
「というか、その猫耳はなんなんじゃ? 獣人族のようにも見えるんじゃが」
「……不明。恐らくはナナシの製作者の趣味と思われます」
どこの誰かは知らないが、いい趣味をしていらっしゃる。
ともあれ五人に増えたナナシ達は、テキパキとした手際でそれぞれが作業を開始し始め、瞬く間に店は改装されていった。
まさかナナシにこんな機能があったとはな。
でも考えてみれば、普段の大食いしている姿やポンコツ具合からは想像できないが、彼女は魔族と対等以上に渡り合ったと言われている魔導機兵。
これくらいの機能があっても不思議ではないのかもしれない。
食費が凄まじいことに目を瞑れば、案外いい拾い者をしたんじゃないだろうか。
今度特務クエストを手伝ってもらおう……。
「げぼっふっじゃ⁉」
なんてことを考えていると、俺の横でナナシ達の様子をボーっと見ていたヴェルヴィアが、突如そんな奇声を上げながら後方に吹き飛ばされ、ボロボロになっていた壁に突き刺さった。
「ど、どうしたヴェルヴィア⁉ 今日はまだドラゴンブレスを使ってないだろ?」
「あっ、あたま……が……」
それだけ言い残すと、ガクリとヴェルヴィアの尻が項垂れる。
頭……? 何の事かと思って辺りを見回してみると、
「……挨拶。どうもです」
壁尻になったヴェルヴィアのすぐ近くに、ナナシの生首がコロコロと転がっていた。
「えっ? なんで?」
「……回答。どうやらナナシの頭部パーツは、何らかの原因でパージしやすくなっているみたいです。そのため、現在超高速で移動しているナナシの胴体から、同じく超高速でパージされたナナシの頭部がヴェルヴィア様に直撃し、壁尻になったのだと思われます」
「…………は?」
あまりの意味不明さに思考停止しかけた俺の頭の頬を、高速で飛来してきた大砲の弾のような何かが。
――否、ナナシの頭部が俺の顔を掠めた。
「……安堵。危なかったです。もう少しでナナシの唇とリューン様の唇がぶちゅっと重なるところでした。そうなった場合、ナナシルートに突入です」
「そしたら俺の頭もぶちゅっと潰れて死亡エンドだっての! 中止中止! そこの爆弾ハリケーン共、一旦止まれ! このままじゃリフォームしたそばから、またリフォームする羽目になる!」
そんな予想外のアクシデントはあったものの。
こうしてこの店はナナシ達によって、なんとかリフォームする事に成功したのであった。
とはいっても、ナナシ達の作業速度を下げた結果、外観は未だにボロい店のままではあるのだが、その辺はまた追々(おいおい)でいいだろう。
そして、今回の立役者であるナナシはといえば――。
「……………………」
「ううう……。頭が……、飛んでくるんじゃぁ……」
今は一人に戻った状態でヴェルヴィアと共にソファーに横になり、死んだように眠っている。
どうやら分身に魔力を使い過ぎたらしく、今はスリープモードに入っているのだとか。
お疲れさん。
「それにしても、何故かしら。ここに来てから、どこか懐かしい感覚がするのよね……」
俺の説明を聞き終えて店内を見回していたメルティナの言葉に、俺の心臓が一瞬止まる。
「懐かしいって、メルティー。そんなにこの店に来たことなかったっすよね?」
「そりゃまあ、そうなんだけど……。なんだかまるで、小さい頃からずっと住んでたみたいな安心感があるって言うか」
………………。
「それに、そこの柱に付けられた傷。私が昔、背の高さを計ってた時に付けた傷と全く同じに見えるのよねえ……。リューンさん? ちょっと聞いてもいいかしら?」
一日中天日干しした羽毛布団のように柔らかなメルティナの声。
ただし俺を見据えるその瞳は、一切笑っていなかった。
「正直に言いなさい? っていうか言え。この店をリフォームする為の建材、一体どこから持って来たのかしら?」
「……メルティナさん家の教会跡から、ちょろっと……」
「やっぱりかああああああああああああああああああああああああああーっ‼」
店内に頭を抱えてその場に崩れたメルティナの絶叫が響き渡った。
そう。大量の建材をどうしようかと思った俺達が目を付けたのは、ヴェルヴィアが壊したメルティナの教会であった。
幸いな事に、崩壊した教会の資材は撤去されておらず、所々傷んではいるが使用可能とのナナシからのお墨付きをもらった俺達は、そこからちょっとだけ……。
8割か9割くらいの資材を拝借したのであった。
「何してくれてんの⁉ 私に何か恨みでもあるの⁉ 普通にそれ泥棒だからね⁉ って言うか、ナナシちゃんにそんな力があるなら、まず最初に私の教会を直しなさいよ‼」
「いや、その。俺もそれは確かに思ったんだけど……。それを思い出したのが、もう店のリフォームがほとんど終わった時だったから……」
「もー! もー! もー‼」
取り乱して涙目になったメルティナが俺の肩をガクガクと揺らす。
「ま、まあまあ。落ち着くっすよ、メルティー。ここで頑張りながら特務クエストをこなしてれば、すぐにお金も溜まって教会も建て直せますって。あーしも手が空いてたらクエスト手伝うっすから、ね?」
「うぅ~……」
フレステの説得に、メルティナが唸り声を上げながらも手を放す。
ありがとう、フレステ。危うく死ぬかと思った。
「さささ、今日はとりあえず宴会にしましょ。皆さんの開業祝ってことで、お酒はあーしからの奢りっすよ! 料理はあーしの手作りっすから、味は保証できないっすけど」
フレステがそう言って、テーブルに大量の料理や酒を並べていく。
味は保証できないと言いつつも、並べられた料理の見た目や香りは、宿屋で出されていた料理に負けずとも劣らないくらい食欲を掻き立てるものだった。
「スンスン……。この匂い。なかなか上質な酒を持って来たみたいじゃのう。『魔神殺し』というネーミングは気に障るが、早う飲ませるがよい」
「……起動。ご飯の時間です。ナナシは今日頑張りました。そこのエビカニの塩焼きと帝王イカの串焼きの優先権を主張します」
料理の匂いで目が覚めたのだろうナナシとヴェルヴィアが起き上がる。
未成年がお酒を飲んじゃダメだろうとツッコミを入れようかとも思ったが、どうやらこの世界の法律では自己責任らしい。
それに考えてみれば、ヴェルヴィアは少なく見積もっても三千歳を超えるドラゴン。
年齢制限とかそんな枠はとっくの昔に破壊して飛び越えている。
しばらくして、料理と酒を並べ終えたフレステとメルティナもテーブルに着く。
さてと、それじゃあこのパーティーのリーダーとして、乾杯の音頭を……。
と、俺が立ちあがろうとしたその時だった。
「それじゃあ皆、これからじゃんじゃん稼ぎまくるわよ! かんぱーい‼」
「「「かんぱーい‼」」」
「お前が言うの⁉」
俺のツッコミとメルティナの高らかな声と共に、コップと酒瓶がぶつかる音が響き渡った。
ともあれこの日から俺は、冒険者と便利屋稼業という、二足の草鞋で異世界生活を送ることになったのであった。