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スキルま!?〜最弱不死とドラゴンのパンツ〜  作者: ほろよいドラゴン
第一章~ギブミー、テンプレ異世界生活!?~
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第1話「最弱不死と破壊の魔神(1)」

 

『目覚めよ……。目覚めるのだ、人間よ……』


 暗闇だけが支配する空間の中、俺はそんな(おごそ)かな声と共に目を覚ました。

 起き上がって辺りをキョロキョロと見回してみるも、そこには果てが無いのではと思ってしまうような闇しか広がっていない。

 ここは……? 

 確か俺は、アガレリアを目指す旅の途中でモンスターに遭遇(そうぐう)して、それから逃げまわってたら、いつの間にか地図にすら書かれていない変な山に迷い込んでしまったような……。

 そうだ、だんだん思い出してきた。

 それでなんとかアガレリアへの正規ルートに戻ろうと何日も彷徨(さまよ)っているうちに、疲労と空腹の限界がきた俺は足を踏み外して。


 そのまま斜面を転がった俺の体は、深い谷底へ…………。


「そっか……。死んだのか、俺……」


 自分が死んだというにも関わらず、俺の心は案外(あんがい)落ち着いていた。

 きっとアガレリアを目指して旅に出たあの日から、いつ命を落としてもおかしくないと覚悟を決めていたからだろう。

 もっともその原因が、モンスターや野盗に襲われている誰かを助けたみたいなかっこいい理由ではなく、迷子になった末に足を滑らせて落下死(らっかし)なのは情けないけど。

 となると、もしかしてここは、あの世的な空間なのだろうか?


(しか)り。ようやく理解したか、人間よ』


 俺の頭の中に、目が覚めた時に聞こえたあの厳かな声が響く。

 待てよ?

 もし仮にここがあの世的な空間なのだとしたら、まさかこの声は、神様の声……?

 その考えに至った途端、俺の脳内にこれまでの旅の苦労の記憶がフラッシュバックし、一気に怒りの臨界点(りんかいてん)を超えた。

 そしてその怒りの矛先(ほこさき)は――。


「……おう。さっきから俺に喋ってる奴。お前さては神様だろ」

『ほう? 我が神であることを見抜いたか。如何にも。我こそは……』

「ちょっと黙れ。こっちはなぁ、お前に言いたいことが山ほどあるんだよ! お前が俺を召喚した時にギフトスキルだかなんだかを与えてくれなかったせいでなあ、俺がどれほど苦労したと思ってるんだよ! 馬鹿なんじゃねえの⁉」

『え? は? うん……。え? な、何の話じゃ?』


 俺をこの世界に召喚した張本人であろう、神様に向けられた。


「とぼけるなボケェ! お前のせいで俺はなあ、街の人達からは異端(いたん)みたいな目で見られるわ、定職に就けないわでえらい目に()ったんだぞ⁉ 俺が今日まで何喰って生きてたか知ってるか? 雑草と残飯だよ。その辺に生えてた食べても大丈夫なのかどうかも分からないクッソ不味い雑草と、ゴミ捨て場にあった残飯だよ! お前に分かるか? たまたま残飯目当てで立ち寄った街の子供から『お兄ちゃんはなんでゴミを食べているの?』って純粋な瞳で聞かれた時の俺の気持ちがッッ‼」

『ええ……。ま、まあ待て。時に落ち着け。お前はさっきから一体なんの話をしておる。アレか? 目が覚めたら真っ暗じゃったからパニックになっておるのか? ならばちーと待つがよい。今ヒカリゴケに魔力を通して、明かりを付けてやる』


 若干ドン引きしているような神様の声がそう言うと、俺の目の前で闇がゆっくりと(うごめ)いた。

 ……闇が蠢いた?

 俺が疑問を感じていると、やがて周囲にぽつぽつと、ぼんやりとした明かりが灯り始めた。

 よく見ると、どうやら岩や地面に張り付いた苔のようなものが発光している。

 ジブリでしか見られないような幻想的な光景に声を奪われたのも束の間、やがてその光に照らし出された目の前の存在を認識した俺は、今度は違う意味で言葉を奪われた。

 なにしろ俺の目の前に佇む、さっきまでこの世界の神様的な存在だと思って俺が不満をぶちまけていたその相手は……。


『ふむ。これで多少は落ち着いたか? では人間の流儀に則り、名乗らせてもらうとしよう。我が名はヴェルヴィア! 世界創世の神の一柱にして、破壊の魔神と恐れられし女神。ヴェルヴィア=ノヴァ=エンドロールである‼』

「…………ドラ、ゴン……?」


 ようやく絞り出した俺の声は、恐怖で震えていた。


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