村到着!
走る走る。
兎に角走る。
かれこれ2時間走りっぱなしだ。
「しかし、この体全然疲れないな」
2時間前まで能力を使っていたのに全然疲れていない。
もう能力の疲労に体が慣れたのだろう。
この体の適応力は凄まじいな。
「これでもはや半永久に能力を使用出来るな」
もう化けもんだろこれ。
「まぁ、自分が化け物だと認めたくないから考えないようにしよう」
「それよりこの森どんだけ深いんだよ」
いったい何キロ走ったと思ってるんだよ。
「はぁ、精神的にくるなぁ」
たった数時間なのに人が恋しくなるよ。いや、あれは神様だから人じゃないか。
「はぁ……ん?」
森が開けてきたな。
お?
「森を抜けたー!! でも、草原に出たー!」
いやー、森を抜けただけでも精神的に楽になるねー。
「けどまだ走ら……ん? あれは…」
あの小さいけど構造物の集まりは。
「村だ! やっと人に会える!」
今なら100m8秒を切れる!
そんなスピードを出しながら村へとまっすぐ走る。
今日は走ってばっかりだ!
村の全容が見えてきた。
木の柵に囲まれ、規模もあまり大きくない。
柵もボロボロで、いつ潰れてもおかしくない。
しかし、人がいる! 門っぽい所に人がいる!
「人だ! 人だ人だ人だー!」
少し減速しつつ、門の前へ辿り着く。
「な、なんだお前!」
騎手っぽい鎧を着たおっさん、門番? がビビりながら聞いてくる。
「おれ? 俺は、カゲノセイヤって言うんだ。よろしく!」
「怪しい! さてはお前、魔族の手の者だな! 成敗してくれる!」
突然槍を構えて変なことを言ってくる。
「ちょっと待て。魔族ってなに?」
間の抜けた問いをする。
「惚けるな! 貴様ら魔族は人類の敵だ!」
人の話を聞いちゃいない。
こんなのが数時間ぶりの会話かよ。
「はぁ、惚けるもなにも違うって言ってんだろ。だいたい俺は人間のお前と見た目が近いだろ」
「ふん! 知らぬと思ったか! 魔族は普段人間と差異のない見た目をしている。常識の事だ」
へぇ。そうなんだ。
ボスみたいに変身でもするのか?
「ならなんで俺を魔族と決めつけるんだよ?」
「この村は1週間前から貴様ら魔族に襲われているのだ! こんな時に来るやつを早々に信用出来る訳がないだろ!」
それにしちゃあ結構会話してくれてると思うけど?
「だから俺は魔族じゃないって!」
「信じれるか! 信じて欲しければ能力を発動してみろ」
能力? なんで?
「どうして能力を発動するんだ?」
「貴様、少し物を知らなさすぎじゃないか? 人間と魔族には能力絶対な差がある。人間は妖精から力を、魔族は邪精から力を得ているのだ。だから能力を見れば自ずと種族が判別出来るんだ。分かったなら早く能力を発動しろ」
へぇー。そんな差があるんだ。
じゃあさっさと疑惑を晴らしますかね。
「分かった。じゃあ発動するよ。一応ちょっと下がっといて」
「……良いだろう」
こちらに槍を向けたまま後ずさる。
あの槍良く切れるんだろうな。
クソッ! 所詮俺は打撃武器だよ!
「じゃあ使うぞ。『影盾』」
一応攻撃出来ない物を使う。
「どうだ? これで俺が魔族じゃないって……」
「なんだ…それは…?」
え? なに驚いてんの?
「貴様が魔族でないことは分かった」
「あ、分かってくれたんだ」
何だよ。脅かすなよ!
「しかし、人間でないことも分かった。いや、今までに見た全ての種族と異なる。お前は何者だ?」
え? そんな事言われても俺人間なんだけど。
あ! もしかしてこの体のせい? それとも俺が異世界人だからか?
どちらにしろ分からない。
「俺人間じゃないの!?」
「ん?……惚けている、ようではないな。お前の能力は、妖精でも邪精でも、それ以外の力でもない」
いや、マジで知らないよ!
「え~と、そんな事言われても俺知らないんですけど」
「その様だな。まぁ、魔族以外なら敵対はしない。村に入っていいぞ」
え~と、入っていいんだ。
「ただし、俺と一緒に村長の家まで行って事情を説明してもらう。いいな」
「うん分かった」
要するに怪しい奴はほっとけないから自分の目で見極めると。すごいこった。
「それでは行くぞ」
「へーい」
無事に? 村に入ることが出来るようだ。