初戦闘
「ん、んぅ」
暗闇で目を覚ます。
ん、ここは……
「って、俺の影の中か」
自分で使った筈なのに、一瞬焦る。
それと同時に安心もする。
「よかった~。寝てる間も能力発動出来てて」
不安を感じながらも眠気には勝てず、ちょっとした賭けになってしまったが、成功したようだ。
「お陰で疲れも大分取れたな」
影を元に戻しつつ呟く。
まだ日は高い。
「2時間位寝てたようだな」
2時間での疲労の回復に、少し驚く。
流石神様製の体だね。
「まだ夜まであるし、歩いて早く人里見つけないと」
そう言いつつ、少し早足で、寝る前に向かっていた方向に再度歩き始める。
「ここからはあまり能力の使わずに行こう」
また、動けなくなるといけないし。
それに、この世界にはモンスターがいる。
何時襲われてもおかしくないはずだ。
「まぁ、寝てる間も襲われなかったんだから、早々に会うことはないだろうな」
ササッ!ササッ!
高く育った草の向こうで何かが動く。
モンスターかっ!
「いや、まさか。どうせウサギとかだろう」
ザザッ! っと、草を掻き分けてこちらに向かって来る。
「く、来るなら来いよ!」
強気な言葉にも、どうかウサギであって欲しいと言う思いが滲み出ていた。
しかし、そんな願いも虚しく、草から出てきたのは……
「ギャギャ!」
一体の、肌が緑色で、耳が少し尖っている。そうゴブリンだ。
一体のゴブリンが下品な笑みを見せながら近づいて来る。手には棍棒が握られており、戦う気満々と言ったところか。
きっと今日のご飯が見つかった事に喜んでいるんだろう。
「……はぁ、さっきまでのはフラグだったか。見事に回収してしまった」
自分のフラグ建築に嫌気がさしながらも、その目はゴブリンから離さない。
いや、離せないと言うべきか。
どちらにせよ、戦闘は免れない。
「スーハースーハー。よし、かかって来いや!」
「ギャギャ!」
ゴブリンの棍棒での攻撃。動きも遅く、避けるのは容易いが、
「『影盾』!」
自分の上半身の影が立体的に競り上がっていき、1つの平たい壁となる。
敢えて能力を発動し、何れくらい耐えれるかをはかってみる。
ガンッ!
大きな音がしながらも、棍棒は盾を壊すことが出来ない。
寧ろ棍棒が傷ついていた。
「ギャギャッ!」
ゴブリンが急に現れた壁に驚いている。
「流石鉄並みの強度! 今のうちに『影剣』!」
影の壁がみるみるうちに剣の形へと変わっていく。
剣の形だが、一切切る事が出来ない。
影剣も影盾も、1時間で考えた物だが、上手く使えている。
「うりゃ!」
壁に驚いているゴブリンの頭へ思い切り降り下ろす。
ゴボッ
鈍い音が響き渡り、ゴブリンが倒れていく。
血は吹き出していないが、頭が壮大に凹んでいた。
「ふぅ、倒せたけどやっぱり殺しは気分が悪くなるな」
影を元に戻しつつ、黄昏る。
「とりあえず初戦闘は上々に終わったな」
戦闘の余韻に浸りながらそう呟く。
「はぁ、この死体どうすっかなぁ」
まぁ、今はいいや。とりあえず今はこの余韻に浸っていよう。