影の能力
「あぁ~疲れたぁ」
歩き始めて1時間が経過した。
セイヤはもうヘトヘトになっていた。
何も歩き疲れた訳じゃない。
神様からもらった体なら1日ぶっ続けで歩いても疲れる事はないだろう。なら何故こんなに疲れているかと言うと……。
「調子に乗って能力使い過ぎたぁ」
歩き始めてからずっと能力を使いっぱなしだ。
最初は僅かにしか動かなかった影が、今となっては自由自在。
つい、面白くなって弄り過ぎたらこの様だ。
「もう動けねぇよ」
しかしそのお陰もあり、能力のメリット、デメリットに気付くことができた。
まずはメリット。
これはいたって単純。
ほぼ万能と言うことだ。万能と言っても、どんな形にでもなれるという万能だ。
これはさっきまでやっていたことだが、球体にしたり、犬の形にすることもできた。
しかも何故か立体にすることができた。
さらに、強度を鉄並みにまで上げる事が出来る。
次にデメリット。
これも単純に、影を体から外す事ができない。外せたら遠距離攻撃も出来たんだけどな。
それと、刃物に形状を変えても切る事が出来ない。全て打撃系の武器になってしまうのだ。
しかも、影で作る事の出来る物は1つだけ。
さらに、武器系にしなければ、影は物に干渉できないという欠点がある。
「どちらかというと使いにくい能力だ」
Lv.アップすれば変わるかもしれないが、そのやり方も解らない。
「まぁ、俺の工夫次第だな」
疲労を感じる体を休めながら呟く。
「ふわぁ……少し寝るか」
眠い目を擦りながら、横になる。
「寝てる間危ないかも知れないな」
眠気で働かない頭を振るい、考える。
「……よし、ちょっとやってみるか」
自分の影で自分を覆い、盾にする。
「……『包む影盾』」
影がセイヤを包み、鉄の盾となる。
「あぁ、いい暗さだ」
そんな一言を残し、セイヤは眠りについた。