ステータスオープン!
「よし、さっきの事は忘れよう。そうしよう」
少し出来たクレーターから体を起こし、うんうんと頷いて紐なしバンジーの事を忘れようとする。
それと同時に、制服についた汚れを払いのけた。
「うわ! 制服ボロボロになってるし!」
数十メートルから落ちたのだから当然の結果と言えるだろう。
しかし、
「気のきかない神様だねーいろいろと」
少なくともあの急な転生と紐なしバンジーにはセイヤも怒っていた。
それにここが何処で、どっちに行けば人里があるかなんてまったく教えてもらっていない。
「ホントに気のきかない神だな」
「どないしょうか?」
思わず関西弁が出るほどに切羽詰まっていた。……いや、余裕のあらわれか。
まぁ、本当に困っているんだが……。
「……そう言えばあの神、こっちに来たら"あれ"を唱えろって言ってたな」
よーし! 張り切って唱えますか!
「スーハー、スーハー……よし、『ステータス』!」
ピロン♪
何とも間の抜けた効果音と共に目の前に文字が浮かぶ。
セイヤ・カゲノ 16才 異世界転生者
武器:なし
防具:ボロボロの制服
魔法:使用不可
能力:【影】Lv.1
「ワァオ! 簡潔!」
大袈裟に驚きつつも、魔法の欄を意識しないようにする。……意識すると涙が出そうになる。
でも、魔法の欄にふれないと先に進めないだろう。
「チクショー! なんで魔法が使えないんだよ!」
魔法が使えないのはいたいがここまで泣く必要はないだろう。普通の人なら。
だけど、ラノベやアニメ大好きなセイヤにとっては死活問題である。
「よし! ポジティブにいこう! 元の世界でも使えなかったんだし別にいいや!」
うん! 考えないようにしよう。
「……それで、この能力ってなんだろ?」
ヘルプミー! 誰か教えてー!
【影】Lv.1
自分の影を自由自在に操れる。
Lv.アップに伴い、能力が強化される。
能力
魔法の様に魔力の消費はないがその分疲労する。
慣れれば気にする事なく、半永久的に使用可能。
能力は人それぞれ異なり、同じ物は1つも存在しない。
「……ヘルプって言ったら出てきたよ」
しかも結構重要そうな事書いてあるし。
「俺の能力は、まぁ、慣れれば便利そうだな」
影を弄れるかと試しに念じてみる。
すると、
「おぉ! 意外と動くものだな」
影の指先がグニャグニャと動き回る。
「でも、結構難しいなこれ。……よし、暇だし適当に歩きながら練習するか」
ちょっとした疲労感に悩まされながらもセイヤは胸を踊ろさせていた。
セイヤは太陽が沈む方向に向かって歩き始めた。