プロローグ
「ん……ここは何処だ?」
寝起きで働かない頭を振るって辺りを見渡す。
壁も床も全てが白一色に統一された少し不気味な部屋のようだ。
家具も何もない殺風景な部屋だ。
扉も窓も無い。一体どうやって入ったんだ?
「どうしてこんなところに……」
ここで起きる直前までの記憶が無い。どうなっているんだ?
格好も制服のままだから学校帰りだとは思うんだが……。
「おぉ、起きたか」
ん、何もない空間から白髪で髭まで白い、ラノベとかに出てきそうなTHE神様って感じのじいさんが出てきた。
……結構適応力があると思ってたけどこれは無理だな。
「あの……ここは何処ですか? っと言うかあなた誰ですか?」
少しか細い声で質問する。
「まぁ、そう心配するでない、とは言えぬか」
そりゃあそうだろう。なんたって記憶が少しない状態で誘拐されたみたいな物だから心配するなって方が無理だろう。
「さっきの質問だが、ここは神界で、わしは神じゃ」
はいリアル神出ましたー!……何て言えるほど俺は純粋じゃないけど、さっきの登場を見せられると信じない他ないよな……多分。
「ふむ、さっきお主が言っていた通り適応力はあるようじゃな」
……OK、心の声が聞こえるとは流石神様ですね!
ところで何で僕は神界に居るんですか?
「ふふ、それはのう、お主が"死んでしまったからじゃよ"」
……成る程ぉ、死んでしまいましたかー。
冷静に見えるようだけど……
「マジで!?」
素で返しちゃう位驚いてます。
まぁ、ラノベとかでよくある展開だから一応は想定しといたんだけど……やっぱり自分の身に起こると冷静じゃいられないな。
「自分の死を聞いてもその反応。やはりお主は面白いのう」
自分の死を聞いた時の反応で面白がられても困るんですけど……。
でもそっか、死んじゃったかぁ。
「一応死因を聞いてもいいですか?」
やっぱり気になるもんねー。只でさえ記憶が無いんだから。
「ふふ、やはりお主は普通の人間とはズレておるな。いいじゃろう……お主は少女の身代わりにトラックに敷かれて死んだんじゃ」
……俺って何処の主人公だよ!? 蘇って霊界探偵でもするのかよ。
「ホォッホォッ! 霊界探偵はせぬが、お主はまだ死ぬ予定ではなかったのでな、地球では無理じゃが異世界になら蘇らすことができるぞい」
ホントにラノベみたいですね!? しかも急展開!?
まぁ、もう少し生きていたいんで異世界よろしくお願いします。
……それでぇ、やっぱり異世界って剣と魔法のファンタジーですか?
「うむ、お主らが言うところの"それ"に限りなく近い物じゃよ。それがどうかしたのかい?」
って言うことはぁ、チートとかも貰えちゃったりするんですか?
「ホォッホォッ! チートか? すまぬがそれは神界のルールで禁止されとるんじゃよ」
マジですか!? じゃあ俺はどうやって生きていくんですか!?
「ホレホレそう焦るでない。ルールで禁止されとる……と言うか、する必要がないと言った方がいいじゃろう」
する必要がない? なんで?
つい首を傾げてしまう。
「ふふ、不思議そうな顔をしとるのぉ。でもそれはあちらへ行った時の楽しみにしておれ」
えぇ~、まぁ、そこまで言うなら楽しみにしときますよ。
「ホレそう拗ねるでない。その代わりお主にはあちらの世界でもやっていけるだけの肉体に変えてやるわい。あ、でも安心せい、お主の見た目は何一つ変わることはないからのぉ」
それを聞いて安心したようながっかりしたような……。
まぁ、ありがたいからいいや。
「ホントにお主は面白いのぉ。出来ればもう少ししゃべっていたかったんじゃが時間切れじゃのぉ」
え? 時間切れって?
うおっ!? 何か俺の所だけ床光ってない?
「ふむ、最後に、あちら……エレメントへ行ったら"ステータス"と唱えてみるといい。お主の力を確認出来るじゃろう」
エレメント? ステータス? 何か気になる単語が聞こえたけどそれどころじゃない! さっきよりも光がって! もう目も開けられないんだけど!
「ふむ、まぁ、あちらで試してみるといい」
そんな言葉を贈られながら、俺は光に包まれて消えていった。
「ふふ、頑張るんじゃよ"影之星夜"よ」