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無人駅  作者: 桜 導仮
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二日目

目を覚ますといつもの景色、の中にいつもはない男の姿。

私は男を睨み付ける。

が、意味はない。

私は朝の日課、散歩をすることにした。

駅の周辺、森の中、色々と回り大体一時間。

帰ってくると男が起きてた。

「おはよう」

私に気がついた男は挨拶をする。

誰かに挨拶されるなんていつ以来だろう。

「起きたらいなくてびっくりしたよ」

男は何かをしながら続ける。

「はい」

そう言って男が差し出してきたのは缶詰めだった。

「ただの鮭缶だけど無いより良いでしょ?」

久し振りのちゃんとした朝御飯。

白いおにぎりに鮭の缶詰めのみ。

それでも、普段のご飯よりは大分まともだった。


「さて、そろそろ」

ご飯を食べた後、男は駅の外に出て、鞄を漁る。

中から出てきたのは折り畳の椅子、スケッチブックに多種多様な鉛筆、そしてイーゼル。

男はイーゼルを置き、椅子を広げその上に座る。

鉛筆を手に持ち、親指を立てて片目を瞑る。そして筆を走らせる。

……自分の世界に入ってしまったようだ。

私はやる事もないので寝る事にした。


ガタンゴトンとよく聞く電車の走行音が聞こえてきた。

ここ囲木駅に電車は止まらないが線路は使われる。この駅だけ飛ばされるのだ。

窓に近づき外を見ると、丁度電車が通りすぎる。

もう十二時か。

毎日同じ時間に通る電車はいつからか時間を知らせる物になっていた。

私は男の方に目をやる。

相変わらず絵を描いている。

動いた形跡もない。

男に近づき後ろから絵を見てみる。

まだ線だけではあるが、そこには駅の外観が書かれていた。

中々に上手いじゃないか。

私は自分は描けないが上から目線で見てみる。

しかしお腹が空いた。

この男がまだ食料を持ってるのではと思い鞄を漁る。

音に気がついたのか男が振り替える。

「おいおい、人の鞄を漁るなよ」

私は鞄の中から一冊の本を見つけ、引っ張り出し男に見せつける。

「あー……その本は森で見つけてね。そこに置きっぱなしも森に悪いから後で捨てておこうかと……」

これだから男と言う生き物は。

私は本をその辺に置いておき、鞄を漁る。

おにぎりを見つけたので引っ張り出す。

「あーご飯が欲しかったのね。今から準備するからちょっと待ってて」

男は私から鞄とおにぎり、そして本を拾い上げ、駅の中に入っていく。

私が男を睨み付けたのは言うまでもない。


「ごちそうさま」

ご飯を食べた後、男は絵を描きに戻った。

私は散歩に出かける事にした。

ここの森はいつも不気味だ。

どれだけ歩いても自分の足音しか聞こえないし、何より木が等間隔に並んでいるのだ。

暫く歩くが今日も誰かと会う事は無かった。


暗くなってきたので駅に戻ると男が晩御飯の支度をしていた。

「お帰り」

男はそう言うと、おにぎりと缶詰めを差し出してくる。

私は何も言わず食べる。

「つれないねぇ」

釣られてたまるか。

その後何事も無くご飯を食べ終え、眠りにつく。

寝る前に男の言った事が気に食わなかった。

「今日はとっても楽しかったね。明日はもっと楽しくなるよね、リンネ?」

やかましいわ。

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