赤い水
家のトイレで便座に座ったまま、俺はため息を吐く。
すでに水は流していたが、トイレの中には俺のにおいが充満していた。
もう臭いという感覚は麻痺している。
俺はこの身に起こった異常に、ここ三日ほど悩まされていた。
「腹痛え……」
下痢である。
三日前に食べた肉が原因だろう。
味が変だった。
今さら後悔しても遅いが、何か食べるたびに腹を下しトイレに駆け込んでいては、考えることは一つである。
「食べなきゃよかった……」
わかっている。
後悔しても遅い。
俺はまたため息を吐き、立ち上がる気力をなんとかしてかき集める。
「さあ、出るか……」
俺は立ち上がり、パンツとズボンを引っ張り上げ、ズボンのチャックとボタンを閉めた。
そして、トイレを出る前に何気なく便器の中を見て、俺は目に飛び込んできたものに息を飲み、声を失った。
数日後。
俺は病院にいた。
そして、イスに座る俺の前にいる医者は、俺にこう告げた。
「痔ですね」
end