口と性格の悪いシンデレラ。
注意! 少し下ネタがあります。
「シンデレラァァァア!!!何処なの!?」
凄い形相で廊下を駆ける義理母様。
走るのはレディとして言語両断とか言っていたのは義理母様様なのにね!
「何? ここにいるわよ?」
面倒くさいという気持ちを隠そうともしないでシンデレラは答える。
その様子に義理母は走っていたので既に赤かった頬を更に怒りで赤くした。
「何? じゃないわよ!! 掃除はしたの!?」
ついには地団駄を踏んで叫んだ。頭の痛くなるような甲高い声にシンデレラは眉を寄せた。
「え? 面倒くさい。だって使用人いるんでしょ? その人にやってもられば良いじゃん」
「口答えしないの! そもそもあんたなんて使用人で十分よ!」
やたらとフリフリとレースを付けたピンクのドレスを着た上の義理姉様が言った。
その言葉に私は傷つき、
涙は頬をつたう───────はずがない。
シンデレラのメンタルは防弾ガラス並みに強いのだ。
「は? 黙れよメス豚。」
最悪なことにメンタル防弾ガラス+口も悪い。
「姉様に向かって何という口の聞き方!!」
下の姉が私の頬をパチンと平手打ちをした。
私はグーで顔を殴り返す。私のモットーは100倍返し。
あ、手に鼻血が着いちゃった。
汚い、汚い。
ボロのドレスの裾で手を拭う。
ドレスに紅いシミが出来るが、すでにドレスは泥や埃などで汚れているし、あいにく、汚れを気にする性分でもない。
「シンデレラ? お姉様を殴るということはどういうことですの!? これだから野蛮人は…」
言い終える前にトイレに行きたくなったので、トイレへ向かう。
義理母様のこの言葉は毎日聴かされているので、もう飽き飽きだ。
「待ちなさい! まだ話は終わってませんわよ!」
「うるせーババア。父様という存在がありながら愛人がいるくせに。毎晩
違う男を侍らして……このビッチ!! さっさと離婚しろよ!」
「何ですってぇ? ビッチですって! 黙らっしゃい! こんなに美しい私があの男の妻になったんですのよ? むしろ感謝すべきだと思いますわ!」
「ふぅん。何時の間にか時代が変わっていたのね。豊麗線とシミはチャーミングに感じるようになったのね。ふふふ。あら、分厚い化粧の施された性格の悪そうなお顔も好まれるのね?不思議な時代ね。はっきり言ってセンスは最低ね☆」
嫌味にぶふっと吹き出して笑ってみせる。
「なんですってぇ!? 気晴らしに今夜の舞踏会はちょうどいいわ!! 貴女には行けない舞踏会がね!」
私には舞踏会が行けないと言ったところでお姉様達はくすくすくすと意地悪そうに嘲笑った。
シンデレラは悔しそうに顔を歪め、ちっ。と舌打ちをする────訳もなく、ぼんやりと派手なドレスを着た姉の姿を見る。
なにせ私にはお洒落なんて興味ないし、王子様なんてどうでもいい。あんなキラキラした人を近くでみると、きっと目が潰れてしまうだろう。何よりも問題なのは女達の嫉妬の目だ。あれほど恐ろしいものはない。
しかし、義理姉様達は私とは真反対の考えでお洒落大好き。王子様の目に留まりたい!! と考えている。だから今夜の舞踏会の為にドレスを特注していた。
上の義理姉様のドレスは赤、青、紫、黄、緑と様々な色の宝石を散りばめ、下半身の部分にはふんだんに白いレースがこれでもか! というほど、びらびらとついている。
正直、上下アンバランスなイメージを持つ。
下の義理姉様は目が痛くなるほど鮮やかなショッキングピンク色の光沢のある生地を使用したドレスで、やたらフリフリしている。 このドレスははっきり言って子どもっぽい。着る年代を間違えている。 まぁ、どちらのドレスも悲しいほどダサいが、上の義理姉様よりはマシかもしれない。
このドレスならお姉様達の目標である、王子様の目に留まるということは出来るだろう。なにせこのドレスなら驚くほど悪目立ちするから。
恐ろしいことに、いや、悲しいことにお姉様達はそれぞれのドレスが最高に素敵だと感じている。
もうドンマイとしか言いようが無いほどセンス皆無なのである。
このドレスはセンスが皆無だとしても流石に悪趣味にもほどがあるだろう。
私だったらこんなドレスを着ている人と一緒にいたくないな。
ドンマァイ!
「何か今失礼なこと考えませんでした?」
ギロリと新しい悪趣味なドレスを抱きかかえた2人の姉がシンデレラを睨む。
ぎらぎらと光る上の姉様のドレスとテカテカと光る下の姉様のドレスは見ていると目が痛くなる。
そんなドレスを誇らしげに持って、私にはドレスが無いことを馬鹿にされても何とも感じない。そんなドレス要らないもの。そんなの着る位ならパジャマで舞踏会に出るわ!!
「いえ。────ただそのドレスは酷いなぁ。なんでこんなにもセンスが悪いのかなぁ。いやぁ、これは酷い! どうしたらこんなに悪くなるのかしらー! こんなに酷いのだから流行とか、宝石とか、ドレスとかの、お洒落の勉強しても無意味だから、その時間をそのお腹周りの余分な脂肪や、丸太のように太い太股の脂肪を落とす事に使った方がいいわ! と思っただけよぉ」
その言葉を聞いて当然姉は怒る。それに対し、ごめんなさいねぇ。私、正直者だからぁふふふふ。と嫌みたらしく応えると姉達のこめかみに青筋が浮かび上がった。
ふふふ。怒っている人見るの大好き!だって先に冷静さを無くした方が負けって感じがして、なんか勝った気分になるんだよねー。
あーあ。そんなに顔を赤くして怒ると焼豚みたいに見えるよ?
お母様に似て性格の悪さがにじみ出ているけど、一応整った顔をしているのに残念ね!
怒り狂ったお姉様達は同時に蹴りいれた。いつもなら、絶対にやらない行為だ。レディとして、蹴りは有り得ないそうである。はしたないらしい。まぁ、それでもやるけどね☆
その蹴りを私は後ろに一歩下がることによって避ける。すると、私が避けたことによりバランスを崩し、倒れる。
「ぷっ。ださっ」
にやにやと笑い、部屋を後にした。
何故だか、分からないが外に出なければならない気がする。急ぎ足で庭へと目指す。
どうして?
どうしてこんなにも使命感にかられているの?
この脚は本当に私の脚なの?この脚……いや、この躯は自分のものではないようだ────。
「ここまで来てくれてありがとうね、シンデレラちゃん!」
庭には青いパーカーを着た人が立っている。
右目は碧く、左目は緑色。オッドアイというやつだ。初めて生で見た。
睫毛も眉毛も髪と同じ色の銀色で、悔しいことに、睫毛の長さには自信がある私でも勝ち目がないほど長く、ボリュームがある睫毛。
肩に付く位の長さがある、白い髪を編み込みして赤いピンでクロスさせるように留めている。
魔法の杖には、先端に大きな星がついている。
喋り方といい、容姿といい……女性かと思ったが、声がだいぶ低い。
「えーっと……オネエ?」
「随分ハッキリ言うのねー。」
「その髪色って白髪みたいにみえるね」
「黙らっしゃい!! よくも人が気にしていることを……!! まぁ、そんなハッキリ言う所を、気に入ったんだけどね。」
くすくすと楽しそうに口元を隠し、笑う姿はとても綺麗で、男にしておくのは勿体ないな。と思った。ニキビのない綺麗な肌。爪は艶々と月の光を浴び、輝いている。この時点で気づいた。
─────────そう。女子の私が女子力が負けていると。
「おーい! 何遠い目をしているのよう! あ。そうだ。貴女きっとドレス持ってないでしょ? 今夜舞踏会があるから行きましょう! どんなドレスがいいかしらねぇ……貴女は水色が似合いそうね! 生地はそうね、貴女のお姉様達とは違う軽いものがいいわね。踊るとふわふわするようなものが。靴は……ガラスのもの。貴女綺麗な脚をしているから、見せるようなデザインで……それでそれで髪型は…シンプルに頭の上でお団子にしちゃいましょう」
楽しそうに言う姿と対象にシンデレラの目は腐った魚のように濁っている。
シンデレラの口は小さく、そして細かく動いている。
『家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。家に帰りたい。』と。
しかし、オネエは気付いていない。何せオネエの頭の中は舞踏会の為にシンデレラを着飾ることでいっぱいだから。
先端に星のついた杖を私に向けて宙に円を描くような動きをした。
「ビビディ バビディ ブー!!」
へ?
オネエは不思議な呪文を唱えると、杖からキラキラと光の粉のようなものを出し、その粉を私にかける。すると、薄汚れた茶色の作業用のドレスは、水色の美しいドレスへと変わっていた。
ただおろしていただけの髪も綺麗に結われ、まるで香油を付けたかのように艶が髪にある。
そして足にはガラスの靴が。
ガラスの靴………絶対靴擦れするな。これでは踊れない。
よし。帰ろう。
そしてこのドレスと靴を売っ払ってしまおう。そして、そのお金で美味しいご飯でも食べようではないか。
「ちなみに0:00過ぎると魔法は消えちゃうからねん?そこは気を付けてね!」
「え? 魔法? ……きえちゃうの?」
このオネエって魔法使いなの? もうこの時代には居ないと思っていたよ! 絶滅危惧種だよ!
魔法を使えるなんて凄い!
あ、魔法……!!
0:00に解ける……私の計画がパァだわ!これじゃあ、ドレスを売ることが出来ないわ!!
なんということ! まさに悲劇のヒロインだわ! 嗚呼……なんて可哀想な私……人生は思う通りにいかないのね。試練を乗り越えなければ幸せてに手に入れることが出来ない……
残念ながら心の中で叫んでいる事なのでツッコむ人はいないので、暴走は止まらない。そもそも可哀想なのは魔法使いということにシンデレラは気付いていない。せっかくシンデレラの為にボロボロのドレスを綺麗な海の色のドレスにしてくれたというのに、それを着ずに売るというのだから、本来嘆きたいのは魔法使いのはずである。
「じゃあ、舞踏会へ行くわよぉ!! ビビディ バビディ ブー!」
足下に転がっていた南瓜を馬車に変身させた。その馬車はまるでウエディングドレスのように純白で、ドアの所だけが金色に輝いていた。お姉様達が使うような、天井の無い、向かい合わせに座る馬車ではなくて、天井も壁もある大金持ちしか使うことのできないような馬車であった。こんな高級感溢れる馬車に乗れるなんてきっと今日限りであろう。胸がドキドキと高鳴る。
「ちゅう!!」
足元に茶色い鼠が驚いたような鳴き声をあげた。南瓜が馬車になったことに驚いたのだろう。まるで人間みたいで思わず笑いがこみ上げてくる。
「丁度良いわ! ビビディ バビディ ブー」
何が丁度良いのかと疑問に思ったが、鼠が違う動物に変身して理解した。
ブルルルル たてがみを揺らし、鼻を鳴らす。
変身したものは馬である。馬車はあるのに馬は無かった。ボロボロの汚らしいドレスを空色の美しいドレスに変え、南瓜を馬車に変え、鼠を馬に変える。こんなことを成し遂げるこの魔法使いをそ尊敬した。絵本の話だと、物の姿を変える事ができる魔法使いは相当のつ使い手であるらしい。
「じゃあ行くわよっ! ほら、馬車にお乗りなさい」
腕を引かれ、馬車に乗せられる。その腕を引く力はり外見は女性だけれど、紛れもなく男の人の力だと分かった。腕を引かれ、馬車に乗せられる。その腕を引く力は強く、外見は女性だけれど紛れもなく男の人のものだと分かった。
いとも簡単に馬車に乗せられてしまう。
私、舞踏会に行きたくない。行く暇があったらほ本を読んでいたい。お出かけしたい。そんな言葉を口に出す暇もないまま気付けばお城の前にいた。お城からはクラシックが流れていて、そして美味しそうな匂いがした。
美味しそうな匂いに惹かれてお城の中へと足を運ぶ。
頭の中は肉厚のステーキ、バターの良い香りのする魚のソテー、私達の手には届かないお高いワイン、シャンパン、プルプルと輝いてまるで宝石のようなゼリー、ふわふわと柔らかいスポンジにクリーミーな生クリームと新鮮な果物でデコレーションされたケーキ……この城にありそうな食べ物の事でいっぱいである。先程まで、本を読みたいと思っていたことや、町へお出かけしたいなどということは頭の中から綺麗さっぱり消えていた。お城の中に入ると、沢山の女性で溢れかえっていた。
その中でのショッピングピンクのドレスと、紫やら黄色やら青やら……やたらキラキラしたドレスは非常に目立っていた。なにせ、その色だけでも目立つのに、さらにその二人を避けるかのように円がつくられている。
うわぁ。
多少は浮いているだろうなとは思っていたがまさかここまでとは……
「こんばんは」
「こっこんばんはぁ!!」
突然声をかけられたことに驚き、変な声をあげてしまった。
くすくす。と笑う声の主を見てシンデレラは固まった。
「チャーミング王子……」
一番会いたくないひと。女の子達の目がギラギラと光っていて怖い。この人は私の獲物よ! 邪魔なのよ!! と目が訴えている。中には歯軋りまでしている女の子もいる。
「一緒に踊りませんか?」
格上の者から言われれば拒否することは出来ない。たとえ女の子の目がどんなに怖くても。
「よ…喜んで」
この言葉を聞いて、いっそう女の子の目は鋭くなる。逃げ出したい。
この気持ちに気付いているのか、気付いていないのか分からないが、私に微笑んだ。中性的な美しい顔立ちで、にこりと笑うときに見える歯は真っ白で歯並びも良い。さらには透明感のある肌はこんなにも近くにいるのに悔しいことに毛穴すら見えない。
畜生! 世界は不平等だ!! と心の中で叫ぶ。
「緊張、していますか?」
耳元で囁いた。まるで誘惑するかのようにかすれた声はとても心地よい低温で顔だけでなく、声まで良いのかとシンデレラは悔しがった。
「はい……………王子の足を踏まないようにすることで頭がいっぱいです」
とっさに言い訳を考え言った。
顔も声も良い、チャーミング王子を僻んでいました。だなんて馬鹿正直に言えるはずがない。
「チャーミング王子ぃ、私と踊ってくれませんかぁ?」
「その次私もお願いしますぅ!」
声をいかにも創りましたという感じのぶりっこ声が王子の背から聞こえる。覗き込んでみると覗き込んだことに後悔した。
やたらキラキラさせたドレスと同じように瞳をキラキラと輝かせた上の義理姉様とショッピングピンクのドレスと同じように頬を上気させている下の義理姉様がいた。知り合いがこんな声を出しているなんて知りたくなかった。
義理姉様に気を取られている内にそそくさと逃げるようにその場を去った。
家に帰ろうと出入り口を目指して歩いている所、腕を引かれた。その力はとても細い腕の持つ力とは思えない程強くて、はっきり言うと超痛ぇ。
離せよ。
「ちょっと貴女、チャーミング王子と何イチャイチャしているんですの。ここは公共の場ですよ。しかも相手は王子。身をわきまえなさい!!」
真っ赤な爪をしているのだからやはり気の強い人だ。まるで血を吸った後のヴァンパイアみたいな赤い唇。雌豹みたいな鋭い目。
面倒臭そうな人だな。あまり関わらない方がよい。謝って逃げよう。
「ごめんなさい」
では失礼っ!
早く帰ってドレスを売ろう。ボロボロのドレスに戻る前に売っちゃおう。お金さえ手には入ればいいんだ。お店の人の事なんて考えなければいい。
「何ですのその謝罪は!! 謝る気あるのですか!? 王子と踊れたからっていい気になりすぎですわよ……」
俯き、ワインを持つ手はプルプルと震えている。あまり良くない予感がする。
ばしゃっ
視界は紅く染まった。どうやら頭からワインをかぶったらしい。
空になったグラスをちらりと見てくすりと笑った。そして私を見ていい気味! と嘲笑いながら言った。
こんなことされて私は何もしないと思う?私のモットーはそう─────────100倍返しよ!
テーブルに並べてあるワインを取り、それを雌豹の丁度お尻の部分に少しだけかける。淡いピンク色のドレスなのでシミが目立つ。
そのシミを指さしがらニヒルな笑みを浮かべる。
「あらぁ? ひょっとして生理なんですかぁ? ドレスに染みていますよぉ!! これからは生理ならそんな色の薄いドレスを着ない方が良いですよぉ! ぷぷぷぷ」
明らかにその血はシンデレラがかけたワインだということが分かるが、ワインをシンデレラにかけた雌豹もそれなりのことをしたので周囲の人は黙ってそれらを見ていた。
「せ……!? そんなわけあるはず……!!」
顔を真っ赤にさせて震えるてで紅く染まっているところに指を伸ばす。その指が紅くなっていることを見ると恥ずかしさのあまり走って逃げ出した。
周りの目の前で生理の血が付いているなんて皆の前で吐くよりもずっと恥ずかしい。
「なかなか凄い仕返しをするね」
後ろからチャーミング王子の声がしてドキッと胸が跳ね上がる。この加速して行く鼓動は恋愛のものではない。これは王宮で騒ぎを起こしてしまったことへの緊張感だ。
「…………」
緊張のあまり声が出せず、口だけがぱくぱくと動いてしまう。罰を受ける覚悟をした瞬間、チャーミング王子はおかしな事を言った。
「相変わらず君は面白い。だから気に入ったんだ。君を后にする!」
気に入った?
私達会ったことも話したこともない
この人は誰かと勘違いしているのではないだろうか?
「くくく。嘘なんかじゃないよ。センスの悪いドレスのおん……こほん。君のお姉さんの事を少し調べたんだよ。あの姉妹には義理の妹がいるはずなのに見たことがない。何故舞踏会にあの女達は来るのに妹は来ないのか。調べていたら笑ってしまったよ! 義理の姉達に虐められているのに、口が悪すぎてどちらが虐められているかが分からないって……くくくっ。」
目尻に涙をためながら笑うチャーミング王子の姿を見て怒りを通り越して呆れた。
「それ、褒めてないですよね?」
「そんなことないよ。この人といたら、人生が楽しいだろうなって……」
ボーン ボーン ボーン ボーン
長い針と短い針が時計の12を指している。
ヤバッ。早く帰らなきゃ魔法が溶けちゃう!! この中でボロボロのドレスを纏う勇気はない。
階段を駆け降りて外へと向かう途中バランスを崩し、転げ落ちそうになるがなんとか体制を持ち直した。しかし、ガラスの靴がとれてしまった。
しかし、ガラスの靴に気を取られている暇は無い。急がねば。
足元から徐々に上へと魔法は溶けて行く。己の姿を見て涙した。ドレスも靴も何もかもボロボロのもの。
───────もう高級品として売り出せるものではない。
がくりと落ち込み、自分の部屋に閉じこもりずっと泣いていた。部屋を出るときはお風呂とトイレと御飯の時だけ。それ以外は自室にいた。
──────私はこの時完全に忘れ去っていたのだ。
「姉様ぁぁあ!! チャーミング王子が来ているわよぉ!」
チャーミング王子に求婚されたことを。
「シンデレラ、城へと向かいましょう。そして式を!」
ドアの前にいつの間にか立っていた王子。逃がさないぞというように隙はない。
どうしよう。
王子と結婚なんてしたくない。今まで通り自由でいたい。
「いきましょっ。シンデレラちゃん!!」
王子がいた場所にあの時の魔法使いがいた。
ま……まさか。嫌な予感。
「いきましょう。シンデレラ」
うるうるぷるぷるのオネエの唇から紡ぎ出される王子の声、言葉。
うわっ。やっぱり……王子があのオネエの魔法使い。
「気に入ったって言ったでしょっ! ────逃がさないよ。どこまでも追いかけて自分のものにするから。」
艶やかに笑う姿にもう自由なんてないんだと悟った。
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