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ブルーフレア  作者: 氷見山流々
正義の使者

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笹本卓

 笹本は目撃地点へと急ぐ最中、言い訳を考えていた。

 最初から偵察だけで終わらせるつもりはなく、彼らとの戦いを望んでいた。誰の邪魔もなく、ただ1人で同じ力を持つ者を倒したかった。

 笹本に正義はなかった。自分が誰よりも強く、偉い存在であることを証明したいがために戦っていた。その志に善も悪も必要ではなく、大義名分として正義の名を借りているだけだった。

 たとえ標的である彼らが悪ではなくとも、理を使う強者であるならば、戦う必要がある。自分が最強である確信を、彼らの死をもって得たかった。

 だからといって並木たちに背くような行いをするわけにもいかない。あくまで偵察という体で、やむを得ず交戦してしまった、という形に持っていくために、都合の良い展開をシミュレーションしなくてはならなかった。

 懸念すべきは菊林だ。彼女の能力の全てを知ってるわけではないが、自分が今、彼女に見張られている状態にある。上手く言い訳をするには、その目を誤魔化し、正当性を提示する必要があるのだ。

 結局、言い訳が思いつく前に彼らを見つけてしまった。報告通りの白い女と、馬鹿に大きい赤い髪の男、それに加え小学生くらいの子供が2人と、腰に鍵束を付けた男がいた。人数は増えていたが、彼らが標的であるのは間違いないようだ。

 更に彼らの傍らに男が1人、倒れて動かなくなっていた。状況は理解できなかったが、都合の良い絵面であることに笹本のずる賢さが気付いた。

 街の人間を襲う悪い奴。彼らは罪のない人を寄ってたかって蹂躙する悪そのものであり、直ちに制裁を下さないと被害は広がる可能性が高い。彼らの危険性を鑑み、本任務を目標の偵察から排除へと移行する。充分すぎるシナリオが完成した。笹本は嬉々として彼らの前に躍り出た。

 呆然とする彼らを尻目に、携帯で1人ずつ写真を撮っていく。全員を取り終えると、それをにメールに添付し、送信した。

「お前、なんだ? 何をした?」

 赤い髪の大男が凄みを利かせた声で問いかけてきた。笹本は笑みを浮かべると、携帯を源石に持ち替えて、空いている手を大男に突き出した。

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