表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーフレア  作者: 氷見山流々
Summer Side Story

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/253

幸せ者

 杏樹と紅蓮が熱戦を繰り広げている一方、図書室では頼人と花凛が彼らの到着を待っていた。

「しっかし生徒会長もここまで手の込んだことしてくれるなんてねえ。生徒も先生もみんな追っ払っちゃうしさ」

「ありがたいことではあるんだけど、迷惑かけてる気がしないでもないんだよなあ」

「気にしなくていいんじゃない? ノリノリで引き受けてくれたじゃん。案外こういうの好きなのかもね」

「なんかそれだけで済まないほど大ごとになってるような……まあ、いいか」

 頼人は開き直ったかのように、不安を放棄した。

「大人しく囚われのお姫様を演じてればいいのよ。助けに来るのはおバカな王子様だけど」

「おバカって、御門さんも紅蓮も頭良いじゃないか」

「そういう意味じゃなくて、あの2人はバカなのよ」

「んー……花凛レベルになると、誰しもがバカになっちゃうかー。仕方ないなー」

「25点」

「精進します」

「期待してるよ」

 慣れた掛け合いに流されたが、花凛は本当に杏樹と紅蓮がバカだと思っていた。2人が持っている頼人への好意は、当然その意味は両者で異なるはずだが、あまりにも不器用で歯痒いものだった。ただ、そういう姿を見てほくそ笑むことができるから悪くはない。あの2人が持っていないものを、自分が当たり前のように持っていることが凄いのではないかと錯覚できるくらいだった。

 凄いと思えるほどこの男に価値があるのかと、しばらく頼人をじっと見つめていた。価値に関しては特に何もないように見えたが、なぜだか妙に顔がニヤけているのが目に付いた。

「その気持ち悪い笑顔は何?」

「あれ、そんな顔してるのか、俺」

「誰が見ても笑ってる」

「そうかあ。いや、仕方ない。そりゃあ、嬉しいからな」

「何が嬉しいの?」

 指摘されてから頼人の表情は緩みきっていた。照れながらも、その理由を話した。

「だって、俺なんかのために御門さんと紅蓮が本気になってくれてるから。本当、友達に恵まれたなって思って」

 感慨深く語る頼人に、花凛は笑いがこみ上げてきて、思わず吹き出した。

「なんだよ、笑うことか?」

「柄にもないこと言うからよ。そういうのは思ってるだけにしてよね。くっ、ふふ……」

「聞いてきたのは花凛だろ。というかそんな笑われると、こっちも恥ずかしくなってくるじゃないか」

「やっぱり頼人はお姫様だ。はあ、笑った笑った」

 花凛は時計に顔を向けた。話しているだけでも相当時間が経っていたようだ。

「さてと、そんじゃあたしはぜろ子のとこに行ってくるわ」

「そうか。今日はいけなくてごめんって言っておいて」

「ほいほい。今日のことは良いみやげ話になるかな」

 花凛は扉の側まで来ると、振り返った。

「あたしが出てった後、ちゃんと鍵閉めなさいよ」

「それくらい分かってるよ」

「ホントに分かってるの?」

「分かってるから、早く行けって」

「そう……じゃ、また明日」

「おう」

 軽い言葉を交わして、花凛は去っていった。静かな廊下を歩きながら、頼人のニヤけ顔を思い出していた。

「あいつも幸せ者ね……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ