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星空に浮かぶ恋模様  作者: 江崎涙奈
レセver.
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03.君と私の関係〈後編〉

 過去回想シーンです。(いつもより少し短いです)

 


「貴方方は、本日より、晴れてこのクレメンタイン学園の生徒となりました。

 これまで永きに渡り、アルカドス国の栄光と繁栄に貢献し…」


 今から2年前。小さな末の妹が生まれた年の春、この学園に入学した。


 入学前の実技、筆記のテストが魔法学部新入生の首席だった私は、新入生代表として列の先頭の席についていた。普段なら寝ている所だが、この時ばかりは背筋を伸ばしてしゃんと座っていた。


「我が学園は、“知識を持ちてを暮らしを豊かにし、武術を持ちて民を護り、魔術を持ちて国を支える”を信条とし…」


 学長の永延と続く話に半ば飽きてき始めた頃、ふんわりと風が肌を掠めた。


 視線だけ横に向ければ、さらさらと流れる艶やかな黒い髪に凛とした横顔。


 確か、次席のグレイス=ファンド・アルデ・ミューだったっけ?


 どれくらい眺めてただろうか、徐にこちらを向いた彼は私と目があったことに驚いた様子だった。


 その時、突如吹いた強い風が講堂を駆け回った。その所為で、彼の胸元に着けていた花飾りが手では届かない所に飛んで行ってしまった。


「っぁ」


 困った顔の彼を見て、無意識に手首に着けた媒体で僅かに魔素を練り、無詠唱で風を起こす。緩やかな風に乗った花飾りは私の手元へと辿り着いた。


 それを胸元にそっと挿してあげる。ありがとうと照れ笑いをする少年につられ、笑みを返し前を向いた。


 そんな、ほんの少し期待を胸に入学式を終えたのだ。


 だがそれも、諦めに変わるのは早かった。


「そういえば、あの(・・)クライヴが入学したらしいね」

「双子だったかしら?」

「そうそう、魔術と武術に一人一人みたい」

「揃って首席でしょう?」

「あはは、あの(・・)一家は、俺ら(・・)と違って出来が違うよな」

「しかも、妹の方はその中でも飛び抜けた天才とからしいわ」

「その上、とんだ問題児なんだろ?」

「うっわ、俺同じ学部なんだけど」

「くすくす、間違って殺されないよう注意したら?」


 他愛ない話の中で掠めた小さな悪意。結局の所、何処へ行っても大して変わらないのだと。


 下らないと、足元の石を蹴ってその場を去った。その後、授業を受けるのも煩わしくなって、授業免除をされていたのをいい事に実技以外授業に出なくなった。


 それから学校にいる間、最低限の授業以外は図書館の奥にある書庫に篭る日々が続いた。


 淡々とただ、機械的に送っていた学園生活が変わったのは、何度目かの魔術実技の授業の時だった。


「レティーセルナ=クライヴ!僕と勝負しろ!!」


 仇を見るかのようなギラギラと光る目で睨むグレイに、何かしたっけと半ば不思議な気分だった。


 するとまた何か気に障ったのか、顔を真っ赤にして一層喚くグレイ。どうしようかと意識を反らし掛けた時、ルーファス達が現れた。


「グレイ、落ち着け」

「そうだぞ、彼女ビックリしてるし」


 二人の少年は私とグレイの間に入り、グレイを諌める。もうどっか行っていいかな。そんなことを思っていれば、青い髪をした少女がひょこりと現れた。


「こんにちは、私はエミー=ノーチェ・アーツィドっていうの。ねぇ、レセちゃんって呼んでいい?」


 突然の事に目を瞬かせていると、後ろでグレイを諌めていた筈の少年がいつの間にかこっちに来ていた。


「あ、俺はレセって呼んでもいいかー?」

「ローランド、まずは自己紹介くらいしろよ、俺はルーファス=カルーラ・アルデ・ミューだ。よろしく」

「…カルーラ?」

「はは、やっぱり珍しよな」


 カルーラ・アルデ・ミューと言えば剣術の名門中の名門の家だ。そんな家が魔術学部に入るなんて珍しいに決まってる。


「って、グレイ、こっちを睨むなよ」

「っなんでお前が……!」

「レセー、俺は、ローランド=ビアス・リテリードっていうんだ。これからよろしくなっ?」


 後ろにいたグレイが険のある眼差しをルーファスに向けている。そんな二人をローランドは特に気にした様子もないまま、にこにこと自己紹介をしてくれた。仲が良いのか仲が悪いのか疑問なんだけれど。


「ほーら、グレイも自己紹介してよ!自己紹介!」

「……グレイス=ファンド・アルデ・フィーだ」


 物凄く嫌々といった感じに挨拶をするグレイ。君の名前はもう知ってる。自分も自己紹介すべきか。だが、もう彼らは自分の事を知ってることから必要ないかとその考えを捨てる。


「っ別に、よろしくなんてする気、ないからな!」


 グレイは顔を真っ赤にして怒って行ってしまった。ルーファス達はそれを笑って見ていた。グレイは一体何を言いに来たんだろう。


「…あれ、勝負は?」

「レセちゃん、勝負したかったの?」

「うん」


 ぼそりと吐いた疑問を拾ったエミーは、さも意外と言わんばかりの顔をしていた。


 勝負って真面に、ルセとかリア姉や稀にお父様相手にしかしたことがなかったのだ。


「今度言ってあげたら?」

「んー、気が向いたら」

「そっかー、じゃあ、今日は私と勝負してくれない?」

「エミーと?」


 それは願ったり叶ったりだ。ちょっぴりわくわくしていると、後ろにいたローランド達が話に加わってきた。


「あ、ずるい!俺もレセと勝負したいって」

「それなら俺もしたいな」

「ふふー、言ったもん順よ」

「それならグレイじゃね?」

「確かに」

「この場にいない人とは勝負出来ないでしょ?だから、今日は私がレセちゃんと勝負!」


 エミーはそう言って鮮やかな青に輝く杖を取り出した。なんだなんだと周囲に人が集まるのを感じながら、私も手元に杖を出す。


「ルーファス、合図お願い」

「はいはい、じゃ、始め!」


 この日からエミー達と話す様になった。けど、グレイとは会話らしい会話もなく、突っかかられては一人で怒って何処かにいってしまう。


 多分、君と私の関係は、この先変わることはないんだろう。


 そこに一抹の寂しさを感じた様な気がしたのは、きっと気の所為。



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