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第六話 夢

     [新緑の13日]

いつもは休む前に記すことにしているけれど、忘れないうちに今記しておきます。

昨夜不思議な夢を見ました。

全部は覚えていないの。それに、何だか断片的で。

いえ、夢なのだから不思議だったとしてもおかしくはないのだろうけど。

不思議なことは夢の後起こったの。

夢の中で、アルは風の力を使う練習をしていたの。朝起きて、少し部屋の中に風を吹かせて、昨日と同じ顔で笑ってた。それから少し経って、アークの小屋の仕事を終えて、小屋の前でまた風の力を使って、アーク達に見せるように少し浮かんだりして。そうしたらアーク達は一斉にキィキィと鳴きだして。騒ぎを聞いたビシューお兄様が駆けつけて、アルは慌てて力を使うのを止めた。でも近くで遊んでいた年下の子供たちが集まってきてしまって。口々に騒ぐから、普段あまり冗談を言わないビシューお兄様が、

「風の精霊が通りかかっただけだろう。」

って言って、皆笑ってその場は収まったの。

その次のアルは、またビシューお兄様と組んで、アークをそれぞれ一羽ずつ連れて出かけていたわ。やがて二人は別れ、アルは今日は西の林の丘に登って、アークを見つめて指示を出して、空に放った。アークは頭上をしばらく旋回した後、瞬く間に北東に消えた。

しばらく待っていると首に伝書を取り付けたアークが到着して、伝書には「次はもう一羽を放つから、続けて待て。」と記してあり、アークを労ってから、また待ちながら風を使う練習をしていた。その頃には昨日よりも随分コツを掴んで、高く飛び上がっていたの。

その時だった。空のかなたから、 キイという声が聞こえたのは。

アルはまだ飛び上がったままだった。

すると先に戻ってきて止まり木に居た一羽が出迎えるように飛びだし、二羽は空中にただ浮かんだままのアルの周りを旋回して、しきりに鳴いて。まるで誘っているような、試しているような感じだった。

でもアルに飛び出す気配がないのを知ると、二羽とも飛去ってしまったのだった。

夢はそこで終わり。


私は、目が覚めた時、うまく言えないけど、これは現実のことのような気がして。

でも、アルとビシューお兄様が普段どんな訓練をしているかも知らなかったし、判断はつかなかった。

アルと話したかったけど、今日は私はお母様とおば様と竈の担当の日だったから、アルを探しに行くことははばかられて。

夕餉の前に帰宅したビシューお兄様に呼び止められて聞かれたの。

「最近、アルフォンスに変わったところは無かったか?」って。

私ははぐらかして、なぜそんなことを聞くのかと尋ねたら、

「ずっと訓練では失敗知らずで、どのアークと組ませてもうまくやれていたのに、今日は送ったはずの二羽とも戻ってきてなぁ。一通は伝書もついたままだったし。聞いても失敗しました、スミマセンしか言わないし。」と。

「まぁいくらあいつでもまだ未熟なんだし、失敗だってするんだろうが。どうにもアーク達の様子がおかしくてな。小屋に戻しても、アルフォンスの姿を見ると変に騒ぐし。それに、見間違いかもしれないんだが…。」

「…朝、アーク小屋の前で、…浮かんでいるように見えたんだ。」

と。

変なこと聞いてすまなかったな、とお兄様は夕餉に行かれましたが、私は言葉が出なくて。

ねぇ、アル、私が昨夜見た夢は、今日のあなただった??

昨日風の精霊様のお声を聞いた後から、私には色々な音や感情が分かるような気がするの。あなたなら信じてくれるでしょう?

あなたがこの風の里の祝福されし者であることをお兄様やお父様に、ううん、マーにお会いして伝えたほうが良いのかしら?

このままだと何だか嫌な予感がするの。


明日はよい風が吹きますように。

いつも風と共に。

     セリーナ・アミエ



稚拙な文章、最後までお読みいただきありがとうございます。

記録形式でお話がうまく伝わっていると良いのですが。

良ければ続きもまた読みに来てくださいね。

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