第五話 セリーの日記
[新緑の12日]
ああ、今日は何という1日だったのでしょう。
よくアルと話していたけれど、まさか風の精霊様のお声を聞ける日がこんなに早く訪れるなんて!
小さい頃、今は亡きアシュリーおばあ様が、
「風の里の民は風の精霊様に愛されている、この里は古い古い頃から、暮らしぶりとしきたりを守ってきた。昔から、祝福を受けた民が幾度も出て村を助けたんだ。だから会いたければそう呼びかけておいで。でも覚悟がなきゃね。お前は風にのる想いを感じたことはあるかい?きっとやってきた精霊様が聴いて下さるよ。」
と仰っていたのを思い出します。
アルはやっぱり選ばれたわ。
そして祝福を受けました。
身体が軽くなったんですって。
アルのあんな子供みたいな顔を見たのっていつ以来かしら。アルってば最近はいつでも余裕です、っていう顔ばかりだったもの。
でも精霊様の残した言葉の意味はよく分かりませんでした。
忘れないうちに記録しておきます。
『そなたらは風なり。我の力はそなたらと共に。成すべきことを為せ。人間の子らよ。』
だったかしら?
それに、アルが言っていたのとは違うけど、精霊様のお声を聞いてから、やはり私も少し変わったような感じがしています。
早く走ったり浮かんだりは出来そうにないけど、何というか、ずっと静かで、寂しくて、温かくて…。耳を澄ませば、ずっと遠くの街の歌が聞こえているような。
目を閉じれば、心だけはどこまでも飛んで行けそうな、不思議な気分。
またアルと話してみなければ。
明日も素敵な1日になりますように。
風と共に。
セリーナ・アミエ