に話!! 幼馴染、人間なのに……
半ば無理やりにルミアと契約させられた(いや、半分は自業自得だと思うが)俺は思い出す。
そうだ、俺は学校に行かなければならないのだ。俺は学生だ。
「ルミアお前、学校どうする?」
「がっこー?あぁ、頭の悪いニンゲンどもがお勉強をしに行く場所ね」
「お前の言葉はいちいち癇に障るな」
「い、いやぁ。て、照れるわねぇ。えへへ……」
「褒めてねえ!!」
どこをどう聞き間違えれば褒め言葉に聞こえるのだろうか。人間の俺には理解不能である。
「行ってもいいわよ。面白そうだし」
ルミアは自分の髪を指で弄びながら答える。
「制服は?」
「制服なら……」
ぱちんっと指を鳴らす。すると、ぽわんと煙と共にうちの学校の女子制服が現れる。
「よくうちの制服が分かったな?」
「だってあたしは天才だもん!」
「あっそ」
なんか俺にはこいつが相当イタいヤツに見えてきた。
「着替えてみるわねっ」
ルミアはウキウキ顔で今着ているなんだか不思議な感じの服を脱ごうとする。
「え、ちょ、ここで着替えんの?!」
それは流石にまずいだろう。俺は脱衣所に行くようルミアを促す。しかし、
「え、駄目なの?」
逆に聞き返されてしまった。
えっと。
「いや、その、駄目だろ」
すると俺のちらちらする視線に気付いてかルミアは急に顔を真っ赤にして叫んだ。
「あ、ああああんたっ……!この、バカ詠斗ぉぉぉ!!!」
そして右手の指先からなにやら赤い炎のようなものを生み出し俺に向かって放つ……!
っていやいやいやいやいや!!!!
「しっ、焼焔--------!!!!」
ボオオオオォォォォォォゥゥゥゥゥ!!
「ぎゃああああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!」
………結局部屋から追い出されてしまった。俺の部屋なのに。
しかし凄いな。あれだけ炎を被ったのに制服は案外無事だ。流石うちの学校の制服。防弾防火加工がなっている。もっともこんな所で役に立つとは思ってもいなかったが
すると、
ピーンポーン……。
「詠君。おはよう!」
インターホンと共に可愛らしい女の子の声が聞こえてくる。
あ、忘れてた。確か今はもう八時。俺にはこの時間毎日迎えに来てくれる女の子の存在がある。
羨ましいと思うか?しかし、それは明らかに勘違いだと、俺は思う。
御巫小都葉。
俺の通う私立粟生山学園の2年生でかなりの有名人であり、俺の幼馴染である。
私立粟生山学園といえば軍事用の授業や部活があることで有名な学校。とくにレベルが高いわけでもないがそこそこの名門校である。軍事用の学園というところもあり制服は防弾防火加工が施されている。
軍事用の部活にはライフル部、軍事機械部、軍事科学部、武術部などがあり、それぞれにライフル常時所持、緊急時の免許無しでの機械運転、警察への協力などが許可されている。勿論国からの許可も得ている。自衛隊の訓練のような事を訓練する部なんていう活動内容をそのまま部活動名にしたような部活も少数ながらあるのだがそれはネーミングの問題としよう。
しかし、あいにく俺はどの部活にも入っていない。それどころが授業でさえ軍事を取っていない。軍事で有名なこの学園にとってこういう男子生徒は結構珍しいのだが、どうやら俺には軍事は向いていないようだった。
逆に女子生徒で軍事に携わっている生徒は少ない。ほとんどが普通の部活か帰宅部である。それに女子がそういう事をするとなるとかなりきついと思われる。体力的に。それでも女子生徒と男子生徒の数がほぼ対等なのはここの制服が可愛いからかもしれない。
小都葉はそんな学園の中でも特に珍しく、一番危険とされるライフル部の唯一の女子部員。そしてかなりの腕前。男子よりも強いのではと噂されるほどである。
容姿は幼馴染の俺が言うのも何なのだが、はっきり言って可愛い。短くカットされた漆黒の髪に丸く大きな瞳、白い花の髪飾り。それに学校に許可を得て制服として着ている、動きやすいようにミニ丈にされた瑠璃色の着物。それらは小都葉の可愛らしさをより一層引き立てている。おっとりしているように見られる彼女だがその実態はかなり怒りっぽく、事あるごとにライフルをぶっ放す。はっきり言って危ないやつだ。
以上のことを踏まえここは………居留守を使おう。
「…………………」
「詠く~ん。起きてないの?」
「…………………」
「詠君?早く起きないと遅刻しちゃうよ」
「…………………」
「………」
ドアの外からの声が消える。
先に行ったみたいだな。
「ふぅ………」
俺はため息をつく。すると
カ、チャ……カチャ、カチャ……。
ぴ、ピッキング?!それ日本じゃ法律的にアウトだろ!不法侵入だし!
鍵を開けようとする音はなお続く。
カチャ……カ、チャ、カチッ。
か、鍵開いたああぁぁぁぁぁ!!開けやがったぁぁ!
そして玄関から女の子が顔を出す。
「詠君?あ、なんだ起きてたんなら返事してほしかったな。おはよ!」
にこっと微笑む小都葉だか今の俺には悪魔の笑みにしか見えない。
こんな朝早くから俺の家に女の子がいるとなると小都葉は絶対暴走する。朝早くなくてもライフルぶっ放すのに。
「あ、あぁ。はよ……」
俺は曖昧に返事をし、小都葉を部屋に通すまいと部屋の扉に近づく。
「あれ詠君。どうして後ずさるの?部屋に何かあるの?」
「いや、別に」
バレませんように。ぜっっっったいバレませんように!!!
バレたら待っているもの、それは死なんだ。
汗がつーっと、頬を伝う。
「ふぅーん。ならいいけど。それより詠君、どうしてまだパジャマなのかな?着替えてきたら?遅れちゃうよ」
相変わらず笑顔の小都葉。……怖い。
「あ、あぁ今、着替え、て……」
無駄に増える濁点の数。
その時。
がちゃ。俺の背後の部屋の扉が開きピンクの髪の毛の少女がとび出す。
「詠斗ー。制服似合、う……」
ぬあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!
小都葉の顔から笑みが消える。
「あ、えと……小都葉?」
「………」
無言。ただただ無言。それは恐ろしいほどの無言の境地だった。
小都葉は着物をぱんぱんっと叩く。そして、
「…………」
ガチャ。パタン。
静かに出て行った。
「えっと……詠斗?今の……誰?」
俺は考える。
……………やばい。とにかくヤバい。やばいやばいやばいやばい………。
「詠斗?」
ここは。
まず。
「ルミア」
「なぁに?」
「今すぐ荷物をまとめろ。夜逃げするぞ」
「は?何でよ急に。てか夜じゃないし!!」
「でないと俺ら、殺されるぞ!!」
「何が言いたいのかよく分からないけど……。この悪魔であるあたしが負けるわけないじゃなぁい!」
「あ………」
ルミアがやたら自信満々な顔で言うので何か納得してしまった。
けど、このままこうしていたら……。
そうこうしていると再び玄関の扉が開いた。横にではなく縦に。
ドガシャァァァァ!!
「詠君どいて!!いま助けるからね!!不法侵入者は今サクッと殺してあげるからね!!」
そこにはライフルを構えた小都葉がいた。
「ちょ、落ち着けって……!つーか不法侵入者はむしろお前じゃ……?」
「早くどいて、詠君。そいつ殺せない!」
「いやいやいや!殺さんでいい!殺さなくていいから!!」
「問答無用!!!」
ズガァンッ!!
「ぅおっ………!」
小都葉が放った銃弾は俺の腰を器用にすり抜けルミアの方に向かっていく。
「ちょっ?!」
ルミアはそれを軽く飛び退いて避ける。銃弾は………シュウウゥゥゥッと音を立てて白く綺麗な壁にめり込む。
あぁ、俺の部屋が壊れていく……。
「何するのよぉ!!」
「不法侵入者を排除してるんだよ」
ズガン、ズガン!!
「もうっっ!何なのよぉ!!!」
ルミアが避けるたびボロボロになっていく部屋。
「詠君はわたしだけのものなんだよ。詠君は浮気なんかしないはずだもん。だからこいつはただの侵入者なんだよね?詠君はわたしに嘘なんかつかないはずだもんね。だからね。わたしが詠君を守ってあげるからね。この礼儀知らずの女はわたしが内臓を抉り取って殺してあげるからね。うふふ。ふふふふふ」
ズガン!!ガシャン、グシャァ、ドガシャァァァッ!!
「怖えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
なんかキャラ変わってる?!ヤンデレ化してる--------------------!!!
「ルミアどうにかしてくれ!!!!」
俺はルミアに助けを求める。……追われてるのルミアだけど。俺じゃないけど。
小都葉はこうなったら俺には止められない。
「どうにかって………。……あぁ、もうこいつウザい!何なのよ!」
今まで銃弾を避け続けていたルミアは、くるっと小都葉の方を向くとさっき俺に向けてやった技をくり出した。
「焼焔!!!」
ボォォォォゥ!
相手が女子だからかかなり弱めだったが小都葉はその場で気を失った。
………すまん。小都葉。わざとじゃ、ないんだ。
「きっと読者は俺のことを血も涙もない男だと思ったに違いないさ。」
小都葉はちょっとアレだがそこらの女子よりは女子女子しているほうなんだ。そんな女子をわざとじゃないとはいえ炎まみれにする男って……。
そこへ。
「落ち込んでいるところ悪いんだけど、詠斗。これ、どーする?」
ルミアは部屋を指差す。
「うわぁ…………………………」
あ、なんかちょっと、もう、俺…………………泣きそう………。
(良い子はまねしないでね♪)
「に話!!」は終わりです。
読みにくい文章を読んでくれてありがとうございます^^
次は「さん話!!」です。新キャラ登場!