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  作者: 瑛彪・玄彪
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 案の定、雨が降り始めた。始めはボタボタと大粒がまかる程度だったが、神社の辺りになると雨音が身を包む。遥か向こうの鳥居まで一直線、黒い水玉模様になったアスファルトの参道が、チャリで進むにつれて黒く染まっていく。めーご橋にかかる頃には、雨は矢となって私を襲う。熱い地面で焼けた雨のにおいが鼻につく。気づくのが遅かったかな、という思いが胸をよぎった。

 本降りになる前に、人の店の軒下でブレーキをかけた。息をついて外を見ると、ちょうど雨が激しくなったところだった。ギリギリだな。この調子だと通り雨のようだ。同じように降り込められてしまったおじさんが、道路の向かい側のアーケードの下で雨宿りをしている。しばらく待てば止むかもしれない。そもそも、あのまま教室でおとなしくしていれば通り過ぎた雨なのかもしれない。カッパを着るのも面倒だ。軒からしたたっていた雨水が細い滝になり、それの数が見る見るうちに増えていく。

 しかし、行こうと思った。何かが自分を呼んでいて、行かねばならぬ気がする。カッパを、仕込んでいたサドルの下から引きずり出した。前籠にあった荷物を背負い、カッパで体ごと包む。軒下からこぎ出だしたとたん、いっせいに雨粒があたりちらしてきた。まるで全身、血行促進マッサージをされているようだ。

 図書館のところにくると、カァッと日が照ってきた。しかし雨は降り止まない。天気雨というやつである。なんてこったい、狐の嫁入りにまきこまれたんかい!と空を仰ぐ。右手はスカッと青空、左手はどんより雨空、だった。

 まぶしい陽射しの中を雨に打たれながら行くのは、ものすごく妙な気分だ。休館日の図書館を左に曲がり、何が楽しくてこんなことしてるんだろうなぁ、と思いながら、目の前にひらけた空を見上げた。

 

 虹だ。

 

 その時の感動を私は忘れない。すっごくでかい。びよよ―――んと空いっぱい、横に伸びている。飛び越すとしたらハードル競技、くぐるとしたらリンボーダンスだな。背負っている太陽があんまり照らすもんだから、目の前の虹はつかめそうなくらい、くっきりそこに在った。まるで幻覚でないかのように。


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