第37話:『五帝集結――空中要塞パンドラ』
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炎帝レオンハルトの消滅と共に、氷晶宮は完全に崩壊し、海へと沈んだ。 瓦礫の上に立つ俺と結衣。そして、炎を喰らって不気味なほどの魔力を放つハク。 勝利の余韻に浸る間もなく、世界の「音」が変わった。
ズゥゥゥゥゥゥゥン……!!
地響きではない。空そのものが、巨大な質量に押し潰されるような低い振動。 水平線の彼方、雲を割りながら現れたのは、五つの異なる魔力が螺旋を描いて空を穿つ光景だった。
「……ついに、なりふり構わなくなったね。彼らはプライドを捨てて『群れる』ことを選んだようだ」
いつの間にか、ルカが俺たちの隣に立っていた。その視線は、上空に浮かぶ巨大な影――かつてOSの管理下で「最終処分兵器」として封印されていた空中要塞を見つめている。
「あれは……何?」
「空中要塞パンドラ。……世界のOSを設計した管理者たちが、人類が制御不能になった時のために残した、文字通りの『厄災』の箱だよ」
2
パンドラの中心部。そこには、残された五人の皇帝たちが、憎悪と恐怖に満ちた瞳で下界を見下ろしていた。
『光を失い、水と炎を削られた……。もはや、個の力で奴を葬ることは不可能だ』
土帝ガイアの声が、要塞の拡声魔法を通じて世界中に響き渡る。 彼の横には、風を纏う賢者、雷を背負う武人、森を司る老婆、そして金を操る守銭奴。 本来ならば互いに相容れないはずの五帝が、今、一つの「殺意」に集束していた。
『神代晴人よ。貴様が望んだのは自由か? ならば、その自由の重さを知るがいい。……このパンドラより放たれる「裁きの光」が、世界全土を均し、再び完璧な平穏をもたらすだろう!』
要塞の底部が展開し、五つの属性が混ざり合った、どす黒い極大の魔力収束砲が形成され始めた。 それは日本列島だけでなく、世界の主要都市すべてを同時に消滅させうる規模の攻撃だった。
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「……冗談だろ。あんなものを撃ったら、世界は本当に終わるぞ」
俺はハクを抱き上げた。ハクの体は、パンドラから放たれる異常な魔力に反応し、再びその身を「虚無」へと染め上げようとしている。
「ハルト、私……まだ戦える。お父様を超えたこの氷なら、あんな光だって……!」
「ダメだ、結衣。お前の魔力はもう限界だ。……それに、あれは魔法の規模じゃない。世界そのもののリソースを燃やして撃とうとしている」
俺は一歩、空中へと踏み出した。 ハクの捕食能力で喰らい尽くすには、相手のエネルギーがあまりに巨大すぎる。 なら、方法は一つしかない。
「……ルカ。パンドラの中心まで、俺を飛ばせるか?」
「……正気かい? 五人の皇帝を相手に、たった一人で乗り込もうと言うのか」
「一人じゃない。……俺とハク、そして、あんたが信じた『不適格者の執念』が一緒だ」
ルカは一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの不敵な笑みを浮かべ、杖を構えた。
「――いいだろう。管理者の末裔として、最後の『反逆』の切符を君に渡そう。……ただし、戻ってこなかったら、君の伝説を僕が勝手に書き換えてしまうよ?」
「……ああ。最高にハッピーエンドなやつにしてくれ」
ルカの空間転移が始動する。 俺とハクは、光を放つパンドラの中心部――「五帝の玉座」へと、一気に加速した。




