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重力加速の不適格者  作者: はっこー
第三章:『再起動する世界、新しき王の誕生』

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35/39

第35話:『水帝の終焉――そして世界は赤く染まる』

1

 玉座の間を埋め尽くす『魂葬の海』が、意思を持つ魔獣のように俺と結衣に襲いかかる。  触れれば魂を溶かされる死の水。だが、結衣はその波頭に向かって一歩も引かずに杖を突き出した。


「――お父様、これが私の『答え』です。……氷結再定義:『終焉の銀世界エターナル・スノー』!!」


 結衣の体から、命そのものを削り出したような純白の冷気が爆発した。  迫りくる黒い海が、その飛沫しぶきさえも空中で静止し、美しい結晶へと変わっていく。   「……馬鹿な。私の魂の水を、物理的な温度で止められるはずがない……!」


「これは温度じゃありません。……ハルトが教えてくれた、あなたの勝手なルールへの『拒絶』です!」


 結衣の魔力と、水帝アクアの魔力が激突し、城全体が悲鳴を上げて軋む。  拮抗する二つの力。だが、俺は見ていた。アクアの背後、城の心臓部から汲み上げられる魔力の奔流が、結衣の限界を超えようとしているのを。


2

「(……今だ。ハク、演算はできなくても、俺の意志ベクトルは通るだろ!)」


 俺は眠るハクを左手で抱き締めながら、右手をアクアが操る巨大な水球へと向けた。  これまでは「自分を加速させる」ために使ってきた重力。だが、今の俺には「対象」が明確に見える。


「――法則改変。体積圧縮、及び事象収束。……全部、一箇所に固まれッ!!」


 ドォォォォォォォォォォ!!


 アクアが操っていた数万トンの海水が、俺の重力によって直径わずか数メートルの「高密度な水の塊」へと強制的に圧縮された。   「な……に……っ!? 水の質量を、重力だけで……抑え込んだというのか!?」


 制御を失った水の塊は、あまりの密度に自身の重さに耐えきれず、アクアの術式を内側から崩壊させた。  その隙を、結衣は見逃さなかった。


「――これで、終わりです。さようなら、お父様」


 結衣の放った最後の一撃――絶対零度の光軸が、アクアの胸を貫いた。  水の支配者の体は、足元から静かに、そして美しく氷像へと変わっていく。


3

「……見事だ、結衣。……お前は、私という古い理を超えた。……新しき王を……見届けるがいい……」


 アクアの氷像が砕け、光の粒子となって海へと還っていく。  同時に、日本列島を沈めていた海面の盛り上がりが収まり、世界は静寂を取り戻した……かに見えた。


「……やった、のね。ハルト……」


 崩れ落ちる結衣を支えようとした、その時だった。    ゴォォォォォォォォ……ッ!!


 天を仰いだ俺の視界が、一瞬で「赤」に染まった。  雲が、大気が、物理的に「発火」している。   「……あはははは! 素晴らしいよ! 水帝アクアという最高に冷めた前座が消え、ようやく舞台が温まってきたじゃないか!」


 空から降り注ぐのは、雪ではなく、巨大な「火炎の雨」。  氷晶宮の天井が熱で溶け落ち、その炎の渦の中から、深紅のマントを翻した男が降臨した。    『炎帝』レオンハルト・フォン・イグニス。    かつて俺を試した男が、その瞳に狂気と歓喜を宿して、溶け始めた玉座の上に立った。


「ハルト、結衣。……OSという枷が消えたこの世界に、水など必要ない。……すべてを焼き尽くし、純粋な『エネルギー』へと還元してやろう!」


 炎帝の背後で、かつてないほど巨大な火炎の獅子が顕現し、咆哮を上げる。  水帝を倒し、満身創痍の俺たちの前に、最強の武力を持つ暴君が立ちはだかった。

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