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重力加速の不適格者  作者: はっこー
第三章:『再起動する世界、新しき王の誕生』

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33/39

第33話:『七帝の宣戦布告――沈む列島』

1

 土の巨人が放った黄金の拳が、俺の眼前に迫る。  以前の俺なら、ハクの演算補助を受けて「回避」の確率を計算していただろう。だが、今の俺にその必要はなかった。


「……重力、固定」


 俺が小さく呟くと同時に、俺の周囲数メートルの重力が「無限の質量」へと変わった。  ドゴォォォォォン!!  激突した土の拳が、俺の体に触れる直前、自らの重さに耐えきれず砂となって崩れ落ちた。


「な……!? OSの補助なしに、定義を固定しただと……!?」


 巨人の奥から土帝の驚愕の声が響く。  俺は一歩踏み出し、今度は重力を「前方への一点」に集約させた。


「――これは、命令コマンドじゃない。俺の意志だ」


 拳を突き出す。  衝撃波が直線上にあるすべてを圧砕し、土の巨人を跡形もなく消し飛ばした。  千代田の廃墟に、再び静寂が訪れる。だが、それは嵐の前の、あまりに短い静寂だった。


2

「ハルト、見て! 海が……!」


 結衣が水平線を指差して叫んだ。  本来ならビル群に遮られて見えないはずの東京湾。しかし、今や海水は巨大な壁となって盛り上がり、かつての海岸線を飲み込んでこちらへと迫っていた。


 それだけではない。  空に巨大な魔力のスクリーンが展開され、一人の男の姿が世界中に映し出された。  青い法衣を纏い、冷徹な美貌を持つ男。結衣の父であり、八帝の次席――『水帝』アクア・リシュリューだ。


『全人類に告ぐ。……偽りの太陽ソロモンは墜ちた。世界は今、理を失った濁流と化した』


 水帝の声は、直接脳に響くような、圧倒的な魔力の圧力を持っていた。


『私はこの世界を「浄化」する。……新たなOSが構築されるまで、日本列島という名のバグを、母なる海へと還そう。……選ばれた者のみが、私の新世界へと招かれる』


 映像の中で、水帝が指を動かす。  その瞬間、日本各地で大規模な地殻変動が起き、列島そのものが数センチ、数メートルと海へと沈み始めた。


3

「お父様……! なんてことを……!」


 結衣が膝をつき、震える拳で地面を叩いた。  父がやろうとしているのは、秩序の名を借りた大量虐殺だ。


「……ハルト、行こう。あの人は、私が止めなきゃいけない。……私の氷で、あの人の冷たい野望を全部、止めてみせる」


 結衣が立ち上がる。その瞳には、もはや「水帝の娘」としての迷いはなかった。  彼女の杖から放たれる冷気は、周囲の海水の一部を瞬時に凍らせ、白銀の道を作った。


「ああ。……ルカ、あんたはどうする」


 俺は背後の軍師を振り返った。ルカは皮肉な笑みを浮かべ、黒い杖を回した。


「僕は、君たちの『伝説』を特等席で観測させてもらうよ。……それに、他の六帝たちも黙っちゃいない。土帝、炎帝、風帝……。奴らがここへ辿り着く前に、僕がいくつかの『盤面』を処理しておこう」


「……助かる」


 俺は、いまだに眠り続けるハクをコートの内側に抱き寄せた。  ハクが目覚める時。それが、この世界の新しい王が決まる時だ。


「行くぞ、結衣。……海を割って、あの玉座まで駆け上がるぞ」


 俺は重力を操作し、足元の空間を「圧縮」した。  一歩が数百メートル。  俺たちは、迫りくる大津波に向かって、真っ直ぐに跳んだ。

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