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重力加速の不適格者  作者: はっこー
第二章:『八帝の崩壊と、世界のOS』

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31/39

第31話:『光帝vs不適格者――重力が光を追い越す時』

1

「――光あれ(フィアット・ルクス)」


 光帝ソロモンが静かに告げた瞬間、真っ白な空間が「死の光」で塗りつぶされた。  それは魔法という概念を超えた、OSによる**『描画の抹殺』**。光に触れた箇所から、俺の存在データがノイズとなって削り取られていく。


「ハルト、避けて! ……氷結定義・極致『絶対零度の防壁』!!」


 結衣が魔力のすべてを絞り出し、光を凍らせようとする。だが、光帝の放つ光は「速度」そのものだ。氷が形成されるよりも早く、光の槍が結衣の肩を貫いた。


「結衣!!」


「……無駄だ。光の速度は、この世界の定数ルールそのもの。定数に従う魔法使いに、定数を操る私を打つ術はない」


 ソロモンが右手を振り下ろす。数千、数万の光の雨が、俺と結衣を逃げ場のない絶望へと追い詰める。  だが、その刹那――。


「……定数がルールなら、その『空間キャンバス』ごと歪めればいい」


 ルカが黒い杖を地面に突き立てた。  管理権限発動:『事象地平イベント・ホライゾン』。  俺たちの周囲の空間が真っ黒に反転し、光帝の放った光が、吸い込まれるように湾曲して俺たちを避けていった。


2

「ハルト、今だ! 僕が空間を固定している間に、君の重力で光を追い越せ!」


「……ああ、わかってる。ハク、最後だ……力を貸せ!!」


 俺の胸元で、ハクが静かに目を開けた。  その瞳は黄金でも銀でもない、あらゆる色を飲み込む「無」の色。九つの尾が、真っ白な空間のコードを直接掴み、俺の脳へと「世界の真実」を流し込む。


 ハク・最終形態:『終焉と創生の神狼ラグナロク』。


 俺の視界から「壁」が消えた。  光帝の動き、光の粒子、OSの鼓動。すべてがスローモーション、いや、静止したデータに見える。


「――法則、最終改変。定義上書き……『事象の特異点シンギュラリティ』」


 俺の右拳に、世界すべての質量を凝縮させる。  重力があまりに強すぎて、光帝の「光」さえも俺の拳に吸い寄せられ、螺旋を描いて加速の餌食となった。


「なっ……光が、私の光が……一介のウイルスに屈するというのか……!?」


「あんたの光は速い。……けど、俺の重力は『場所』そのものを引き寄せる。……光が届く前に、俺がそこへ行くんだよ!!」


3

 俺は空間を「縮めて」跳んだ。  光速を超えた、因果律を無視した一撃。


「これで、終わりだぁぁぁぁ!!」


 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 真っ白な空間が、ガラスが砕けるような音と共に粉砕された。  俺の拳がソロモンの胸部――光帝のコアを貫き、そこから莫大な黄金のデータが溢れ出す。


「……バカな……私が……システムそのものが……敗北するだと……」


「あんたが守ろうとしたのは、死んだ世界だ。……俺たちは、汚くてもいいから、生きてる世界へ行く」


 ソロモンのホログラムが、絶叫と共に光の塵となって霧散した。  同時に、世界の心臓コアが激しく脈動し、赤から青へと、そして透明へと色を変えていく。


「……ハルト、やったのね……」


 結衣が崩れ落ちる俺を抱きとめた。  周囲の真っ白な空間が崩壊し、その向こう側から、嗅いだことのない「土と風の匂い」が流れ込んでくる。


「……再起動リブートが始まったよ、ハルト。……君が、檻の鍵を壊したんだ」


 ルカが満足げに空を見上げた。  そこには、ホログラムではない、本物の、どこまでも深い夜空が広がっていた。


 第二章:完。  物語は、OSの支配から解き放たれ、真の自由と「残された八帝」との戦争が始まる、最終章へと加速する。

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