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重力加速の不適格者  作者: はっこー
第二章:『八帝の崩壊と、世界のOS』

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23/39

第23話:『第一の番人、重力使いの処刑人』

1

 漆黒の甲冑から漏れ出す圧力が、周囲の空間を物理的に歪めていた。  男が背負った巨大な大剣が引き抜かれると、その重さだけで地面のアスファルトが同心円状に沈み込む。


「……ルカ。こいつ、ただの亡霊じゃないな」


「ああ。皮肉な再会だね。彼はガウェイン・ベルフォード。かつて世界ランク四位にまで登り詰めながら、十年前の『新宿事変』で死亡したとされていた、伝説の重力使いだ」


 ルカの声に、いつもの余裕が消えている。  世界ランク四位。それは現役のエンペラーたちとも互角に渡り合った、人類の最高到達点の一つだ。


「……不適格者の少年よ。貴様の使っている『加速』は、美しくも、ひどく危うい」


 ガウェインの声は、甲冑の中で反響し、地鳴りのように響く。


ことわりを盗んだ代償は、死のみ。この千代田の地で、貴様の演算を止めてやろう」


 ガウェインが大剣を振り上げた。その瞬間、俺の周囲の重力が「一点」に向けて収束を始める。


「――重力奥義『絶界(絶対重力圏)』」


2

「――っ!?」


 凄まじい衝撃が俺を襲った。  全方位から、目に見えない巨大な鉄槌が同時に叩きつけられたような感覚。  膝が折れそうになるのを、ハクが放つ銀色の霊気が強引に支える。


「ハルト! 氷結魔法――『永久氷壁』!!」


 結衣が即座に俺の周囲に氷の壁を築き、圧力を分散させようとする。だが、ガウェインの重圧はその氷を一瞬で砂のように粉砕した。属性魔法では、法則そのものの暴力には抗えない。


「……下がってろ、結衣! こいつの相手は、俺にしかできない!」


 俺は脳内の演算リソースを一気に開放した。  ハクとの同調率を六五パーセントまで引き上げる。


(ハク、相手の重力波を解析しろ。……干渉、及び相殺!)


「キュォォォォォン!!」


 俺は地面を蹴った。  重力加速度を前方へ偏向させ、さらにガウェインの「絶界」による負のベクトルを逆に利用して加速する。


「……ほう。私の重圧を『追い風』に変えたか」


 ガウェインの大剣が振り下ろされる。  俺は紙一重でそれをかわし、ガウェインの懐へと飛び込んだ。


「――法則改変。局所重力反転、最大出力!!」


3

 ドゴォォォォォン!!


 俺の拳が漆黒の甲冑に激突し、爆発的な衝撃波が千代田の廃墟を揺らした。  重力を「逆転」させることで、ガウェインが纏っていた絶対的な防御を内側から引き剥がす。


「が……っ!?」


 伝説の剣士が、初めて大きく後退した。  だが、俺の腕にも激しい激痛が走る。ガウェインの甲冑そのものが、俺の法則改変を「拒絶」するように演算エラーを吐き出させていたのだ。


「……見事な一撃だ。だが、少年よ。貴様の演算は、世界のOSに『負荷』を与えすぎている」


 ガウェインの周囲の空間が、黒い霧のように溶け始める。  彼は大剣を地面に突き立て、仮面の奥から黄金色の光を放った。


「貴様が『門』を開こうとするなら、私は全力でそれを阻止せねばならぬ。それが、理の外に堕ちた私の、最期の役目だ」


 ガウェインの背後に、巨大な「重力の渦」が形成されていく。  それは、周囲のビルや残骸をすべて飲み込み、圧縮して消滅させる――ブラックホールに等しい現象だった。


「ルカ! あいつ、街ごと消すつもりか!?」


「……ハルト、今の君ならできるはずだ。法則を『消す』のではなく、世界のOSに『新しい定義』を挿入するんだ。……君と、結衣さんの二人で!」


 ルカの言葉に、俺は結衣の手を強く握った。  一人では無理だ。だが、彼女の氷の魔力があれば。


「……行くぞ、結衣! 俺たちの新しい『理』を、こいつに見せてやる!」

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