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重力加速の不適格者  作者: はっこー
第一章:『重力加速の不適格者(アウトサイダー)』

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20/39

第20話:『逆転の号砲、そして新たな理へ』

1

「死ねぇ、ガキ共ッ!」


 毒蜂のケインが放った無数の紫色の針が、吹雪を切り裂いて俺たちを襲う。  一本でも掠れば即死。ランカーの放つ「必殺」の魔圧が、プラントの空気を重く湿らせる。


「……ハク、演算リソースを俺と結衣で完全分担スプリットしろ。結衣、お前の魔力を俺の『ベクトル』に乗せろ!」


「やってみる! ――氷結奥義『零度の檻』!」


 結衣が掲げた折れた杖から、極低温の魔力が奔流となって溢れ出す。  通常なら俺の周囲に壁を作るだけの魔法。だが、そこに俺の『法則』が介入する。


「――法則改変。質量付加、及び指向性加速。……行けっ、結衣!」


「キュォォォォォン!!」


 ハクの紋章が激しく明滅し、結衣の放った氷の礫に、一つ一つ「一トン」の質量と「超音速」の初速を与えた。  ただの氷の礫が、物理法則を置き去りにした「重力の弾丸」へと変貌する。


2

 ドガガガガガガッ!!


「なっ……バカな!? 氷の魔法が、俺の針を正面から粉砕して……!?」


 ケインの叫びは、重力の轟音にかき消された。  氷の弾丸は、紫色の針を塵も残さず消し飛ばし、そのままケインの周囲の空間を「質量」で圧殺した。


「ぐ、あああああぁぁぁっ!!」


 ケインは防御魔法を展開する間もなく、四方八方から押し寄せる重力の圧力に屈し、プラントの床ごと地下へと埋没していった。  沈黙。  残されたのは、粉砕されたアスファルトと、キラキラと輝く氷の結晶だけだった。


「……勝った、の?」


 結衣が肩で息をしながら、俺の腕を掴んだ。  俺は黙って頷き、彼女の震える手を握り返した。  一人の「不適格者」と、一人の「落ちこぼれかけた天才」。  俺たちは、自分たちを縛っていた運命ルールを、今この瞬間に打ち破ったのだ。


3

 プラントの入り口。  逆光を背に、拍手をしながら歩み寄ってくる人影があった。


「素晴らしい。期待以上のシンクロニシティだ、ハルト。そして白石さん、君の覚悟も認めざるを得ないね」


 ルカ・エヴァンズだった。  彼の懐には、すでに規定数以上のエンブレムが収められていた。


「試験の第一段階は終了だ。君たちの勝利は、すでにアイギスの最上層……そして世界中に中継されたよ」


 ルカが指差す先、要塞の中央塔から一筋の光が天を突いた。  それが、次なるステージへの招待状であり、俺たちが「学生」という保護下から完全に外れたことを示す、逆転の号砲だった。


「ハルト。……私、もう迷わない。何があっても、ハルトの隣にいたいから。だから、私を置いていかないで」


 結衣のまっすぐな瞳が、俺を射抜く。  俺は少しだけ視線を逸らし、それから、今までで一番確かな声で答えた。


「……ああ。お前がそのつもりなら、最後まで付き合ってもらう」


 俺の肩で、三本の尾を誇らしげに振るハク。    第一章:完。    物語は、学園という箱庭を抜け出し、世界を裏から操る「八帝エンペラー」との本格的な抗争へと進んでいく。    俺の名は、神代晴人。  重力加速度の不適格者。  俺の成り上がりは、ここから本当の「加速」を始めるんだ。

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