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重力加速の不適格者  作者: はっこー
第一章:『重力加速の不適格者(アウトサイダー)』

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19/39

第19話:『孤高の戦場、不意の再会』

1

 人工島「アイギス」の北部に位置する、廃液処理プラント跡。  ここは人工的な寒冷魔法の実験場だったのか、周囲は真夏とは思えないほどの猛吹雪に覆われていた。


「……ハク、熱量を計算しろ。凍結による筋肉の硬直を防ぐ」


「キュォ……」


 ハクが俺の首筋に鼻先を寄せ、微細な振動で熱を発生させる。  俺は吹雪の中を、重力加速度を前方へわずかに偏向させることで、風を切り裂くように進んでいた。感情を捨て、孤独に戦うと決めた。そのはずなのに、この冷気を感じるたびに、ある少女の使う「氷結魔法」の冷たさを思い出してしまう。


(……雑念だ。捨てろ)


 俺は頭を振り、視界の端に映る熱源を捉えた。  前方の広場。そこで、数人の受験生に囲まれ、必死に応戦する「影」があった。


2

 氷の槍が空を飛び、襲いかかる炎の弾丸を相殺する。  だが、囲んでいる連中は手慣れたプロだ。連携の取れた魔術で、その「影」をじわじわと追い詰めていく。


「へへっ、いい獲物だ。特待生だか何だか知らねえが、学園のお嬢ちゃんが来る場所じゃねえんだよ!」


 その声を聞いた瞬間、俺の足が勝手に動いていた。  重力を後方へ爆発させ、弾丸のように広場へ突っ込む。


「――法則改変。重力加速、前方五十倍」


 ドッ!!


 真空を切り裂く衝撃波。  俺は一瞬で包囲網の中心へと割り込み、敵の一人の顔面に強烈な右拳を叩き込んだ。


「がはぁっ!?」


 敵が吹っ飛び、周囲の連中が慌てて距離を取る。  砂煙が舞う中、俺は背後に立つ人物を振り返った。


「……結衣。なぜ、ここにいる」


 そこに立っていたのは、ボロボロになった制服を纏い、それでも折れたはずの杖を固く握りしめた白石結衣だった。


3

「ハルト……?」


 結衣の瞳から、一筋の涙がこぼれ、瞬時に凍りついて地面に落ちた。


「どうして……お前、学園にいろと言ったはずだ。ここは、お前みたいな奴が来ていい戦場じゃない」


「……言ったでしょ。ハルトが壊れちゃうくらいなら、私が守るって。ハルトが、嘘をついてまで私を遠ざけようとしたのは知ってる。……でも、私だって、ずっとハルトに守られてるだけの子供じゃない!」


 結衣が杖を掲げると、周囲の気温がさらに数度下がった。  彼女が纏う魔力は、学園にいた頃とは比べ物にならないほど鋭く、そして悲しいほど澄んでいた。


「……勝手についてきたのか」


「炎帝様に直談判したの。ハルトの『補助要員』として認めてもらったわ。……嫌だって言っても、もう遅いから」


 彼女の決死の瞳に、俺は言葉を失った。   「――おしゃべりはそこまでだ、ガキ共!!」


 残った敵たちが、一斉に奥義を構える。  その中に一人、ひときわ異質な魔力を放つ男がいた。世界ランク七六一位、毒蜂のケイン。  彼は指先から紫色の魔力針を生成し、俺たちを冷酷に見据えた。


「『不適格者』に『氷の小娘』か。まとめて土に還してやるよ!」


 ケインが動くよりも早く、俺は結衣の前に立った。  結衣は俺の背中にそっと手を添え、自らの魔力を俺に流し込もうとする。


「……ハク、演算リソースを一部、結衣の魔力補正に回せ。……結衣、俺の後ろにいるな。俺の『隣』で戦え」


「……! うん、ハルト!」


 決別したはずの二人が、死地で再び背中を合わせる。  成り上がりの物語は、孤独な戦いから「絆」を武器にした共闘へと、新たな加速を始めようとしていた。

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