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重力加速の不適格者  作者: はっこー
第一章:『重力加速の不適格者(アウトサイダー)』

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11/39

第11話:『黄金の要塞 vs 偽装の英雄』

1

 学園対抗魔法競技会、決勝戦。  スタジアムを埋め尽くす観客の熱気は最高潮に達していた。  対峙するのは、エリート中のエリート。イギリスの名門「ゴールドウェル家」の嫡男であり、『金帝』の有力な後継者と目されるアーサー・ゴールドウェル。


「不適格者の神代くん。……君の執念には敬意を表そう。だが、小細工は私の前では無意味だ」


 アーサーが指先を鳴らすと、彼の周囲に浮かぶ無数の金属片が結晶化し、眩い黄金の鎧へと姿を変えた。  ただの鎧ではない。分子結合を「金剛石ダイヤモンド」以上に固定した、絶対防御の要塞だ。


「さあ、命を削ってかかってくるがいい。私の盾を一ミリでも動かせたなら、君の勝ちでいいよ」


 アーサーの余裕に、スタジアムが湧く。  一方で、俺の肩には進化したハクが乗り、銀色の霊気を静かに漂わせていた。


(ハク。……準備はいいか。演算リソース、すべて右拳に集中させるぞ)


(キュォォン!!)


 ハクの紋章が光り、俺の脳内に膨大な計算データが流れ込む。  今なら見える。アーサーの防御の「繋ぎ目」が。そして、彼が絶対だと信じている物理法則の「脆さ」が。


2

「はあああああ!」


 俺は地面を蹴った。  重力加速度を三倍に設定し、さらにハクの演算で「空気抵抗」をゼロに定義する。  傍目には、命を燃やした捨て身の突進に見えるはずだ。


「無駄だと言ったはずだ!」


 アーサーが黄金の盾を構える。  俺の拳が、その絶対的な硬度に激突した。


 ガギィィィィィィィン!!


 スタジアム全体を震わせる金属音が響く。  俺の拳は、盾を砕くどころか、反動で腕の骨が軋むような衝撃を受けた。


「……くっ、さすがに硬いな」


「はっ、当然だ。私の『金剛固定』は、物理的な質量攻撃では決して破れない!」


 アーサーが盾を突き出し、俺を吹き飛ばそうとする。  だが、俺はニヤリと笑った。  本当の狙いは、今の一撃で「法則のくさび」を打ち込むことだった。


「……今だ、ハク! 定義変更――『内部重力の無限加速』」


「キュォォォォォン!!」


3

 アーサーの表情が、驚愕に染まった。  彼が持っている黄金の盾。その「内部」にあるわずかな空気、そして分子そのものに、俺は極小範囲の重力操作を施した。


 盾の重さが、一瞬にして数トン、数十トンへと跳ね上がる。


「なっ……な、なんだこの重さは!? 盾が……持ち上がらな……!?」


 自らの最強の防御が、自重によって地面へとめり込んでいく。  アーサーの姿勢が大きく崩れた。  俺はその隙を逃さず、ハクと共に最後の一撃を放つ。


「これは呪いじゃない。……俺とお前の、『ことわり』の差だ」


 俺は拳を引く。  狙うは、アーサーの鎧の継ぎ目。そこにある「一点」に、全方位からの重力ベクトルを集中させた。  奥義フェイク:『重圧連激』。


 ドゴォォォォォォォン!!


 衝撃波がスタジアムの壁まで突き抜けた。  黄金の鎧は粉々に砕け散り、アーサーの体は錐揉み回転しながらフィールドの外まで吹き飛んだ。


 静寂。  そして、割れんばかりの歓声。


「……勝者、神代晴人!!」


 審判の絶叫が響く中、俺は天を仰いだ。  結衣がフィールドに駆け寄ってくるのが見える。  ルカは、最高のショーを見たと言わんばかりに、優雅に立ち上がって拍手を送っていた。


 俺は「落ちこぼれ」という過去を、この黄金の盾と共に粉砕した。  成り上がりの第一歩。だが、その光景を不気味な瞳で見つめる影があった。


「……あれが『法則改変』か。面白い。土帝閣下への、良い手土産になるな」


 スタジアムの影から、謎の男が消える。  真の敵が、ついに動き出そうとしていた。

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