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第25話 新たな日常


 一日目。いつものようにダンジョンに潜る。

 すると三人組がいきなり襲ってきたから返り討ちにした。同じ奴隷で戦利品も無いし、装備も支給品だったけどとりあえず剥いだ。何か持ってないか期待したけど無駄骨で残念。


 二日目。いつものようにダンジョンに潜る。

 道中ローグが《潜伏》を使って隠れていたから、壁に寄り掛かる振りをして思いっきり斬りつけた。もの凄くびっくりした顔をしていたけど逆に僕がびっくりした。隠れて隙をうかがっていた癖に自分はやられないとでも思ったのかな、面白い。


 三日目。いつものようにダンジョンに潜る。

 今日はあまり他のパーティーと会わなかったから、その分攻略が捗った。倒した人数は七人。その内の一組は「誰だてめぇ⁉」とか言っていたから懸賞金とは無関係なのかもしれない。でも普通に倒した。


 四日目。いつものようにダンジョンに潜り、五人倒した。

 昨日よりも人数が少ない。少しは静かになったかな。


 五日目。昨日より——と思ったら今日は十一人倒した。けれど様子が少しおかしくて、僕を見たら逃げ出す人がいて困惑した。逃がしちゃったけどまぁいいかな。




 ……そうして迎えた六日目の朝。


 清々しい気持ちで寝床から起き上がると、朝食の為にその足で飯場まで向かう。足取りが軽い。探索が捗るようになってきて気分が良い。


 僕は注文した柔らかいパンとシチュー、そしてお肉を持って空いている席に座る。すると先に座っていた隣の人がスプーンを落とした。


 ……なに?


 落としたスプーンも拾わずに僕をぎょっと見つめる男。彼は我に返るとそのまま飯場から出ていってしまった。まだ残っていたのに勿体ない。お腹痛かったのかな?


 そのあと、向かいの席に座ろうとした人が僕と目が合った瞬間に進路を変えて別の席に座った。やった、広く使える。


 パンをちぎってシチューに浸す。静かだなと思ったら周囲の会話が妙に遠い。いつの間にか周囲の席もぽつぽつと空いていた。さっきまで埋まってたはずなのにおかしい。


 ……なんか変だけど、まぁどうでもいいか。


 それよりご飯が美味しい。昨日までのダンジョン探索で僕の懐は潤ってる。毎日これでも問題ないかもしれない。


「——あ、レア!」

「……っ!」


 こっそりと飯場に入ってくるレアに声を掛けると、彼女は肩をびくっと震わせた。今一番会いたくない人にあってしまった、みたいな顔をしているけど関係ない。

 僕はスプーンを置いてレアの元に駆け寄ると、


「久しぶり! ここ最近ずっとダンジョンに潜ってたみたいだけど大丈夫? それも一人で。朝も夜もいないし、いつ休んでるのか心配だったんだよ。僕だけじゃなくてログだって心配してる。ちょろっと一回潜ったらすぐ帰って、それで分け前は全部渡してるらしいし……本当に大丈夫なの、ご飯はちゃんと食べてる? 疲れて、」

「だーうるせー! ペラペラペラペラ喧しいわそっちの方が疲れるっての! こちとらダンジョンから戻ってきたばかりなんだから少しは落ち着かせろ!」

「……」

「無言になれって意味じゃねーよ怖いわお前」


 静かにしろっていうからつい。

 レアは呆れたように軽く息を吐いている。少しだけ口元が笑っていた。


「まぁ、なんだ。お前はあんまり変わってないみたいだな」

「変わる? 僕が? なんで?」

「なんでって、お前噂に……いや、はは、どうでもいいか」


 そう言って吹っ切れたように笑うレア。何がおかしいのか分からないけど楽しそうだ。


「そうだよな、お前はそういう奴だった。変に気を遣ってたのが馬鹿みてーだ」

「気を遣ってたの?」

「なんでもねーよ、お前がお前だって分かって安心しただけだ」


 レアはいつもの快活な笑みを浮かべた。さっきまでのよそよそしさが消えている。


 ……変なレア。


「そうだ、一緒にご飯食べようよ、僕最近稼いでるから今日は特別に奢ってあげる!」

「いやいい、お前に奢られるとか違和感半端じゃないだろ。それにオレも結構稼いでるからな、腹いっぱい食うくらいなんてことないし、蓄えも合わせたらオレもお前と同じくらいで骸、」

「——あ、女将さん、柔らかいパン二つにシチューと、お肉山盛り! 山盛りね! お皿から溢れるくらい!」

「あいよ!」

「あいよじゃねーし聞けよ⁉ というか何勝手に注文してんだ、おい金払おうとすんじゃねー!」


 無理矢理お金を払ってからレアと一緒に椅子に座る。不機嫌に見えるけれど本当は嬉しいのが分かって僕も嬉しい。


レアの分を待っていたら僕の朝食はすっかり冷めていたけれど、そんなのは些細なこと。


 誰かと一緒に食べるご飯は、とっても美味しい。



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