エージェント
トトが眠りに落ちると…
何ということでしょう!
トトは元居た世界に戻っていました。
弁当屋さんの地下室らしき場所。
体操用の緩衝クッション・マットが重ね敷きされていて、トトはそこに横たわっていました。
「おかえりなさい。私は弁当屋の店長で、新エージェントの教育係の鬼童と言います。何から訊きたいですか?」
怖い顔のオジサンが尋ねてきました。
「何から何まで教えてください。ペテロさんは玉を掘り当てた者がエージェントになるのが掟だとか言ってましたが、一体どういうことなんでしょうか…。それに異世界に飛ばされたと思ってたのに、人間世界で眠りにつくと何故かこっちに帰ってきてるし。何が何やら分かりません」
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トトが切実に訴えると鬼童さんは
(よくわかるよ)
と言うかのように大きく頷きました。
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人間達は「バルサンを焚くから」と出掛けています。
トトはその間ベランダに避難させられています。
ベランダで日向ぼっこをしながら
昨夜、鬼童さんから聞いた話を思い出していました。
鬼童さんの話では
トト達の暮らす世界は数十年前に『人間だけを殺す殺人ウィルス』がばら撒かれて、パンデミックによって人間が滅びた後の世界だというのです。
それで人間達は大人しく滅んだのかというと…
生き汚なく抗い
「自分達の意識体を二足歩行に改造した動物の身体に乗り換える」技術を使って新文明を創り出したというのです。
そして「肉体の乗り換え」時のショックで、自分達が人間だったことを大半の者達が忘れてしまっているのだそうです。
トトが掘り当てた『想いの玉』には故人の残留思念と残留エネルギーが詰まっているので
気を失うことで玉の波長に意識が巻き込まれ「意識体の転移が可能になる」のです。
エージェントの役目は並行世界に転移して、「殺人ウィルスを誰が作ったのか、何故ばら撒いたのか」真相を究明することなのだそうです。
(まさか自分の両親が『中身人間の改造ウサギ』で、自分がその二世で、やっぱり『中身人間の改造ウサギ』だって言われてもね〜)
(ー ー;)
トトはベランダで物思いに耽りました。
そんなトトを見詰める視線がありました…。