裂けた絆
「おい、貴様。剣を収めろ、トリスタン」
激しく火花が飛ぶ中、ランスロットは片手でトリスタンの剣を受け止め、もう片方の手でガウェインの肩を押し戻した。剣と剣が交錯し、ただならぬ空気が騎士の間に流れていた。
「兄弟たちが争う姿など、アーサー王には見せられぬ」
「ならば、なぜモルドレッドは裏切ったのだ!」
トリスタンの叫びに、空気が凍りついた。円卓に座すべき者が、王を欺いた――その噂は既に城内を駆け巡っていた。
モルドレッド。アーサー王の血を引きし者、そして闇の胎動を担う者。
「私が裏切ったと? 愚かな……」
静かに、だが確かに冷たい声がその場に響く。騎士たちの間を割って現れたその青年は、かつての弟のような優しさを捨てた顔で、仲間を見回した。
「誰が先に“理想”を捨てたのか、考えてみろ。……ランスロット、貴様は王妃と――」
「黙れ!」
その瞬間、ランスロットの剣が鞘から舞い、モルドレッドの首元に迫る。
だが、その間に入ったのは、ただ一人。
「……やめろ、ランス」
パーシヴァルだった。清廉なる騎士。円卓で唯一、血の汚れを知らぬ者。彼の腕は震えていたが、その瞳だけは真っ直ぐだった。
「円卓の終わりを、自分たちの手で招くな。まだ、希望はある」