表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/19

円卓の終わりと新たなる神話

 虚無のザ・ホロウは立ち上がった。

 その姿はまさに“もう一人のアーサー”。だが、魂はなく、意志もない。


 一方、アーサーの背には、円卓のすべてがいた。

 ランスロット、ガウェイン、パーシヴァル、ガラハッド、トリスタン、ボールス、ガレス、ベディヴィア、ラモラック、モルドレッド、そしてマーリン。


 かつて王を支えたすべての騎士が、今再び円陣を成した。


「いざ、最後の戦場へ!」

 アーサーが叫ぶ。


 決戦 ― 虚無と現実の交錯

 《ザ・ホロウ》は空間を歪め、可能性の刃で騎士たちを襲う。

 “もしも”の未来から引き抜かれた無数の攻撃が彼らを包囲するが――


「そんな“理想”で、俺たちは止まらん!」

 モルドレッドが己の偽父を真っ向から斬り伏せる。


「どんなに美しい虚像でも、現実の痛みがあるからこそ、生きる意味があるんだ!」

 パーシヴァルが叫びながら、自らの“救えなかった者たち”と剣を交える。


 そのたびに、“記憶”と“痛み”と“絆”が火花を散らし、現実が幻想を喰い破る。


 真実のケイと最後の一撃

 虚無の王の傍ら、かつての騎士ケイが再び姿を現す。


「お前たちの力は、認めざるを得ん……だが、それでも私は信じたい。

 “空虚こそが、苦しみの終わり”だと……!」


 アーサーはゆっくりと歩み出る。

 剣を構えず、ただ言葉を投げかけた。


「ケイ。お前の苦しみはわかる。塔に取り込まれ、理想と現実の間で裂かれたお前の魂……

 だが、それでも、俺は――共に歩みたかった。

 共に“間違い”ながら、共に笑いたかったんだよ!」


 その言葉に、ケイの目に一瞬だけ“色”が戻る。


「……遅すぎるんだよ、バカ弟……」


 その瞬間、ケイは自らの魂を裂き、《ザ・ホロウ》の核を掴んだ。


「せめて最後は……兄として道を示すさ!」


 ケイの魂と共に爆ぜた光が、虚無の王の心臓を砕く。


「アーサー……未来を、頼んだぞ……」


 ケイの消失と同時に、《ザ・ホロウ》もまた空へ還った。


 塔の崩壊と帰還

 塔が音を立てて崩れ始める。

 すべての試練が終わり、“奇跡”が失われていく。


「帰還転移が始まる!」

 マーリンが叫ぶ。


 一人、また一人と光に包まれ、元の世界へと戻っていく騎士たち。

 その顔には、誇りと悔しさ、そして新たな誓いが浮かんでいた。


 最後にアーサーが空を見上げる。


 ――円卓は、もうここにはない。

 だが心には、永遠に。


「さらば、塔よ。さらば、我が兄よ。

 俺たちは、“歩き続ける者たち”だ――」


 光に包まれ、アーサーもまた塔を後にした。


 エピローグ:伝説の果てに


 遠く離れた世界。

 王国の野に、一本の剣が突き立っている。


「円卓の騎士たちは、すべてを乗り越えた。

 そして……それぞれの物語へと、帰っていった」


 そう語るのは、ひとりの語り部。


 子どもたちが目を輝かせて聞き入る中、物語は幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ