幻想宮《ミラージュ・カテドラル》と心を喰らう神
第六階層――幻想宮。
黄金と蒼の神殿群が空に浮かび、現実とは思えぬほどの美しさで騎士たちを迎えた。
だが、その光景はすぐに違和感に満ち始める。
「……あれは……?」
ガウェインが、廃墟の隙間に見たものに声を詰まらせる。
そこに立っていたのは――死んだはずのガヘリスだった。
「兄上……ずっと、待っていた」
優しく笑う弟。
ガウェインは一歩前に出かけ、しかし足を止めた。
違う。これはガヘリスではない。
あまりに「都合がよすぎる」。
「見せているんだ、幻を」
マーリンが周囲を見回す。
「この階層そのものが、“精神”と“記憶”を食らう存在に支配されている。
本質を見誤れば、心を喰われるぞ」
そのとき――
幻想が裂け、空間がねじれる。
塔の中央に、浮遊する神殿の玉座。
そこに鎮座していたのは、巨大な翼と鏡の面を持つ存在。
「ようこそ、幻想の果てへ。
君たちの“真実”をいただくよ」
現れたのはこの階層の主、《鏡神ミラーゼル》。
記憶・願望・後悔を映し、それを「現実」に変えて襲いかかる精神喰いの神だった。
騎士たち vs 自身の願望
「あなたの願い、叶えましょう」
ミラーゼルの声が響くたびに、空間に「理想」が実体化する。
・アーサーには「戦争なき理想郷」が――
・モルドレッドには「愛された父」が――
・パーシヴァルには「誰もが救われる世界」が――
それらはすべて、敵だった。
「ふざけるな……! 理想が、現実を殺すのかよ!!」
モルドレッドが叫び、実体化した“優しい父アーサー”を斬り伏せる。
「我らは……幻想に生きぬ。現実に抗い、貫いてきた!」
ガラハッドが清浄なる刃で幻想の城壁を打ち砕く。
「真実はいつも苦しい。だが……だからこそ、守る意味があるんだ!」
アーサーが剣を構え、仲間全員のスキルを“シェア”で集約する。
仲間の魔力、想い、すべてが一つになったその刃が――
ミラーゼルの鏡面に、ひびを走らせた。
「……そんなはずは……私は“あなたたち”の心そのもの……!」
「だったら砕こう。何度でも」
アーサーの剣が閃き、鏡の神を貫く。
神殿が崩壊し、幻想の光景が霧のように晴れていく。
騎士たちは、現実に立ち戻っていた。
新たな力と、失われたもの
倒したミラーゼルから、一つの宝珠が現れる。
《取得:精神宝珠【インテグラム・コア】》
──この力により、仲間の“感情”を共有・増幅できるサブスキルが解放される。
同時に、塔の声が再び響く。
「最終階層まで、残り一つ。
されど、この先に待つは“かつての王”」
「……かつての王?」
ガラハッドが眉をひそめた。
マーリンは目を細め、言う。
「アーサー……恐らく、お前と“同じ存在”が、この塔の頂で待っている」
沈黙が落ちる。
「……我が“影”か。あるいは、“もしもの未来”か」
アーサーの声は、静かに、強くなった。