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『円卓の残響 ―Requiem of the Round Table―』
ブリテンの空は、あの日、かつてないほど澄み切っていた。
それが世界の終わりの兆しだと、誰も気づかなかった。
カメロットの城塞の上に立つアーサー王は、静かに風を見つめていた。金の王冠を戴きながらも、その目は重く、沈み、未来を見通す者のように遠くを見据えていた。
「マーリン……あれが“影”か?」
王の背後に立つ男は白い髭を撫でながら、頷いた。賢者マーリン――千年を生きるとされる魔導の老人。だがこの日ばかりは、その瞳に迷いがあった。
「王よ。時が来た。我らの時代の終わりが」
「わかっている……円卓は、もはや完全ではない」
かつて、ブリテンを統べるために召集された十三の騎士たち。彼らは誰もが英雄であり、誰もが誓いを立てた。だが、あまりにも強く、あまりにも美しき力は、やがて破滅を孕む。
その予兆は既に始まっていた。