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ハムハムするINUUは好きですか?  作者: アシッド・レイン(酸性雨)


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ハム友とのお出かけ その5

ホームセンターの帰り道。

動いていく周りの景色を楽しむINUU。

そして、ちらりちらりとこっちを伺っている。

その様子は、『ねぇ、怒った? ねぇ、怒っちゃった?』とこっちの様子をうかがうようであり、そんな様子が実に人間くさく、絶対にこいつ、わかっててやってるぞと確信させるのだが、かわいいのも相まって強く出れない。

くぅぅぅぅっ。こいつめぇ……。

そんな心の中での格闘を繰り返していると、後ろから「くすくす」という片山さんの笑い声。

「なんか、INUUちゃんを見てるとき、すごく複雑そうな顔してますよ」

「えっ?! 顔に出てました?」

思わず、といった感じでついそう聞いてしまう。

すると、片山さんがますます笑っていた。

要は、予想通り図星だとわかってしまったからである。

あと、その問いかけの際の驚きと困った顔も壺ったのかもしれない。

ともかく。

どうやらうまく誘導されたらしい。

えーい。こうなったら言ってしまえ。

そう決心して開き直って言う。

「い、いや、帰りは片山さんを助手席に乗せて、お話ししながら帰れるかなって期待していたんだけど……」

その言葉に、片山さんは少し驚いた後、目を細めて実に嬉しそうに笑った。

「そうなんですね。うふふっ。でも、INUUちゃんに先を越されたと……」

「そうなんですよ。せっかくのデートなのに……」

思わず勢いで言ってしまう。

「デートですか……」

片山さんの、少し落ち着いた声。

それを聞き、慌てて言う。

「い、いや、自分がそう思っているだけで……」

だが、すぐにその言葉は笑い声でかき消された。もちろん、片山さんの笑い声だ。

どうやら、揶揄われたらしい。

「酷いな……」

ついついふくれっ面でそう抗議すると、片山さんは笑って謝ってくれる。

「ごめんなさい。まさか、そういうふうに真剣に思ってくれていると思っちゃだめだと思っていたので」

その言葉には、少し寂しそうなニュアンスがある。

なんか、そう思ったらだめだと自分に言い聞かせようとするかのような。

もしかしたら、片山さんの中でも色々あるのかもしれない。

そう思うのに十分すぎるニュアンスだった。

そして、思い出す。

自分だってそうじゃないか。

ただ、そう見えなかっただけで、誰だって思い、悩み、迷っているという事だ。

だから、空気を変えようと思っていた事を、陽気に言うことにした。

なんか、顔が少し熱い。

多分、顔は真っ赤になっているだろうが、運転のため前を向いているので大丈夫だろう。そう判断したのである。

「その言い回しだと、片山さんも今回の事、デートと思っていたという事ですね」

その言葉に、片山さんは真っ赤になった。

そう受け取られてもおかしくない言い方であり、そんな言葉を発してしまった事に気が付いたのだ。

「え、えっと、それは……その……」

笑いを止め、指先を弄ってもじもじしつつなんとかそう言う片山さん。

INUUは、じーっと二人の会話の様子を見ている。

そして、まるで勇気を出せと言わんばかりに、わふっと片山さんの方に向けて吠える。

それにびくりと体を震わせた後、片山さんは苦笑した。

「ふふふっ。INUUちゃんにはお見通しかぁ……」

そして、下を見つつ言う。

「うん。そうなったらいいなって思ってた」

その瞬間だった。

INUUがわふわふ吠える。

まるで「がんばってね」「よく言った」と言わんばかりだ。

だから、その勢いで言う。

「そうか。片山さんもそう思ってくれてたのか。うれしいな」

その言葉に、片山さんは頬を染めて微笑んだ。

「うふふっ。私もです」

その後、沈黙が二人を包む。

だが、それは苦痛ではなかった。

なんだかこそばゆいような、そわそわしてしまうような、それでいて、なんだか嬉しさと満足感に包まれるような時間であった。

そして、黙り込む二人をINUUが交互に見て、尻尾を振っている。

それは、よくやった、二人ともという感じだったが、でも私のことも忘れないでと言わんばかりに、舌を出してハァハァとアピールをする。

その様子に、片山さんが笑ってINUUの頭をなでなでしてくれる。

それを受け入れ、しばらく撫でられた後、INUUはご褒美とばかりに片山さんの手をハムハムしだす。

その様子を二人で見て、こらえきれずに笑い合ったのであった。



そして、そんな和気あいあいという感じの雰囲気を残したまま、車は片山さんのアパートの前に到着する。

残念なことに、そのアパートには自転車やバイク程度なら置けるが、車用の駐車場はない。

だから、荷物を下ろして一度戻る必要がある。

路駐はだめだぞ。近所迷惑になる恐れもあるし、他の車の妨げになるかもしれない。

まあ、車の通りは少ないけど、だからやっていいということにはならないのである。

ルールは守るためにある。

「破るためにある」という言葉が流行ったが、それは破った先に何があるのか考えていない言葉であり、無責任で思考停止だと思う。

人は一人では生きていけない生き物だ。

だからこそ、人に迷惑をかけないというのは大切なのである。

そんなわけで、荷物を片山さんのアパートに運び込む。

片山さんが慌てて玄関を開けて、運びやすいようにしてくれる。

「ありがとう」

「いえ、こちらこそ」

自然とそう言い合える。

さっきのことがあったから少しはぎこちない感じになるかな、とも思ったが、そうはならなくて少しほっとする。

なんか、片山さんも少しほっとした感じだ。

第三者から見れば、大したことないじゃんと思うかもしれないが、自分にとっても片山さんにとっても大したことなのである。

なんせ、お互いの気持ちを確認し合ったのだから。

ただ、それがすぐに結果として反映されるかというのは別物だ。

もちろん、そうなりたいという思いはある。

でも、今の関係が居心地がいいんだよな。

それに、前みたいなことになって欲しくないという気持ちもあるから、少しずついこうかなという思いが強いのかもしれない。

片山さんも、そうであって欲しいな。

ふと、そう思ってしまう。

それはまあ、それだけ片山さんが僕の心の中に浸透しているというわけで――以前のときと違って、なんだか自然な感じがするのは気のせいだろうか。

おっと、いかんいかん。

「えっと、この辺でいいですか?」

玄関の入り口に置こうとしたら、片山さんが少し恥ずかしそうに言う。

「えっとですね、部屋の方まで運んでもらっていいですか?」

「あ、は、はいっ」

なんかすごく心が跳ねた。

ぴょん、という感じではない。

ぴょーーーん、って感じだ。

恐らく、走高跳でもしたら世界記録を塗り替えられそうな気がする。

いや、あくまでそんな風に跳ねたと思って欲しい。

あくまで例えである。

そんなことを思いつつ、ドキドキして言葉を続ける。「えっと、お邪魔します……」

そう告げて靴を脱ぎ、中に入っていく。

アパートの構造は、よくある古いタイプのもので、玄関とキッチンが一体になり、その先に部屋が二つあるタイプだ。

もちろん、台所の横には少し凹みがあり、その部分にはお風呂とトイレに続くドアと洗濯機がある。

先の部屋は襖で区切られて見えないが、台所と玄関部分はシックな色合いの棚と冷蔵庫で整えられており、調理道具も実に清潔そうに並んでいる。

その光景を見て、思わず言葉が出た。

「あ、懐かしいな」

思わず出た言葉に、片山さんが驚く。

「えっ?」

「いや、昔、一人暮らししていたアパートと間取りが一緒だなと。もっとも、こんなにきちんと整頓してなかったですけどね」

「あ、そうなんですね」

少しほっとしたかのような言葉を返す片山さん。

だが、すぐに我に返ったのだろう。

「えっと、こちらにお願いします」

そう言って襖を開ける。

おおおーっ。ついに片山さんの部屋を見れる。

多分、テレビの芸能人のお部屋紹介みたいなスペシャル番組なら、ここでいったん切れてCMに入るだろう。

だが、そんな引き延ばしがあるわけもなく、続けて目に入ってくるのは片山さんの部屋だ。

多分、もう片方は寝室なのだろう。

丁寧に見えないように仕切ってあり、目の前に広がるのは生活空間の方だとわかる。

六畳の部屋には、いくつかの本棚、小ぶりのテレビを載せたテレビ台、座椅子が二つとクッション二つ。

それに、中央には座って使えるテーブルがあった。

色や雰囲気は落ち着いた感じに統一されており、かわいいというより、おしゃれで落ち着いた空間という印象だ。

なお、本棚には雰囲気に合った、かわいい手作りカーテンが掛けられていて、何が置いてあるかは見られないようにしてある。

うーん、何が入っているのか見てみたいな。

そんな誘惑にかられそうになるが、いかん、と思い直して自粛する。

で、持ってきた本棚の組み立てキットをテーブルの横に置いて聞く。

「この辺りでいいですか?」

「はい。お願いします」

荷物を置いて、ふーっと息を吐き出す。

別にきつかったわけではない。

ただ、これで終わりかと思うと、つい出てしまったのだ。

そんな僕の様子をちらちらと見た後、意を決したかのように全身に力を入れてから、真っ赤になって片山さんが聞いてくる。

「えっとですね、ネジ止めの電動ドリルみたいなの、持ってます?」

ねじ止めの電動式ドリル……。

恐らく電動ドライバーのことだろう。DIYでよく使うやつである。

「あ、ありますよ。結構、道具関係は揃っているんで」

多分、貸してほしいってことかな。

それなら問題ない。充電もきちんとしてるし。

「本当ですか?」

「はい。じゃあ、車を置いた後に持ってきますね」

そう言うと、片山さんがますます真っ赤になる。

えっと、電動ドライバー借りるのがそんなに恥ずかしいのだろうか。

なんか変だなとは思ったものの、まあ人それぞれだし、と納得させる。

だが、そんな思考を吹き飛ばす言葉が、片山さんの口から飛び出た。

「えっとですね、よければなんです。よければなんですけど……」

そこでいったん言葉を切った後、こっちをじっと見て言葉を続ける。

「よかったら、組み立ててもらえないでしょうか?」

その言葉に、頭の中が真っ白になった。

え?!

そうか、そういう流れもありか。

なんでそこまで思考しなかったんだろう。

そんなことを考えていたためか、返事が遅れる。

それを拒否と思ったのだろうか。片山さんが真っ赤な顔で、こっちをうかがうように再度聞いてきた。

「えっと、だめ、ですかね?」

ここまで言わせて、だめと言えるわけがないじゃないですか。

ええ、頷きますとも。それが地獄行きの片道切符だとしても。

あ、例えですよ。例え。

だから、すぐに頷いた。

「はいっ、喜んでっ!!」

ついつい勢いよくそう言う。

まるで、某居酒屋の店員の返事のようだ。

言ってみて、ふと思ってしまった。

それは片山さんもそう思ったのだろう。

きょとんとした表情のあと、爆笑してしまう。

そして、その笑いに僕も巻き込まれていく。

ああ、なんて楽しいんだろう。最高だ。

そんなことを思いつつ、心の中でガッツポーズをした。

よっしゃーーーっ。

デート継続だっ。


挿絵(By みてみん)

なお、その頃、INUUは後ろのハッチが開けっぱなしという無防備な部下である車の安全を守るため、警戒を怠ることなくドヤ顔で見張りを継続していたのであった。


今回のお話はどうだったでしょうか?

楽しんでいただければ幸いです。

なお、ブックマーク、反応、評価、感想、リビュー、お待ちしております。

それらは、私にとってINUUのハムハムと同じなのですよ。

書く時のテンションと維持の為、ご協力お願いいたします。


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