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初めてのハム友

「ハムハム」とは、擬音の一種で、甘噛み、優しく噛む、軽く噛むなどの意味があります。

そして、うちのINUUはこれが大好きで、なんせ初めてあった人はまずハムハムするのです。

人懐っこいINUUは、大抵の場合、初めてあった人にも尻尾を振って近づくと頭をなでる為に下ろしてくる手を狙います。

そして素早く頭をずらすとまず舐めてぱくりと嚙みつきます。

勿論、大抵の人は驚きます。

手を引っ込める人も多いでしょう。

でも、INUUは諦めません。

再度下ろされると再び狙います。

そして、ハムハムするのです。

その時のINUUの表情はとてもかわいいのです。

目を細め、口をもぐもぐさせて、耳を垂れて夢中でハムハムします。

そう、まるで味わっているかのように……。

いや多分、味わっているんでしょうね。

INUUにとって、人の手は嗜好品なのかもしれませんね。

しかし、そう思う反面、INUUはこだわりが強いのです。

なんせ、一度味わった人の手をハムハムしないのです。

唯一の例外は僕で、主である僕の手は何度味わっても飽きないのか、毎日何回もハムハムを希望してきます。

ハムハム希望はすぐにわかります。

たったったと近寄ってきて、じーっと見上げるのです。

勿論、ちぎれんばかりに尻尾を振って。

そして、その表情からなんとなくわかるのです。

「我はハムハムを希望する。手を下ろせ」と。

おかげで、頭撫でるよりハムハムされる数の方が多い気がします。

その為、散歩の際は、ハンカチが必須となってしまいました。

まぁ、かわいいし、僕の大切な家族だからね。

そんな訳で、日に二回の散歩のうち、夕方の散歩に僕らは出かけたのでした。



いつものごとく海岸を散歩していきます。

勿論、延長できる伸縮のリードを付けて。

最近、公共の場でリードを外して犬を散歩させている人をよく見ます。

そう言う人たちは大抵こう言います。

『うちの子は、人を襲ったりしない頭がいい子だから』と。

しかし、それは無責任という事がわかっていない。

人同士でも理解するのは難しいのに、ましてや異種族間で理解するのはもっと大変なのです。

あくまで、わかった様な気がしているだけなのです。

だから、何も起こらないとは限らない。

そして何か起こった時、それは飼い主の責任になるという事がわかっていないのです。

放すなら、ドッグランか自分の家の中、或いはきちんと柵のされた自分の庭で放していただきたい。

他の犬や関係の人達に余計なことをしでかした後からでは遅いのです。

おっと、話がそれてしまった。

ともかく、そういう訳で、いつも通りリードを付けてお散歩です。

INUUは機嫌よく尻尾を振ってます。

彼女はとても散歩が大好きなのです。

なんせ、嵐の日でも散歩しないのかと訴えてくるほどなのですから。

もっとも、嵐の日に散歩を希望したものの、ほんの少し行っただけで帰ろうと申し訳なさそうにこっちを見て踵を返したのは笑いましたが。

要は、嵐とかそう言うのが初めてだったのかもしれません。

それ以降、天気の悪い日は、余り訴えなくなりました。

それでも我慢できない時は、特製のINUUレインコートを着用して出かけたりします。

なお、INUU特製のレインコートは、自分の古いウィンドブレーカーやジャンパーを加工して作ったもので、知り合いの友人からINUUに贈られたものです。

最初こそ、怪訝そうな感じでしたが、雨の日でも散歩に行けると判ったらしく、雨の日になると付けるように訴えてきます。

中々かわいいです。

レインコートを付ける時と散歩の様子を動画に撮って、作ってくれた友人に見せたら、とても喜んでいました。

うんうん。いい事だ。

もっとも、一度ハムハムして以降はハムハムされていません。

すっかりうちのINUUに惚れ込んだ友人が何度もハムハムされようとして相手にされていない様子は、絶世の美女にうつつを向かす哀れな男を彷彿させてしまい、毎回笑ってしまいますが。

いやはや、いと哀れですわ。

おっと、また話がそれた。

ともかく、そう言う事で夕方の散歩としゃれこんだのです。

天気がよかったおかけで、夕方でも少しポカポカした感じで、実にいい散歩日和です。

風もそうそう強くはなく、並みも穏やかです。

海岸をずっと歩き、松原の方まで足を延ばします。

流石に少し喉が渇いてきたので、自販機で飲み物を買って水分補給していると、INUUがじっとこっちを見ています。

ああ。いつものね。

飲み終わった缶をゴミ箱に入れると、散歩道具の入った袋をリードを持っている方に移動させて空いている手を下ろします。

うむ。待っていたぞ。

そんな感じでINUUはハムハムをします。

ふむふむ。

今日もいい味だ。

そんなナレーションとかが付きそうな表情です。

味わってハムハムしています。

そして堪能した後、手から口を離します。

満足そうです。

で、濡れた手をハンカチで拭いて散歩を再開し、普段ならこれで家に帰りついて散歩は終了です。

しかし、今日は違っていたようです。

帰り道、今日は海岸の歩道の方を行こうかなと思って歩いていた時でした。

海岸沿いの歩道、そこは一定ごとに松が植えられ、ベンチが設置されています。

天気がいい日は、近くの人や遊びに来た人がペンチで休んで海を眺めたり、色んな事をしています。

ポカポカの日差しと穏やかな海の風。

今の時期は特に最適で気持ちいいでしょうね。

しかし、人が増えるとトラブルもよく起こる様になります。

他人に迷惑をかけるのを何も思わない連中も一定数いるのです。

そして、僕が見かけたのはそんなシーンでした。

一人の女性がベンチで静かに本を読んでいた様子なのですが、そこに中年のおっさんが二人声をかけた様子でした。

中年のおっさんはマリンスポーツをやっている人のようで、サーファーとかが身に着けているぴったりのウェットスーツみたいなのを身に着けています。

声をかけて無視されたのが頭にきたのでしょう。

段々とおっさん二人の声が大きくなっていきます。

終いには、女性の手を掴もうとさえしています。

おいおい。無視されたのならさっさと離れればいいのに。

実にみっともない。

本当にまたマリンスポーツやってるアホが人様に迷惑かけてると思いました。

いや、全員がそうとは思いませんが、マリンスポーツをやっている人はマナーが悪くいい印象は持っていないので、そういう気持ちが強いのです。

なお、なんでそう思うかと言うと、駐車場に車を止めて、その左右に荷物を広げたり、椅子を置いたり、終いには横にテントを展開したりして一台で二台、三台分の駐車スペースを占領したり、バンの後部ドアを思いっきり開けたままにして道幅を狭めたりというのは序の口で、海岸の歩道でスケートボードにヨットのような帆が付いたものに乗って走り回ったり、ナンバープレートのないバイクを二人乗りで走り回らせたり、ゴミを放置して帰ったり、或いはのんびりしている人にナンパやいちゃもんつけたりといった事が多発しているからです。

本当に何様だという感じですね。

だから、どうしてもそう考えてしまうのです。

特に、県外ナンバーの車の人は酷いですよ。

で、どうやら、そんな類の方らしいです。

近くに止めてある車も県外ナンバーですしね。

流石にそのまま知らぬ存ぜぬは出来ません。

INUUもかなり怒っています。

で、近づいて声をかけます。

「何かあったんですか?」

なお、INUUもこの二人は気に入らないようで唸っています。

勿論、飛び掛からないようにある一定の距離を保って。

なお、声をかける前にその状態と車のナンバープレートの写真は撮っています。

そして、スマホの録音アプリで録音もスタート。

最近は、そこまでやらないとめんどくさいですから。

で、僕がそう声をかけると女性の手を掴んでいたおっさんの手が緩んだんでしょう。

女性は立ち上がっておっさんの手を振りほどくと僕の後ろに逃げ出します。

なお、INUUはおっさん二人を威嚇中です。

「な、なんでもねぇ。関係ないやつは出しゃばるな」

「ふむ。では、この女性と貴方たちとは関係あると?」

「そうだっ。だからさっさと向こうに行け、アホがっ」

そういってけんか腰にくるけど、INUUが威嚇しているので近づいてきません。

で、そう言われたので女性の方に視線を向けて聞く。

「で、どうなんです?」

「関係ありません。さっきからしつこくて、拒否したら腕を掴まれてっ」

「だそうですよ」

視線を女性からおっさん二人に向けてそう言った後、ニタリと笑う。

「みっともないなぁ。振られたんなら、さっさと退散すればいいのに。いい年したおっさんが本当にみっともない。キャバクラとか飲み屋とか金でいう事きかせるんじゃないんだからさぁ」

「なんだと、てめぇっ、お前っ、ただで済むとか思ってないよな」

「ボコボコにして半殺しにして後悔させてやる」

おっさん二人がそう言ってきます。

多分、かなり熱くなっているんだろう。

ありがとう。

そう言う脅迫めいた言葉を待っていたんだ。

「今のは脅迫ですか?他人に迷惑をかけた上に、暴力行為をちらつかせて脅迫してくる」

「それがどうしたってんだっ」

おっさん二人はかなりヒートアップしています。

多分、INUUがいないと襲い掛かって来ただろうな。

でも、それ故にうまくいきました。

女性に声をかける。

「今の聞きましたね。暴力をちらつかせての脅迫ですね」

その言葉に、きょとんとした後、女性は慌てて頷いた。

「ええ。聞きました」

「なら、警察を呼んでください」

その言葉に、おっさん二人は我に返った様子です。

急に慌てだしました。

よしよし。

では、駄目出しとしましょう。

「あ、今までの会話、全部録音してますから。あと、車のナンバーとかどういう状況だったかも写真に撮ってますからね」

その言葉に、焦るおっさん二人。

その二人に向かって微笑んではっきりと言っておきます。

「他人に迷惑かける様な行為はしない方がいいですよ」

「う、うるせぇっ」

そんな事を言いつつも、慌てて荷物を車に押し込め、逃げ出す二人組。

本当にかっこ悪いねぇ。

見た目は肌を焼いてかっこいいつもりなんだろうけど、本当にみっともない。

金は持っていのかもしれんが、あまりにも人として情けないな。

そんな事を思いつつ、逃げ出していく二人を生暖かい視線を向けて見送ります。

はい、さようなら。

あと言い忘れていたので言っておく。

「もう二度とここには来ないでね」

思いっきりそう言ってやる。

後ろで女性が楽しげに笑っていた。

「さて、大丈夫でしたか?」

そう声をかける。

「ええ。助かりました。ありがとうございます」

「最近は、ああいうのが多いので気を付けて」

そんな会話を交わしているとご機嫌そうなINUUが女性に近づく。

あ、あれはハムハムを狙っている顔だ。

女性はニコニコ笑って頭を撫でようと手を下ろす。

「賢い子ですね」

そう言いつつ。

そして女性の手が頭に当たろうかという瞬間、INUUは素早く頭を動かして、女性の指を口に含んだ。

ハムハム……。

驚いた女性は、一瞬手を引っ込めようとしたが、尻尾を振って甘噛みでハムハムしているのがわかったのか、苦笑してされるがままにしている。

「すみません。ハムハムするのが大好きなんですよ」

そう言うと女性は笑った。

「大丈夫です。ちょっとびっくりしたけど……」

そして、視線をINUUからこっちに向けた。

「そう言えば、よく見かけますね。散歩コースですか?」

「ええ。散歩コースです」

実は、こっちも女性をよく見かけていたのだ。

だが、潮風を受けつつ本を楽し気に読んでいるのを見て、邪魔したら悪いと思ってスルーしていたのである。

「ふふっ。これも何かの縁です。よかったら、今度から声をかけてくださいな。あなたならうれしいです」

そう言うと視線をINUUに向ける。

「もちろん、ワンちゃんもね」

その言葉がわかったのか、ハムハムを止めてINUUはワンと吠える。

「どうやら、INUUもうれしいようです」

そう言うと女性はふと気になったのか聞き返す。

「そう言えばワンちゃんの名前はなんていうんですか?」

「INUUです」

「犬?いえ、名前です。このワンちゃんの名前……」

「だから、INUUです」

しばしの沈黙。

そして女性は笑う。

「いぬですか?」

「正確に言うとアルファベットでI.N.U.Uです」

「いぬぅ?」

「そうそうそんな感じの発音です」

「なんでそんな名前を……」

「いや、拾ってきて名前決めるまで犬、犬、犬って言ってたらそれが名前と思ったらしくて、それ以外の名前を言っても反応しなくなりまして……」

その言葉に、女性は爆笑した。

涙を流して。

暫く会話が出来ないほどに。

で落ち着いたのだろう。

「そっか、INUUって名前なのか。よろしくね、INUUちゃん」

そう言って再び頭を撫でようとする。

まぁ、普段なら一度ハムハムしたので満足して素直に頭を撫でられるから絶対にそうなると思った。

しかし、この時の反応は違った。

再びハムハムしたしたのである。

自分以外では始めてだ。

つまり、彼女の手は何度もハムハムしたくなる味という事になる。

こうして、この出会いによって、僕は初めてのハムハム仲間、ハム友が出来たのであった。

かわいい系の話(なのか?w)を目指して書きました。

Xでフォロワーさんとの会話で思いついた話なので、ゴールは決めてません。

(基本、ゴール決めて書くことがほとんどなので)

どういう形に落ち着くのか書いてる方も楽しみです。

でも何か物足りないなぁ……。

いやはや、血とか肉とかが飛び散らないのは寂しいですなw


なお、マリンスポーツに対して当たりが強いのは、うちの近くの近所に来ている連中の迷惑行為が酷いので、どうしてもそうなっちゃいました。

なお、本文中の『駐車場に車を止めて、その左右に荷物を広げたり、椅子を置いたり、終いには身にテントを展開したりして一台で二台、三台分の駐車スペースを占領したり、バンの後部ドアを思いっきり開けたままにして道幅を狭めたりというのは序の口で、海岸の歩道でスケートボードにヨットのような帆が付いたものに乗って走り回ったり、ナンバープレートのないバイクを二人乗りで走り回らせたり、ゴミを放置して帰ったり、或いはのんびりしている人にナンパやいちゃもんつけたりといった事が多発しているから』という部分は、実話です。

本当にひどすぎて呆れ返ってしまいます。

お年寄りとかがベンチに座って日向ぼっこしている横でどんちゃん騒ぎしたり、スケートボード走らせたり、テントや焚火はダメだというのに海岸でやったりと、もう酷いものです。

おかげで、海岸の近くにあったキャンプ場はなくなりましたし、夏場は夜は道路閉鎖までするようになりました。

本当に、地元の人間にとっては迷惑なだけの存在と化しています

勿論、きちんとやっている人もいますが、迷惑行為している者達だけがどうしても目につくようになるんですよね。

いい加減にして欲しいです。

皆さんも、何かやる時は周りの人や地元の人の迷惑にならないか考えてやっていきましょう。

もちろん、私もですがw


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